この度、「視覚障害者における、携帯電話・PHSに関するアンケート調査」を行いましたので、ご報告申し上げます。
1.調査概要
調査目的 多機能・高機能と、進化しつづける携帯電話だが、私たち視覚障害者にとっても、便利なツールの一つベある。しかし、使える機能はまだまだ少ないように思われる。視覚障害者にとっての携帯電話の、現状把握・問題点・今後の要望を調査した。
調査内容を事業者に届けることで、視覚障害者にとっての携帯電話を考えていただく機会になることを望むものである。
調査年月 平成16年2月
調査対象 ・視覚障害者リハビリテーション施設、社会福祉法人日本ライトハウスの生活訓練部・職業訓練部において、入所・通所により訓練を受ける視覚障害者。障害等級一級から3級の方が主で、先天性、後天性、全盲。弱視、状態はさまざまである。
・視覚障害者で有志の方
※ 視覚障害者とは、視力障害者と、視力に関係なく視野欠損の顕著な視野障害者である。
※ 日本ライトハウスのホームページはこちら
有効回収数 56名
(内訳) 文書21 点字6 メール・テキストファイル12 web14 聞き取り3
調査者 竹田 幸代
2.調査結果
質問1 あなたの性別は
男性34人 女性21人、 無回答1人
質問2 年齢は
25歳以下 9人、26から35歳14人、36から45歳 16人、46から55歳 10人、56から65歳 6人、66歳以上 1人
質問3 あなたは通常の状態で、新聞の本文の文字が確認できますか(4択)
電話の機種により文字の大きさはさまざまである。標準画面文字の大きさに近い、新聞本文を比較対照とした。
できない 31人、確認できる文字はある 12人、内容がわかる程度に確認できる 3人、できる 9人
「ある程度確認ができる」「できる」と回答した方のほとんどは、視野障害と思われる。
質問4 あなたは、携帯電話またはPHSを持っていますか(3択)
持っている 50人 、持とうと思っているがまだ 2人、持っていない 4人
質問5 使用頻度は(3択)
毎日持っている 43人、必要なときだけ持っている 6人、ほとんど使っていない 1人
質問6 携帯・PHSの画面を確認する方法は(5択、複数回答)
音声ガイド 21、ルーペや拡大器を使う 12、目で確認 14、指の感覚だけ 8
質問4で、「新聞本文の文字が確認できない」と回答された中にも、画面を目で確認している方が。逆に「できる」と答えた方で、音声ガイドを使用している例もある。
見え方と、実際の確認方法の関係を調べた。(表)
| 音声ガイド使用 | ルーペ・拡大器 | 目で確認 | 指の感覚だけ |
確認できない | 16 | 5 | 1 | 8 | | |
わかる文字もある | 4 | 7 | 3 | 0 |
内容がわかる程度 | 0 | 0 | 3 | 0 |
確認できる | 1 | 0 | 7 | 0 | >
質問7 通話以外で使う機能は(複数回答)
メール以外の機能を使用している例は、少ない。「その他」の記入欄には、「時計機能」「電卓との回答があった。
メール36、インターネット13、メモ・録音6、カメラ7、音楽再生3、その他5
確認方法と、使用する機能の数殿関係を調べた。(表)
| 通話のみ | 1種類 | 2種類 | 3種類 | 4種類 | 5種類 |
音声ガイド使用 | 5 | 10 | 6 | | | |
ルーペ・拡大器 | 1 | 6 | 3 | 1 | |
目で確認 | | 4 | 6 | 2 | 1 | 1 |
指の感覚 | 7 | | 1 | | | |
質問8 あなたの携帯・PHSの電話会社は
ドコモ 37人、AU 7人、 ボーダホン2人、ツーカ 4人
質問9 わかれば機種名(または通称名)を記入してください
圧倒的にドコモ、F671・F672が多い。このシリーズは、他メーカーに無い、音声ガイドのついた機種で、全体の4割以上を占めた。
質問10 今お使いの携帯・PHSは(複数回答)
知人の紹介 7、店員の勧め 4、自分で選んだ 24、その他 4
質問11 どのようにして使い方を覚えましたか(複数回答)
いろいろ触って憶えた18人
説明書を見た 15人
請願者に助けてもらった 11人
視覚障害者で同じ機種を使用する人に聞いた 7人
通話などわかる機能しか使っていない 7人
その他 3人、店に行って聞いたなど
質問12 携帯・PHSの説明書はどのような形式を望みますか(6択)
質問13 SPコードによる説明書を望みますか(4択)
SPコードについてはこちらで
望む 16、どちらでも良い 20、望まない 6、わからない10
