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   第14回 おとうさんコーラス大会

          in 秩父

 


                         
加 藤 良 一

 

 

男声合唱団 コール・グランツ     


 

 例年になく遅い梅雨明け直後の8月2日、第14回目を迎えた「おとうさんコーラス大会」が開かれ、地元埼玉を中心に遠くは静岡、神奈川、新潟、群馬、茨城など関東一円の男声合唱団28団体が秩父ミューズパーク音楽堂(埼玉県秩父市)に集まりました。


男声合唱団 ドン・キホーテ


 おとうさんコーラス大会は、埼玉県が全国に先駆けて立ち上げた男声合唱のイベント。そもそもはおかあさんコーラス大会があるのになぜおとうさんはないの?というところから始まったわけですが、そこはオトコのやることですから、ただ歌って終るわけにはいきません。歌、とくれば酒です。この二つは切っても切れない深い因縁で結ばれているのは、いまさら申し上げることもありますまい。


男声合唱団 イル・カンパニーレ
 

 川口市にあるサッポロビールの講堂で第1回目の大会が開かれたのは、 ちょうど今から14年前の夏のことでした。コール・グランツは初回からずっと参加しているのです。その後、すこしづつ関東の近隣へウワサが広がり、埼玉以外からも参加する団体が増えてきました。そうこうするうちに全日本合唱連盟関東支部との共催になり、本格的に関東大会へと拡大され、今日のような盛り上がりをみるに至ったのです。


男声合唱団 メンネルA.E.C.
 

 おとうさんというネーミング、ひとによってはいまいち気に入らないのも無理からぬところ。未婚既婚を問わず子供がいないのにおとうさんと言われたって困るに決まっているからです。それにおとうさんという響きからして、いかにもオヤジを連想させるので、若いひとには とくに不評なのです。


男声あんさんぶる「ポパイ」


 でも、いまさら大会の名前を変えるわけにもゆきません。あまり考えたことがなかったけれど、まったく同じことがおかあさんコーラス大会についてもいえると思いませんか。 おかあさんでない女性にとっては、きっと妙な大会と写ることでしょう。
 おとうさんおかあさんという言葉は、男性と女性というジェンダーとはまたちがった何か「役割」といったようなものを具えているといえないでしょうか。


 オヤジって一体何なんでしょうね。家庭でオヤジといえば父親で、それに対応する母親がオフクロでしょうが、これはあくまで家庭内のことであって、世間一般に当てはまるものではありません。オヤジ狩りなる不届きな行為は、父親を狩るのではなく 見ず知らずの中年男性をいじめることです。
 つまり、どうやらオヤジとは中年男性一般を指す言葉にちがいないとは見当がつきますが、それに 引き替え、中年女性一般を指す言葉は見当たらないから不思議です。以前オバタリアンというのがありましたが、これは中年女性一般を指してはいるだろうけれど、オヤジに対応するものとは思えませんしね。

 


つむぎの里ゆうき男声合唱団

 おとうさんコーラス大会に一度でも参加したことのある人は、きっとその楽しさのトリコになることでしょう。近年の大会は、演奏レベルも相当向上しています、というよりウマイ団が参加するようになったといったほうが正解でしょうかね。その昔はけっこうイカガワシイ合唱団がありましたが、いまではそんなことはありません。
 


第二部の懇親会(野外ステージ) 
埼玉県の合唱団有志による「富士山より『かわづら』」の演奏(指揮:メンネルA.E.C. 須田信男氏)




 秩父ミューズパークは、おとうさんコーラス大会を開くには最高の施設です。第一部の演奏会は屋内の音楽堂で合唱を満喫し、第二部懇親会は隣りの野外ステージに移動し、秩父の山並みを仰ぎ見ながら大いに盛り上がることができるんです。音楽堂はとても響きのよいホールだし、野外ステージは5,000人収容の開放的なステージです。もちろんドーム状の屋根がついているので雨が降ってもだいじょうぶ。

 さて、最後になってしまいましたが、演奏内容に触れないわけにはゆかないでしょう。今回の参加28団体をABCランクに別けるとしたらどうなるかなどと、つまらぬことは聞かないほうがよいと思います。それにここはコンクールではないし、評価するにしても基準がまったくちがうのですから。
 それなのに、ぼくの二つとなりの席にいた女性はすべての団を採点していたのです。最初から採点していたのはわかっていたんです。28団体の良し悪しをすべてもらさずチェックするのも疲れることでしょうね。ABCに+−をつけているから5段階くらいの評価だったでしょうか。その結果を最後に見せてもらったんです。「なるほどね!」、「えー、そうか?」、「ほうほう」、「やっぱりね」、「いいとこ突いてるね」と、ぼくの感触と大きな隔たりはなかったような気がしたものの、でも、評価の原則はあくまで歌の良し悪しが基準になっていたのが、ちょっと気になったところです。
 音楽的完成度を目指す団、エンターテインメントに凝る団、どうにも打つ手がなくいつものヤツを披露する団などなど各団各様でした。さすがに宗教曲を持ち出す団がなかったのは、とりあえず良識(?)が生きていると確認できて一安心でした。

 

(一部の写真は男声あんさんぶる「ポパイ」関根盛純氏の撮影によるものです)    2003年8月7日



      

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