十八の夏
移植を間近に控えた頃祐子がベッドの上で書いた青春物語です。
 
 

3    第三話
「ねえ由利子、ちょっと練習見に行かない?」
「うんそうだね。行こう」
「信平、わたる、入るよ〜」
「おう、由利子。あれっ理奈は?」
「いますよ〜」
「いたのか。わたる〜由利子と理奈きたぜ」
「おう、どうしたの?」
「ふたりでちょっと見にきたの。ねっ由利子」
「そう。どお〜」
「完璧。奈〜信平」
「あったりめ〜よ」
「一回きいてくれよ。信平やろうぜ」
ふたりとも一年ですごい上達してて。才能だな〜やっぱり
すごい迫力。これなら絶対にいける
「ど〜だ?俺とわたるの自信作」
「サイコ〜。さすがっ。ねっ由利子」
「うんすごいよ。感動」
「だろ〜ガンバロウなっ、わたる」
「おう」
文化祭では最高にいいライブが出来そうで私も由利子も期待している
 
そして文化祭当日
 
「由利子、いよいよ今日だね、ライブ」
私も由利子も朝からワクワク。うまくいくといいけど
私ちょっと不安・・でも大丈夫だよね。あんなに練習したんだもん
「オ〜ッス」
「わたる、私と由利子今来たの。信平は?」
「チ〜ッス」
「来たっ」
「ど〜?ふたりとも。うまくいきそう?」
「何いってんのよ〜理奈ちゃ〜ん。俺達のライブが失敗で終わると思う?な〜わたる」
「そうだよ。心配すんなって」
「そうだね」
わたるたちのバンドはすでにファンクラブが出来ている。何か変な気分。やだって言う気持ちとすごいっていうのと・・・複雑
ファンの女の子は一年生の女の子が多い。もちろん私も由利子もファンだけど。あっ、そろそろ始まる・・
「え〜只今より二年生の生徒によるライブが体育館にて行われます。皆さんぜひお集まり下さい」
「いこっ、理奈。早く。一番前にすわんなきゃ」
「うん、いこっ」
体育館まで猛ダツシュ・・
「やった〜一番のりだねっ由利子」
「やったね」
「ここが一番見やすいでしょう?理名っ、ここでいいよね」
「うん。由利子〜何かさ〜ドキドキしちゃうね」
「うんうん」
5分後・・・
「理奈、見て後ろ」
「えっ?」
ひぇ〜すごい女の子の数・・
いつの間に、こんなに。また複雑な気分
「すご〜い。ね〜由利子複雑じゃな〜い?」
「なにが?」
「気分・・」
「まあね。私たちのマブダチなのよ〜って言いたい」
わかってない・・由利子。違うの・・何だろう・・うまく言えないけど複雑だな〜
「あっ、始まるよ。理名」
「皆さんこんにちは。本日はお集まり頂きましてありがとうございます。俺達のセカンドライブどうぞ楽しんでってください。望月でした」
「望月く〜ん」
「わたる人気あるねっ、理奈」
「えっ」
「どうしたの?そんな顔して」
「べっ、別に〜」
別に・・わたるが人気あるっていい
事じゃん。私は・・・
いつ見てもすごい迫力で今日のセカンドライブも大成功に終わりました
でも私はそれどころじゃなくて
「わたる〜」「望月く〜ん」
の言葉が何だか私をどんどん複雑な気分にさせたのでした。
でも驚いたことがあります。由利子が暗い顔をしていたので聞いてみると・・
「どうしたの?由利子。暗い顔して?」
{なんか〜なんかさ〜ムカつくのよねファンの子たち。キャーキャー言い過ぎだし、何が信平く〜んよね〜」
「あっ・・」
「あっ、別に〜私が信平の事好きとか・・」
「別に、私何も・・」
「あっ、あのさ〜実は私ね」
「私も」
「えっ?」
「好きだよ。わたるの事。今わかった・・」
「私も信平が好き」
「じゃあないかなって思ってたけどね」
「私も。理奈たまにわたるの事見てボ〜ッとしてるから」
「えっ、私見てた」
「うん。ふたりだけの秘密ね」
「オーケー」
「あ〜由利子、忘れてた。花!」
「そうだった。早くいこっ」
私たちが大きな花束をもって体育館に再び戻ると女の子の行列。何してんだろ〜
「ねえ由利子、何これっ」
「さあ・・あ〜これってファンの子たち?」
「うっそ〜」
「たぶんそうだよ」
「ねえ望月先輩になに上げるの?」
「私?手紙と時計」
「聞いた〜理奈」
「私たち・・花」
「いいんだって。それで」
「月野先輩受け取ってくれるかな?」
「大丈夫、絵里は可愛いから」
「なんなの〜理奈並んでる場合じゃないよ。行くよ」
「うん」
「ちょっとごめんね〜」
「はいはいちよっと失礼」
「わたるおつかれ〜」
「おう、理奈サンキュー」
「おつかれ〜信平」
「サンキュー由利子」
その後ファンの子たちは減ってしまったけどわたるも信平もそれでいいと言ってくれた。すごい人数だつたから大変だったみたい
そんなこんなで二年生もあっという間に終わり、三年生の10月30日、私の誕生日がやってきて・・・
「今日は理奈の誕生日だね〜」
「十八かあ、あんまり実感わかないな〜」
「よっ、理奈の誕生日だな。きょうは」
「理奈も十八かあ、俺と由利子だたな」
「もうすぐでしょう、信平も由利子も」
「まあねっ、信平また買い物ね」
「わかってる」
「理奈はわかってるよね、時間。毎年恒例だもんね」
「うん」
そうして私の誕生日が始まった
 
