M-92


真夏の男の祭典
 


加 藤 良 一     Aug. 10, 2010




 恒例となった、真夏の男の祭典<関東おとうさんコーラス大会>が今年も開かれました。この催しはそもそも埼玉県でスタートし、今年で21年目を迎えたもので3年前の2008年に埼玉県から関東支部へと拡大しています。
 今回の担当は神奈川県合唱連盟、会場は横浜港に突き出した「大さん橋ホール」というユニークな多目的ホールで、去る87日(土)行なわれました。http://www.osanbashi.com/hall/index.html

 ここは、浜風の吹き渡る大さん橋全体をそのままホールに仕上げたものなので、もちろん大型船舶がふつうに発着することができます。
 田中登志生・神奈川県合唱連盟理事長の開会挨拶で会場を沸かすちょっとした工夫がありました。ステージ背後の大きな黒い幕が静かに左右に開けられ、それにつれて徐々に明るい日差しが差し込み、真夏の真っ青な空と海が目の前に出現してきたのです。床から天井まで全面強化ガラスの壁越しに広がる横浜港の大パノラマ、すぐそばを行き交う船もよく見えます。会場からどよめきが沸き起こり、これからはじまるフェスティバルへの期待が膨らんでいきました。


 そうはいうものの、演奏中、あまりに後ろが見えすぎても気が散るもんです。そこで、大パノラマはあとのお楽しみとして遮光カーテンが閉められ、落ち着いた雰囲気となって演奏開始となりました。
 ホール内の床や壁は、船の甲板を思わせるウッドデッキ(ブラジル産の木材)仕上げとなっていて、音響的には相当デッドです。PA(音響装置)の力を借りなければ無利でしょう。ステージ前面にマイクを4本立て、ホール4隅のスピーカーから鳴らす仕掛けです。合唱をやるにはちょっと厳しいけれど、お祭りだからまあ仕方ないでしょう。マイク近くのパートの声がよく聴こえるのは当然のことです。完全なアコースティックな音楽空間でないのがちょっと残念でした。

 さて、全日本合唱連盟の関東支部の地域割りは、歴史的(!)か政治的(?)かは知りませんが、一般の行政区分とは関係なく成り立っています。一般に関東地方といえば、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、東京16県と思っていましたが、行政上の分類では山梨県も関東地方(または首都圏)で、地理上の分類では中部地方(甲信地方または甲信越地方)ということだそうですから、17県ということになります。

 合唱界ではこの中から東京が外れ、代わりに信越地方の新潟と東海地方の静岡が入っています。基本的にはすべて陸続きということのようですが、面白いです。今年の参加数は、茨城
3、栃木1、群馬2、埼玉4、千葉3、神奈川7、新潟3、山梨4、静岡330団体でした。この大会、正しくは「第21回関東おとうさんコーラス大会 in かながわ」ですが、事前に流れていた情報では「in よこはま」というものでした。「in よこはま」ではさすがに狭すぎると判断したのでしょうか。今となってはどちらでもよいですが。

 演奏時間は5分間、ア・カペラが原則ですが、自前で持ち込むなら何を使ってもOK30団体が計56曲を披露したうち、多田武彦作品が15曲ほどでほぼ全体の3割を占めていました。相変わらずの人気の高さです。ちなみに木下牧子作品は、我々コール・グランツ(埼玉)の「いつからか野に立って」からの『1曲だけでした。変わったところでは、久し振りの参加となったバーバーショップコーラス。20099月に発足した東京メトロポリタンコーラス・横浜(神奈川)が「Let a Smile be Your Umbrella」と「I've Been Workin' on the Railroad」を表情豊かに演奏してくれましたが、いかんせんPAを入れなくてはならない空間なので、振付けて動き回ると歌詞がよく聴き取れないのが難点だったでしょうか。珍しいところでは、北総エコー(千葉)の荻久保和明作曲、無伴奏「IN TERRA PAX」、なかなかの迫力でした。もっとも小さな三人組合唱団、こぶちさわメンネルハルモニー(山梨)のロシア語「(ダローギ)」という聴きなれない曲もありました。いっぽうで最大規模32人を擁し、平均年齢70歳という矢沢男声合唱団は定番の「源兵衛さんの赤ちゃん」などを披露しました。

 近ごろの小学校では運動会で順位をつけないそうなので、ここでも無理に順位をつけるのはやめましょう。もし、ひとこと残すとしたら、AからD5段階評価をすれば普通に正規分布することがわかりました。でも、これは当たり前のことでしょうけれど。

 お待ちかねの第二部、懇親会、いつもながら盛り上がります。合同合唱は、あらかじめ「いざ起て戦人よ」「最上川舟唄」「柳河」「見上げてごらん夜の星を」「ふるさと」「秋のピエロ」のうち好きな曲を申し出ておいてステージで歌います。

 下の写真は「柳河」を指揮する、男声合唱プロジェクトYARO会の音楽監督・須田信男さん(男声合唱団メンネルA.E.C.指揮者)です。彼の指揮ぶりには定評があり、必要に応じてタクトを使うなど、曲や合唱団の構成により適切に対応するのが信条です。あの用意周到さには感心します。これからますます期待したい指揮者でしょうか。

 




関連情報<音楽/合唱欄>
2009年10月「 彩の国男声コーラスフェスティバル2009」(M-87
20088月「19回関東おとうさんコーラス大会 IN ぐんま」(M-78
20058月「16回おとうさんコーラス大会」(M-62
20057月「夏の秩父」(M-60
20048月「渋滞は忘れたころにやってくる」(M-48
20038月「14回おとうさんコーラス大会 in 秩父」(M-33
20023月「秩父の山々に響け! 男声合唱」(M-2

(以下は、音楽/合唱欄の下のほうにあります)
200293日「関東おとうさんコーラス発祥の地 サッポロビール埼玉工場閉鎖
2002811日「関東おとうさんコーラス大会 in
小出郷」