※徳川家光(徳川3代将軍) ※孝子(家光の御台所 最初から上手く行かなくて中の丸へ別居) ※鷹司信平(孝子の歳の離れた異母弟) ※紀伊大納言(徳川頼宣 家康の子で家光の叔父) ※松姫(紀伊家の姫)
孝子「ま、お久し振りでございますこと。上様が中の丸へいらっしゃるなんて・・・雪でも降るのかしら。」
家光「・・・うっ・・・イキナリそんな・・・イヤミな言い方は・・・」
孝子「私の事など、とうの昔にお忘れになったと思いましたのに。」
家光「・・・いや、別居はしていても御台は御台。それなりに大切にしているつもり・・・なのだが・・・」
孝子「で?御用は?」
家光「お、叔父上の・・・紀伊大納言殿の姫が見初めたというのだ。信平を・・・あ、いや、信平殿を。」
孝子「見初めた?まっ!ハシタナイ!!!江戸の娘は慎みってモノがないのかしら。」
家光「いや、お、大人しい姫なんだが・・・あ、それにナカナカの美人だぞ。西国の大大名との縁談が進ん
でいたのに・・・ほら、この前の蹴鞠の時、あの時に信平殿の貴公子振りに一目惚れを・・・」
孝子「お断り申し上げます。」
家光「そんな・・・勿体無い。それに・・・ワシも叔父上には・・・チョット遠慮が・・・」
孝子「別に勿体無くなんかありませんわ。紀伊家の威光なんて私は恐くありませんし。」
家光「しかし、信平殿の将来の為には・・・」
孝子「嫌です。上様のお従妹なんて絶対にお断り!信平には、もっと可愛い優しい姫を私が選びます。
そうだわ。やっぱり京から迎えましょう。公家は公家同士が一番。」
家光「しかし、松姫は・・・恋患いで食が細くなって・・・このままでは命にかかわると、叔父上が泣いておら
れるんだ。そうだ、松姫を娶ったら加増しよう。5千石に加増するぞ。」
孝子「ま、信平を召抱えて頂く時には、新参者にイキナリ2千石は多いって渋っていらっしゃったのに。」
家光「紀伊家の姫を娶るからには5千石でも少ないくらいかな?いや、しかし持参金も多いだろうし・・・」
孝子「お断り申し上げます!」
家光「うっ・・・よし!じゃ7千石。これでどうだ?」
孝子「だから・・・さっきからお断り申し上げてるでしょ!」
家光「9千石・・・いや、9999石・・・」
孝子「シツコイわね!そーいう問題じゃ無いのよ!無神経!日本一の最低男!!!」
信平「へぇ〜・・・頭に来たって・・・その割りに姉上はご機嫌がよろしいようで・・・」
孝子「チョットね・・・上様を怒らせてみたかったのよ。縁談の事、貴方はどう思う?」
信平「私は、姉上のよろしいように・・・」
孝子「断れば2千石のままよ。」
信平「構いません。」
孝子「娶れば・・・尻に敷かれるわよ、きっと。」
信平「一向に構いません。」
孝子「優しいのねぇ・・・上様にも、そんな優しさがあったら・・・一言・・・孝子、頼むよっておっしゃれば
良いのに。」
信平「何だ。そんな簡単な事ですか。ははは・・・上様も姉上も、可愛いですねぇ。」
☆御三家の奥方&姫君方は年賀とか花見の時は江戸城を訪れていたようです。それで松姫は信平さんに一目惚れしたんですね。確か吉良上野介も上杉家の富姫に一目惚れされたんです。それはともかく、結局、信平さんは松姫と結婚して松平を名乗り、殆ど分家扱いを受ける事になります。シンデレラ・ボーイですね。孝子さんは寂しい御台所でしたが、家光の死後は結構穏やかで幸せな人生を過ごしたでしょう。
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