十八の夏
移植を間近に控えた頃祐子がベッドの上で書いた青春物語です。
 
 

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卒業式も終わり鷲たちはそれぞれの道を歩く事になりました
 
1999年4月
「はあ〜きょうは初日。頑張るぞ〜言ってきま〜す」
もう高校のようなメイクは出来ません。ナチュラルメイクててで初日頑張りま〜す
私は今日から洋服の専門店で働きます。お客様にアドバイスしたりするのに色々な勉強もします
由利子は保母さんになるための勉強中。ピアノもうまいし子供大好きな由利子に保母さんはとても向いてると思う。わたると信平は共にミユージシャン目指してそれぞれの職場で働いている。実はどっちも楽器屋さん。ほ〜んと好きなんだね〜休みの日や仕事の帰り、お昼なんかにたまに四人で合会っている・・
 
1999年6月
就職してから二ヶ月・・
だいぶ慣れて私は今ちゃ〜んとお客様にアドバイスしてま〜す
「いらっしゃいませ〜。あ〜わたるどうしたの?」
「ちょっと近くまで来たから。昼出れんの?」
「うん、出れる。もうちょっとまってて」
「外にいるから」
「うん」
十分後
「お待たせ〜」
「めし喰おうぜ」
「どこいく?」
「何食べたい?」
「う〜ん、パスタ」
「よし」
「わたる〜最近信平と会った?」
「あ〜あいつ何か忙しいらしいよ」
「そう。由利子も大変みたい」
「そっかあ。でもまた近い内四人で会おうな」
「うん」
「こんなところにイタメシ屋なんてあったんだあ」
「知らなかったの?理奈だけだよ、しんねえの」
「そうなの?」
「そ〜だよ」
「それよりもうすぐわたるの誕生日だね」
「あっそうだな〜十九かあ〜早いなあ」
「今年もするよね。誕生日パーティー」
「どうかな〜信平が。由利子だってもう忘れて・・」
「忘れない」
「理奈」
「忘れないよ、誰も。そうやってみんなバラバラになるのやだよ」
「少なくても俺はそばにいるよ。ふたりとも大丈夫だと思うけどさっ」
「約束だよ」
「おう」
 
思わずわたるの優しい言葉にホッとして涙がでちゃった。お昼休みが終わってわたると別れました・・
 
1997年7月
暑くなったな〜きょうは仕事もお休み
プルルルルルルル〜
「はい。あ〜由利子?久しぶり〜どう?」
「うん、今はね忙しくないの。理奈ひまなら会わない?」
「うんいいよ。お昼でも一緒に食べようか」
「そうだね。じゃあ近くのイタメシ屋知ってるよね?」
「うん」
「じゃあそこで」
「わかった、じゃあ後でね」
久しぶりに由利子と会う
「由利子〜」
「理奈〜」
「待った?」
「ううん、今ついたとこ」
「良かった」
「うん」
「二名様ですか?」
「はい」
「どうぞこちらへ」
わたると来たのを思い出すな〜
しかも同じ席・・・
「この間わたるとここ来たんだ〜ちょうどお昼休みで店寄ってくれて」
「元気そうだった?」
「うん。その頃由利子も信平も忙しそうで行くとこなかったみたい」
「なるべく会うようにしようね。いつまでも四人一緒でいられるように」
「うん。あっ、来月さ〜」
「わたるの誕生日でしょう。やるよっもちろん。この間ね偶然信平に会って、言ってたよ。来月忘れんなよって。理奈にも言っとけって」
「良かった〜」
大丈夫、みんな同じ気持ちなんだ。四人は絶対いつまでも変わらない。かけがえのない友達・・
 
1999年8月
8月16日・・
毎日暑くて暑くてバテそう
明日はわたるの誕生日。19歳になるんだね〜私は八時までの勤務を七時までにしてもらって夜遅くからでもいいの。若いから次の日仕事でも大丈夫!
8月17日・・きょうのわたるの誕生パーティーは夜の八時半から。私と由利子はまた料理をしなきゃいけないし結構大変な一日になりそうで・・
信平は六時に仕事が終わるようで、何か信平にも出来る仕事はないかな・・
私はこれから仕事に行ってきま〜す
プルルルルルル〜
「はい。わたる?」
「おはよ〜きょうさちょっと遅くなるかもしんない」
「忙しいの?」
「うん、今日に限ってバイトの子が休みなんだ。でも九時半までには必ず行くから。由利子と信平にも言っといて」
「わかった。じゃあね」
夜は長いから大丈夫。来てくれさえすれば。本人がいなきゃ意味ないもんね。あっ、おめでとう言うの忘れちゃった
 
