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「マリー・アントワネット」

ジョーン・ハスリップ著
櫻井郁恵訳

1999年6月刊、529ページ、近代文芸社、定価 3,150円(税込)

ISBN4-7733-6542-0

(本書「マリー・アントワネット」は、お陰様で完売いたしました。)


本書のあらまし

☆著者はイギリス女性の伝記作家で、1987年に「マリー・アントワネット」を出版しています。

 「はじめに」、「プロローグ」、「第1〜40章」、「訳者あとがき」、「参考文献」で構成され、529ページです。

厚い本ですが、本邦初公開の逸話も多く散りばめられ、わかりやすい物語調で書かれているため、

予備知識のない方も安心して読めると思います。

原文は英語で、臨場感あふれる描写が多く、さながら映画を観ているような錯覚に陥りましたので、

できるだけ忠実に、妙味を損なわないように翻訳致しました。 

それでは、内容の紹介へどうぞ。


内容の紹介

「はじめに」

著者が作品を書くにあたってのいきさつ。


「プロローグ」

宿敵同士のオーストリアとフランスが同盟し、皇女マリー・アントワネットとフランス王太子ルイの政略結婚が決まる。

本文


「第1章」 

オーストリアの名門ハプスブルク家の皇女マリア・アントニア(マリー・アントワネット)の少女時代。母は女帝マリア・テレジア。父は神聖ローマ皇帝フランツ一世。大勢の兄姉に囲まれ幸せな子供時代を過ごすが、14歳でフランス王室に嫁がされる。


「第2章」

オーストリアからフランスへお引き渡し。


「第3章」

ヴェルサイユ宮殿にて王太子ルイと結婚式を挙げる。


「第4章」

フランス王室ブルボン家の人々についての説明。国王は若い愛妾に首ったけ。国王の三人の娘たちは未婚の退屈な中年婦人。国王の孫が王太子ルイである。結婚したものの規則づくめの生活にうんざりするアントワネット。


「第5章」

国王の愛妾と反目するアントワネットに母から叱責の手紙が届く。


「第6章」

王太子夫妻はじめてパリを訪問。民衆から大歓迎される二人は大喜び。


「第7章」

アントワネット、オペラ座の仮面舞踏会でスウェーデンのフェルセン伯爵と運命的な出会い をする。


「第8章」

国王、天然痘で崩御。ルイ、アントワネット即位。


「第9章」

流行を追う若い王妃。


「第10章」

弟の訪問を受けるアントワネット。政治に追われるルイ。世継ぎが誕生しないことを心配するマリア・テレジア。


「第11章」

ランスでの戴冠式。余計なことに首をつっこむ王妃にハラハラする母と兄。


「第12章」

アントワネットの社交仲間とファッション、宮廷生活について。


「第13章」

アメリカ独立戦争を援助するフランス。劇作家のボーマルシェがスパイとして大活躍する。公務をおろそかにする王妃の人気が落ち始める。


「第14章」

兄の訪問。アントワネットは結婚の秘密を打ち明ける。


「第15章」

王妃の懐妊とアメリカ独立戦争、バイエルン継承問題。


「第16章」

フェルセン伯フランスに戻るが、志願兵としてアメリカに渡る。アントワネット公開出産で王女を産む。


「第17章」

王妃の中傷ビラ出回る。取り巻きに利用されるアントワネット。


「第18章」

母マリア・テレジア死去で悲嘆に暮れる王妃。


「第19章」

待望の王太子誕生。徒党にけしかけられ政治に口出しする王妃に周囲は迷惑。ロシア皇太子夫妻訪仏。


「第20章」

落目の王妃は自分の世界に閉じこもり世間を見ようとしない。実の娘からも愛されない王妃。フェルセン伯アメリカから帰還。


「第21章」

ボーマルシェの「フィガロの結婚」上演騒動。スウェーデン王訪仏。副官のフェルセンに 心傾く王妃。


「第22章」

次男のノルマンディー公(後のルイ17世)誕生。災難続きで人望を失う王妃。首飾り事件起きる。


「第23章」

首飾り事件裁判で王妃の宿敵ロアン枢機卿は無罪。反王妃の機運が一気に高まる。

「第24章」

ルイ初めてノルマンディーを訪れ大成功を収めるが、ヴェルサイユとパリでは不穏な空気が広がりつつあった。財政難を解決するため名士会を開くが失敗。財務総監カロンヌ解任。アントワネットは親友のポリニャック夫人と仲違いし、次第に孤立を深めていく。


「第25章」

国民の憎悪は政治に深く関わるようになった王妃に集中。各地で反乱起こり、政府と国民の溝は深まっていく。


「第26章」

財務総監ネッケル政権へ復帰。三部会開会。幼い王太子病没。


「第27章」

国民の意思を代表する国民議会誕生。ネッケル罷免で国民の怒り爆発。バスティーユ牢陥落でフランス革命勃発。


「第28章」

屈服する国王とは反対に荒れ狂う国民。貴族ら生命の危険を感じて次々と亡命。不安にさいなまれる王妃。


「第29章」

無政府状態が蔓延する。パリの女たちがパンとアントワネットの首を求めてヴェルサイユへ 行進。


「第30章」

暴徒がヴェルサイユ宮へ乱入し、王妃は危機一髪のところをからくも免れる。憎悪に燃える国民と無防備の王妃が向き合う場面は実にスリリングで劇的である。王一家パリへ 連行され、以後チュイルリー宮殿に住むことになる。


