次の文を読み、以下の問いに答えなさい。

サクラの枝を用いて植物の水分調節に関する
実験を行った。
水を満たした三角フラスコにサクラの枝と
ガラス管を通したゴムせんをする。
サクラの枝およびガラス管とゴムせんとの隙間には
ワセリンを塗り、図1のようにする。
そして、一定時間ごとにガラス管内の水面の
移動量をものさしで測定する。
この装置を用いて2つの実験(A・B)を行った。

 実験Aは、2分間隔で14分間測定した。

 実験Bは、2分間隔で26分間測定した。
  14分間は葉全体に透明なポリ袋をかぶせて完全に密閉し、その後はポリ袋をはずし、
  12分間測定した。

これらの実験Aと実験Bでは、ある環境条件(X)が異なった。
結果をグラフで表すと図2のようになった。
実験A、実験Bでのそれぞれの水面の移動量は実線(A、B)で示し、
環境条件(X)の値は破線(A’、B’)で示している。
また、水面の移動量は左の軸で、環境条件(X)は右の軸で表している。
なお、室温、ポリ袋の中の温度ともに21℃であり、
ポリ袋による照度への影響は考えないものとする。

(1)ある環境条件(X)とは何か。
(2)水面の移動量は、この植物のどのような量の変化を表しているか。
(3)環境条件(X)と水面の移動量との関係について実験結果からわかることを
  30字以内で述べよ。
(4)実験Aについて、6分後から下の@〜Bのようなことを行った。
  そのとき得られるグラフはそれぞれどのようになると考えられるか。
  図3のイ〜ニより選び記号で答えよ。
   @扇風機で弱い風をあてる。
   A光をさえぎる。
   B葉をとって茎だけにする。
(5)下の文中の@〜Eの(  )の中に適する語句を選び、aまたはbの記号で答えなさい。
 晴天の日中、光合成が低下する現象(「昼寝現象」という)がおこることがある。
 気温の上昇と環境条件(X)の@(a:上昇、b:下降)により蒸散量が吸水量より
 A(a:多く、b:少なく)なり、葉に含まれている水分量がB(a:増加、b:減少)するため
 気孔がC(a:閉じる、b:開く)。このことより蒸散作用がD(a:促進、b:抑制)され、
 二酸化炭素の供給もE(a:増加、b:減少)するため、光合成の活動が低下する。

ご質問: お〜たさん(2003/1/21)

(1)

葉は蒸散を行うことによって水を吸い上げることができます。関連ページ

Aはポリ袋なし、Bはポリ袋をかぶせた、という違いがあります。
葉の気孔から水が水蒸気となって空気中に出ていくのは、AもBも同じです。
ポリ袋なしのAでは蒸散した水蒸気は空気中に逃げていきますが、ポリ袋でつつまれたBでは中の水蒸気がとどまり、湿度が高くなります。
関連ページ 湿度と蒸発の関係

よって、AとBで異なる環境条件というのは湿度ですね。

(2)

蒸散が起きれば植物は水を補充しようと吸い上げます。
この場合、サクラはフラスコの水を吸い上げますが、そのぶん、水面の位置が動きますね。

蒸散がさかんであればあるほど、水面の移動量が多くなります。

よって、水面の移動量は、その植物の蒸散量を示すものになりますね。

(3)

実験結果のグラフ(図2)からわかることを考えていきましょう。

順番にラジオボタンをクリックしてみてください。
まず、Aの実験結果に注目です。(下の図)
 湿度(環境条件X)はほぼ一定で、水面の移動量は
 時間とともに直線的にふえています。
 湿度が一定で水面の移動量は時間に比例している
 ことがわかります。

次にBの実験結果に注目しましょう。(下の図)
 ポリ袋をかぶせている間は湿度が高く、このときの
 水面の移動量は少ないですね。
 しかし、14分後ポリ袋をとってAの条件と同じにすると、
 湿度は低めでほぼ一定となると同時に、水面の移動量
 は、Aのように時間とともに直線的にふえています。
 湿度が高いときは水面の移動量は少なく
 湿度が一定のときは水面の移動量は時間に比例し
 ている
ことがわかります。

30字以内という制限のときは25〜30字をめざして文を
 つくりましょう。Bの実験結果すべてを書いていては超え
 てしまうので、A・Bに共通する特徴をさがします。

共通する結果は「水面の移動量はXの値が一定の場合はほぼ時間に比例する。」ということですね。

(4)

Aの実験で、6分後から条件を変えていきます。

@扇風機で弱い風をあてる
 風をあてると植物が出した水蒸気がすぐに吹き飛ばされます。
 よって、湿度が下がり、さらに蒸散量がふえると思わるので、
 のグラフです。

A光をさえぎる
 植物は光があると光合成をします。光合成は水も原料にしているの
 で、光合成をしないと水の消費量が減ります。 関連ページ 光合成
 よって、吸水する量が前より減ると思われるので、のグラフです。

B葉をとって茎だけにする
 蒸散は気孔で行われます。気孔は葉の裏側に多いのですが、茎に
 も少々あります。よって、まったく蒸散を行わなくなるのではないで
 すが、かなり蒸散量が少なくなると思われるので、のグラフです。

なお、「ニ」のグラフは水の移動量が
もとにもどっていく状態を示しています。
水が出ていくのは気孔だけなので、
枝の下から水がもどされるということはありえません。

(5)

昼寝現象という現象を知らなくても、推測によって解く問題です。

晴天の日中は気温が上がると湿度(気象条件X)は下降(@-b)します。 関連ページ
湿度が低すぎると蒸散がはげしく行われて、吸水の能力が追いつかなくなることも考えられますね。
すると、蒸散量が吸水量より多く(A-a)なってしまいます。
出ていく水分が多く、入ってくる水分が少ないと、葉の水分量が減少(B-b)しますね。
気孔のまわりの孔辺細胞は、ふくんでいる水分量が少ないときは蒸散をひかえようとして
閉じて(C-a)
しまいます。
気孔が閉じると水蒸気・酸素・二酸化炭素の気体の出入りがなくなるので、
蒸散作用は抑制(D-b)されます。
光合成の原料である二酸化炭素も気孔から入ってこなくなるので、供給は減少(E-b)しますね。
よって、光合成の活動が低下してしまいます。

答え

(1)湿度
(2)蒸散量
(3)水面の移動量はXの値が一定の場合はほぼ時間に比例する。
(4)@-イ A-ハ B-ハ
(5)@-b A-a B-b C-a D-b E-b

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