「おはようございます」
「おはよう!わたる今日は誕生日だろ」
「何で知ってるんスか?」
「履歴書見ればわかるさ〜」
「そうなんスよ。19です」
「19かあ〜若いな〜これは俺からのプレゼント」
「えっ、これ」
「お前これ欲しかったんだろ」
「はい。でも・・」
「いいから受け取れ」
わたるがもらったのは店長が一番気に言っていた自分のギターでした
「ありがとうございます」
「その変わり絶対にミュージシャンになれよ」
「はい、がんばります」
「よし、じゃあ仕事始めるか」
「はい」
「あっ、わたる今日は早く帰っていいぞ、代わってもらったから。誕生日くらい早く帰りたいだろ〜」
「いいんですか?」
「ああ」
お昼休み・・
プルルルルルル
「はい、わたるどうしたの?」
「理奈、今日さ〜店長が早く帰って良いって言ってくれてさ〜六時くらいに帰れそうなんだ」
「そう、良かった。じゃあ予定通り八時ね」
「わかった。じゃあな」
「じゃあね」
良かった。私これからプレゼント買いに行くの。もう決めてる・・お揃いのプレス・・
お揃いとはもちろん言わないけどねっ・・
「これ日付と名前彫ってください」
喜んでくれるかな・・わたる
「はい、出来上がり」
「ありがとう」
やっば〜お昼休み終わっちゃう、急がなきゃ。これから六時間頑張ります。
そして午後七時・・・
「ふう〜お疲れさまでしたあ」
「お疲れさま〜気をつけてね〜」
「は〜いお先に失礼しま〜す」
電話しとこ・・
「あっ、もしもし信平?由利子いる?」
「もしもし理奈?」
「今終わったの。すぐ行くから。そうそうわたるね〜予定通り八時半に来れるって」
「わかった。じゃあ気をつけてね」
「うん。じゃあね」
二十分後・・
「ごめ〜ん」
「オッス、理奈」
「由利子は?」
「あ〜理奈っ私支度しといたから」
「ごめんね〜」
「お疲れさま。疲れてるでしょう」
「大丈夫だって、若いから」
「やっぱ女いるといいよな〜一人暮らしは・・」
「ねえ信平、由利子なんてどお?」
「ちょっと理奈!あんた」
「由利子は俺のことなんて嫌いみたいだしい」
「私がいつ嫌いって言ったの〜」
「だってさっきからすげえ冷たいじゃん」
「それは・・」
「信平って由利子の事好きなの?」
「えっ、俺は〜まあほらっ、何て言うの・・由利子が俺の事好きなら付き合ってやってもいいかなみたいな」
「じゃあ・・付き合ってよ」
「えっ、今何て?」
「カップル成立。おめでとう〜」
「理奈、私・・」
「おめでとう由利子。良かったね。大成功」
「なあ、理奈はわたるの事どう思ってる?」
「どうって・・別に・・」
「あっ、八時半だ。そろそろわたる来るな」
「それで何?」
「なんでもない」
数分後・・
「できたあ〜後はわたるが来るだけ」
「わたるおせえな」
「そうだね、もう九時半になる」
それから30分たち、40分、50分、一時間・・
九時半になってもわたるは来なかった
「見てくるよ、俺」
「私たちも行く」
近くで救急車のサイレンの音が聞こえる
「信平、理奈、わたるじゃないよね」
「そんなわけねえだろ〜!変なこと言うな」
「・・・」
近寄ってみるとそれは信じられない光景だった・・・
「わたる〜〜〜〜」
「わたる・・いやあ〜〜〜〜」
わたるでした。血塗れになりわたるは倒れていました。私たちは愕然としたまま救急車でわたると一緒に病院へ行きました。しかしわたるは病院に着くと間もなく息を引き取りました。事故でした。赤信号を無視して走ってきたトラックにわたるは引かれたそうです・・
「わたる〜ど〜して」
「くっそ〜わたる〜」
「わたる・・そばにいるって言ったじゃん」
「わたるはなあ理奈の事ずっと好きだったんだ」
「うそ・・わたる起きてよ。ねぇわたる、起きて〜〜〜」
「理奈・・」
「そ〜だよ、起きろよわたる。一緒にやるんだろ〜ミュージシャンになるんだろ。起きてくれよ・・わたる・・」
「信平・・」
私たちはずっとわたるのそばにいました・・
 
わたる言ったよね。三人と友達になれて良かったって。
三人ともかけがえのない友達だって。
高校一年の時ミュージシャンになると言う夢を嬉しそうに話すわたるが大好きだった。
二年生の文化祭・・セカンドライブ大成功
カッコ良かったよ・・わたる
三年・・卒業式の夜みんなで泣いたね
私はわたるが好きだった・・
言えば良かった・・好きだって・・
 
1999年8月17日、午後9時52分・・
彼は19歳と言う若さでこの世を旅立ちました
 
そして十八の夏・・・
私たちは改めて命の尊さ、命の大切さを教えられました
あの時の出来事は永遠に忘れる事はありません
あれから三年・・
夢を叶えるために一生懸命だったあの頃のわたるの笑顔・・今でも大好きです
今日もまた空の上でギターを弾いているに違いありません
ありがとう・・・
わたる・・・
 
−完−
 
★間に入ってる祐子が描いたイラストは時間が無かったのか
信平くんだけがありません
 
 



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