「第31章」

事実上チュイルリー宮で国民の人質となった王一家。アントワネットとフェルセンの恋は花開く。彼は理想的な騎士ではなく、王妃の他にも愛人がいた。オーストリアで兄のヨーゼフ皇帝が死去。


「第32章」

ヨーゼフの後を継いでレオポルドが即位するが、アントワネットの助けにはならなかった。王妃は背徳漢ミラボーの援助を受け危機を乗り切ろうとするが失敗。ミラボー死去。


「第33章」

王一家、囚人生活に耐えられず、変装して脱走を図るが見破られてヴァレンヌで捕らわれる。


「第34章」

王一家は罵詈雑言を浴びながらパリへ悪夢の帰還。しかし王妃は護衛役で派遣されたバルナーヴ代議士の心をとらえ、王権を守るため彼を利用しようと決心する。

「第35章」

王政廃止の声が高まる中、国王は憲法を承認。王妃は故郷のオーストリアへ助けを求めて画策するがうまくいかず。議会では共和主義のジロンド派が優位に立つ。


「第36章」

王妃とフェルセン最後の逢瀬。二人の関係はどの程度だったのか?フェルセンの裏の顔とは?王妃の味方である兄のレオポルド皇帝とスウェーデン王相次いで死去。6月に暴徒がチュイルリー宮に乱入するが、王妃はすんでのところで命拾いする。


「第37章」

8月10日事件。暴徒がチュイルリー宮を襲撃する。王一家は議会に避難するが、国民の捕虜としてタンプル塔へ送られる。


「第38章」

タンプル塔で王一家(国王、王妃、王女、王子、王の妹)は国民の見張りを受けながら単調な生活を送る。9月の虐殺事件で王妃の親友が惨殺される。フランス王政廃止、共和国となる。国王裁判にかけられ死刑判決を受ける。家族と最後の別れ。1793年1月21日に国王ルイ処刑される。


「第39章」

王妃をタンプル塔から救出しようと陰謀が企てられるが、子供を置き去りにできない王妃は拒否。だが王太子は政府によって彼女の手から奪われてしまう。王妃は裁判にかけられるため、「ギロチンの控えの間」と呼ばれたコンシェルジュリー牢ヘ連行される。


「第40章」

コンシェルジュリーの70日間。王妃は独房の中で周囲から親切な扱いも受ける。王妃救出の陰謀がまたもや企てられるが実現せず。革命裁判では息子との近親相姦を訊かれるが、後世まで残る名台詞を述べ一時勝利を収める。判決は死刑。有名な 遺書を残し1793年10月16日ギロチンの露と消える。彼女が最後に述べた言葉とは?

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。


 イタリア版「マリー・アントワネット」

 

「ギロチンの露と消えたフランス王妃 激しさを秘め、情熱にあふれた伝記」と、うたっています。

これは、ジョーン・ハスリップ著「マリー・アントワネット」のイタリア版です。
1994年にミラノで出版されています。
名前がイタリア風に「マリア・アントニエッタ」となっています。

 

 

 

イタリア語版はイタリアのリパリ島の小さな書店で偶然見つけ、買い求めたものです。リパリ島はシチリア島からさらにフェリーで1時間かかる小さな島です。まさかこんな所で!と大いに驚いてしまいました。訳者は女性です。女性の方が訳しやすいのでしょうか?改めて気づいたことをまとめてみます。

★アントワネットはお父さん子である

 国務に忙殺される、しつけに厳しい母親と接する時間も短ければ、自然の流れとしてお父さんの方を向くでしょう。父親が子煩悩で子供と一緒に遊んでくれたのは、彼女にとって幸せなことだったと思います。もし父親が子供嫌いだったら、彼女の性格は違ったものになっていたかもしれません。

★アントワネットは心が優しい

 数々の逸話から親切で優しい心根を持っていたことがわかります。それが時には裏目に出てしまってかわいそうだなと思いました。

★勉強好きでないが頭がいい

 台詞や裁判の答弁でユーモアのセンスや頭の良さがおのずと明らかになっています。もし子供時代にもう少し集中力があり、教え上手の教師に恵まれて才能を伸ばせていたら、もっと賢い人間になっていたかもしれません。

★お金で買えないブランドを持っている

 それは「品位」もしくは「優雅さ」です。高価な衣装もうまく着こなしていたと思われます。仮に王妃の身分でなくても、一人の女性として「優雅」だったことでしょう。

最後にヨーロッパの「所変われば名前変わる」で、おもしろいと思ったものを挙げます。
左側がイタリア語です。

【家名】

アブスブルゴ            ハプスブルク
ボルボネ              ブルボン

【人名】

マリア・テレーザ・カルロッタ    マリー・テレーズ・シャルロット
ルイジ・ジュゼッペ         ルイ・ジョゼフ
サヴェリオ・フランチェスコ     グザヴィエ・フランソワ
ジュゼッペ2世           ヨーゼフ2世
エンリコ              アンリ
フェデリコ             フレデリック
カペート              カペー
プリムラ・ロッサ          スカーレット・ピンパネル
トリスタノ             トリスタン
イゾッタ              イゾルデ

【党派】

ジャコビーニ            ジャコバン
ジロンディーニ           ジロンド
(ちなみにタリバンはタリバーニです)

【その他】

フォリアンティ会修道院       フイヤン…
テンピオの塔            タンプル…


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