「おめでとう〜理奈」
「ありがとう、由利子」
「十八だなあ、俺と理奈はひとつ上になったわけだ。信平くん、由利子ちゃんタメ口聞かないように」
「何言ってんだか。何ヶ月違いってだけでしょうが」
「そうだよ、来月になれば俺も十八です〜」
「私が一番おそいんだよね」
「でもさあ、十八になったって事は高校も終わりだよ〜何か淋しいな〜由利子そう思わない?」
「そうだよね〜あと五ヶ月」
「バラバラになるのか」
「わたる、なんねえって!俺達はそれぞれの道に行くけど何も変わんねえよ。ずっと」
「そうだよな。変んねえよな」
「そうだよね」
「そうだよねっ理奈」
「それよりここで俺から理奈にプレゼント」
「えっ、なに?」
「聞いてください」
わたるはギターを取り出して私に曲をプレゼントしてくれたの。嬉しかった・・
 
十八歳の誕生日いい思い出になったな
そして11月12、1,2,3月・・・
私たちの最大イベント
卒業式がやってきました
「いよいよかあ、信平泣くなよ〜」
「ば〜か泣かねえよ」
「早かったよね」
「やだ、由利子まだ泣かないでよ」
本当に楽しかったこの三年間。隣にいつも由利子やわたるや信平がいて。そう言えば私たちケンカもほとんどした事がない
「あお〜げば〜と〜とし」
「理奈、はいハンカチ」
「ありがとう。やっぱり泣けるね〜」
式の間沢山の出来事を思い出しました。今日で最後だと思うとすごく淋しいけど楽しかった高校生活にありがとう・・
 
「ふう〜卒業式も終わったしこれからどうしやす?信平くん」
「うちで卒業パーティしようぜ」
「信平んちで?理奈も由利子もそれでいか?」
「そうだね〜信平んちは一年中飾り付けしてあるしね」
「そうそう。じゃあ買い物していこうぜ」
「せんぱ〜い。望月先輩何かください」
「えっ、ごめん何もないや」
「何でもいいんです」
「ごめん」
「俺もさっきひどい目にあったんだよ。よってたかってネクタイだのペンだの持ってかれてさ〜」
「大変だね、わたるも信平も。ねっ由利子」
「うん。わたるも信平もさ〜中学の卒業式にボタン全部無くなった?」
「無くなった。信平は?」
「俺も無くなった」
「モテたんだね〜昔から」
「由利子〜もういいじやん。それより早く行こうぜ」
わたるも信平もこれからは働きながらミユージシャン目指して頑張っていくわけだけどどんどんふたりが遠くなっていきそうで何だか怖い。そのうち私たちのことなんか忘れちゃったりして。その時由利子も同じ事を考えていたみたい
「二人とも暗い!!卒業式終わって淋しいのは良くわかるけどさ〜わたる〜何とか言ってくれよ」
「元気だせって」
「今度のパーティいつかな」
「理奈、なんだよ突然」
「いつ?」
「なんだろ〜な、信平」
「今度はわたるの誕生日たろ〜」
「良かった」
「良かったね。理奈」
「何言ってんのお前ら?」
「あ〜ねえねえ信平これ食べようよ。ねっ。あと由利子〜ピザ食べたくなあい?」
「うんうん食べたい」
「わたる、こいつら何なの?」
「さあな」
私も由利子も卒業式を終えた事で二人がは泣けていきそうで怖かった。これからも変わらないよね。四人ずっとずっと一緒だよね・・
「じゃあカンパーイ」
「ここで1人ずつこの三年間の感想を言ってもらいます。じゃあわたるくんからどうぞ」
「俺?う〜んマジに言います。信平と由利子と理奈と友達になれて本当に良かった。産卵がいつもそばにいたから毎日がすげえ楽しかった。三人ともかけがえのない友達です。以上」
「くう〜泣かせるねえわたるくん。次は理奈ちゃん行ってみよう」
「この三年間いろ〜んな事あったけどやっぱりわたるの言うように三人がいてくれたから何しても楽しかったし充実してたよ。みんなありがとう」
「はいっ次は由利子ちゃん」
「私もおなじ。三人がいてくれた事ってやっぱり一番大きかったと思う。ホント楽しかったです」
「じゃあ俺。実はというかやっぱり俺も同じで三人がいたから楽しかった。高校生活がこんなに楽しくなるとは思わなかった。ホントありがとう」
本当に楽しかったこの三年間。ずっと忘れない
「酔っちゃったよ〜ねむ〜い」
「ハハハわたる寝ちゃだめだぞ〜もっと飲むの!ほらわたるく〜ん」
「わたるも信平も飲み過ぎだよ〜」
「ほっときな理奈。あ〜寝ちゃった」
「私たちどうする?」
「泊まろっ、向こうの部屋で寝よっ。酔ってるから何するかわかんないし」
「そうだね〜由利子が言わなかったらこの辺で寝てたよ」
「ねえ理奈、いいの?このままで」
「何が?」
「わたるの事。何も言わないの?好きだって・・」
「あ〜いいの」
「どうして?」
「由利子は?」
「私は・・言わない」
「でしよ〜私も言わない。って言うより言えない」
「おなじたねっきっと。理奈と私が思うこと」
「私今わたるに好きって言って気まずくなるのもやだしふられたらもう会えない。わたるが近くにいてくれたら私何も言わなくていいの」
「私も同じ」
「四人のままがいいもん」
「うん。おやすみ」
「おやすみ」
 
卒業式も終わり私たちはそれぞれの道を歩く事になりました



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