質問14 購入するとき何を重要視しますか。複数回答

基本的な操作性としての、音声・文字の大きさ・ボタンの押しやすさが、全体の59%を占めた。現在音声確認に頼らない人でも、購入時の重要視する選択基準の一つとなっている。
質問15 最近カーナビのような機能のついた携帯がありますが、使いたいと思いますか(4択)
音声で操作でき、電話自体も音声機能つきなら 使いたい26人
音声で操作できれば使いたい8人
使いたい9人
使いたいと思わない9人
現在、ナビ機能を使用している例は無かったが、条件付を含め、使いたいとの回答は82.7%あった。
質問16 携帯・PHSは、あなたの生活上必要ですか(3択)
必要 50人、わからない 1人、必要ではないは0人
質問17 携帯・PHSを持っていない理由は(5択)
必要ない 2人、持ちたくない 1人、使いこなせない)または、そう思う)2人
必要ないと答たなかに、画面が見えないのでは、というコメントもあった。
質問18 すべてのかたにお尋ねします。携帯・PHSについて自由にご意見を記入してください。
自由回答の形を取ったが、どの質問に対しても、一定の方向性が見られた。
(1)どんな時に便利だと感じますか
待ち合わせのときや、緊急な連絡手段として、公衆電話代わり。といった内容がほとんど。
・単独歩行中、公衆電話の場所がわからないとき、道に迷ったり事故がおきたりして緊急に助けを必要とするとき。慣れないところや遠方へ単独で出かけるとき。待ち合わせ、特に視覚障害を持つ人。
手軽さをあげる例も数件。
少数意見では、
・聴力障害を持つ人と連絡を取るとき(電話として携帯メールを使用)。
・電車を利用する際の情報収集、駅情報や運賃などがわかり、出かけやすい。
(2)どんな点が不便だと思いますか
音声対応が不十分、対応機種の少なさ、画面の見にくさなど、確認作業に関わる意見が半数以上。
・短縮登録が人の目を借りないとできない。
・ナビ機能は付いているが、画面が小さいので見えない。
・視覚障害者に対応している機種が限られている。
・圏外なのか充電が切れているのかわからない。
便利さが反って不便という意見も4件あった。
・気楽にメールされてしまう為、画面を読むのに疲れること
(3)今後どのような製品・サービスを望みますか
機能が使えるよう望む意見が半数以上だった。説明サービスを望む、使えるナビを望む声も多くあった。
・全ての操作に音声が対応していること
・文字のサイズを自由に変えられる機種が増えること。
・機能を使いこなせるような説明書
・ルーペや単眼鏡,拡大読書器などになるカメラをつけてほしい。
・ナビゲーション機能を搭載して、全盲が一人歩きする補助具の機能を付加してほしい。店の前ではその店の名前がわかるようなシステムを作ってほしい
・もっと安く
質問19 携帯・PHS以外で日頃不便さを感じる商品やサービスがあればお書き下さい。
身近な家電製品が多かった。ビデオ・オーディオのリモコン、操作に関すること。
液晶画面で操作手順を選択するもの。
紙媒体の、説明書・契約書
3.考察
私たち視覚障害者にとっての携帯電話・PHSは、一般的な「便利なモノ」の枠を超えた、視覚を補う「補装具」という意味合いが強く、必需品である。近くにいるであろう人を探す、行先を見失った、それでも公衆電話が見つけられない。そんな時、携帯を持っていれば非常に心強い。しかし、使えている機能は一部である。簡単に使えることが課題だろう。
簡単な操作で解消されるはずの不便さ、付いている機能に気付いていない、操作サポートサービスを知らない、等の声もあった。これらは、携帯購入時に一声あれば解消されていた問題である。
説明書の在り方として、上位3つの共通点は、「音」である。テキストファイルは、パソコンの音声ソフトを用いて読ませることができる。そうでなくても、パソコンならフォントを変えて見やすい大きさで読むことができる。予想に反した結果だったのは、SPコードについての回答。まだ、ごく一部の企業、自治体でしか使われていないため、認知度が低いのだろうか。
一般的には、電信以外の付加価値を望む声も多いが、私たちが望むのは、私たちでも操作できる携帯だ。まだまだ対応機種もほとんどなく、配慮されている機種でも、気付いてもらえていない部分が多いようだ。不便さを訴える声が多く挙がった。
電話会社や、機種メーカー、デザインにこだわっているという声は少ない。言い換えてみれば、音声ガイドが充実しているか、画面が見やすい、扱いやすい機種に、ナビが付いていれば、多くの人が動くのではないか。そして、「通信・情報収集」の為に、より一層活用することになるだろう。