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Volgaを歌う


加 藤 良 一



20101017日、所沢市合唱祭で廣瀬量平の 『Volga』 を歌った。総勢62人がオンステ。会場は所沢市民文化センター ミューズ・アークホール、西部新宿線の航空公園駅にほど近いところ。

 メンバーは、「法政大学アリオンコール」関連、「川越高校埼玉大学」関連、「○○を歌う会」、「男声合唱プロジェクトYARO会」関連、その他で構成していた。指揮は、常任の磯野隆一さん。

 
練習は全部で5回だったが、結局私は2度しか出られなかった。しかし、自主練習と直前のリハで再確認することで完璧ではなかったがとりあえず歌うことができた。
 私のパートは長年セカンドテナーと決まっていたが、今回はバリトンで挑戦してみた。慣れとは恐ろしいもので、楽譜の行が変わったときについ上から2段目のセカンド譜に目が行ってしまい、慌てることしばし。意識下では上から2段目という位置感覚が完全に定着してしまっている。また、ト音記号ではなくヘ音記号だから五線と音の関係が違うのにも戸惑った。無意識にからだが反応してしまうのは、車の運転と同じだ。以前アメリカでレンタカーを運転したとき、交差点を曲がったとたんに反対車線に入り込んで慌てたことがあった。まったくの横道にそれるがご興味を持たれる方は「オレゴンの森に寄す」(E-11)、「冷や汗のレンタカー ポートランド編」(E-1)〕をご覧あれ。

 そんなこんなでちょっとした新しい試みをしながら臨んだ本番の詳しいことは 合唱道楽 歌い人 さんのブログに書かれているので、ぜひ覗いてみて欲しい。ふだんは小さな合唱団で歌っているので60人を超える男声合唱の大迫力はまさに感動ものだった。200812月の男声合唱プロジェクトYARO会ジョイントコンサート以来の大合唱団である。




 
とくに今回のVolgaは草野心平の骨太な詩を受け、壮大なロシアの平原を彷彿とさせる重厚な曲である。
 かなり頻繁に細かく拍子が変わるが、詩に合わせて作曲されているので歌っていて違和感はないし、無理なく歌える。いまだによく理解できないでいるのが、呪文のように繰り返される aar in zen(アール・イン・ゼン) という摩訶不思議な言葉である。どなたかご存知の方がおられたらお教え願えないだろうか。


  Volga

タシケント・モスクワ間の機上にて  草野心平       


    aar in zen aar in zen aar in zen aar in zen aar in zen

    Volga

    鈍く光る。銀の。
    Volga
    うねうねの帯。

    aar in zen aar in zen

         (かつ)ては流氷(ザエ)に血がまじり。
         屍体が流れ。
         馬の首。
         えぐられたもの。
         が流れ。

    aar in zen aar in zen

    悠々。
    ただ鈍く光って。
    今日もまたそのコマギレであることの歴史は流れ。
    流れ去り。

    aar in zen aar in zen

         Volgaの底に。
         沈んだもの。
         もろもろのもの。
         流れ去り消え去った。
         もろもろのもの。

    aar in zen aar in zen

    歴史はときに逆流し
    (生々しくよみがえるもの。)
    
    Volga
    三重写しの。
    しかし悠々の母なる動脈。

    aar in zen aar in zen aar in zen
    aar in zen aar in zen aar in zen



出番がトリということもあって、合唱祭を締め括るのにこれ以上ないという演奏になったのではないかと秘かに自負しているといっても、私の果たした役割は知れたものだったが。でも、やはり気になるのが聴衆や講師の反応。今回の講師は前島あや子さん(器楽)と大渕優さん(声楽)のお二人。

<講評1
 コンサートの最後に豊かな骨太なハーモニーがこの素晴らしいホールにたっぷりと響き渡りました。ロシアの合唱団を思わせる 繊細、かつ、重厚な豊かな響き。今日の演奏は、作者とその表現者の思いは伝わったと思います。

<講評2
 人数が増えましたね。これだけの人数から生まれる豊かな音量は圧巻です!! 量感は合唱の最も大きな魅力のひとつです。スケール大きいです。充分! 満足しました。ボリューム満点の音のごちそうを頂いた気分です。ありがとうございました。



 さて、気持ちよく歌えたところで、お目当ての打上げ会場へ移動である。どの団員も足取り軽く、隣りの所沢駅近くの 〔アドリブ〕 という貸し切りレストランへ向かった。
 このレストランはステージにグランドピアノも備え付けられていた。乾杯のあとは、お決まりのコース。エール交歓よろしく校歌が飛び出したり、オペラ トゥーランドット の「誰も寝てはならぬ」が披露されるあいまをぬって男声合唱の定番が次々と歌われた。

       

               


                          


翌日の仕事のことを考えると夜っぴて飲んでいるわけにもいかず、後ろ髪を引かれる思いで二次会を振り切って帰宅の途についた。






 忘れてはいけないことが一つあった。それは、今回の催しに限らず、「○○を歌う会」の舞台裏で献身的に盛り上げ役、仕掛け人を担っている齋藤則昭さんと小山充子さんの存在である。練習が終わった翌日には、そのときの注意事項や確認内容が(仕事そっちのけで)ウェブサイトにアップされていた。これは練習を休んだ団員にとってもありがたいし、練習をスムーズに進めるための強力な仕掛けにもなっている。このお二人の影の存在なくして、「○○を歌う会」はないと言っても過言ではなかろう。
 また、60人以上の男声陣を集めるのは並大抵のことではないが、今回の担当幹事を務めた男声合唱団コール・グランツの野口享治さんは、出身の法政大学・男声合唱団アリオンコール関係者を大挙して連れてきてくれたし、その他の人たちもVolgaを歌ってみようとたくさんの仲間を誘ってくれたことが今回の成功を導いたと思う。
 また新しい合唱仲間が増えた。男声合唱に乾杯!!



2010年10月23日



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