M-58




ユニークなリレーコンサート [第3回関東合唱祭]


加 藤 良 一

2005年4月6日




 去る3月20日(春分の日)、さいたま文化センター大ホールにおいて、今年で3回目を迎えた関東合唱祭が開かれた。関東合唱祭は、全日本合唱連盟関東支部が主催する合唱祭である。“関東”合唱祭とはいっても、合唱の区分けは1都6県の関東地方とは一致しない。関東支部は、新潟、山梨、栃木、群馬、茨城、千葉、埼玉、神奈川、静岡の9県、関東〜甲信越〜東海にまたがっているが、東京が入っていない。不思議ではあるが、とにかくこうなっている。偶然かどうかわからないが、この9県はどこかの県がかならず隣りあっているので、すべてが地続きのご縁にあることはたしかだ。この件については、2004年夏の関東おとうさんコーラス大会を紹介した「渋滞は忘れたころにやってくる」(M-48)でも書いたので参照してみてほしい。

 合唱祭は3部に分かれていた。第1部は20名以内のア・カペラ合唱、第2部は21名以上の合唱でピアノ伴奏可、第3部がベートーヴェンの『第九交響曲』から4楽章のみの合同演奏である。第1部と第2部にそれぞれ各県から大小の1団体つが出演した。さすがに各県連が送り出してきただけに、どれもそれなりにレベルの高い演奏を聴かせてくれたが、なんといっても今回の白眉(はくび)は、2004年11月に行われた57回全日本合唱コンクール全国大会で金賞を獲得した鎌倉女子大学合唱団であった。

 また、第2部は一風変ったリレーコンサート形式であった。リレーコンサートとは、自分の演奏が終わったらそのままステージ上に残り、そこへつぎの団を迎え入れて合同で1曲演奏してからバトンタッチして退場するというもの。つまり自分たちの前後の団とそれぞれ合同曲を1曲 ずつ歌うから、各団とも全部で3曲歌う。「歌と心の交流」と銘打っている。もちろんお互いに見ず知らずの団同士である。合同での練習は、開演前のほんのわずかな時間だけだから、じゅうぶんな仕上がり状態は期待できないけれど、はじめての合唱団と一緒に歌うという興味やスリル感があってなかなか新鮮なものだった。
 参考までにどんな曲がリレーコンサートとして歌われたかすこし紹介しよう。コール沙羅・ぐみはら〜女声合唱団コール・ベル:「落葉松」(女声)、都留文科大学合唱団〜前橋中央女声合唱団:「愛する歌より ひばり」(混声)、真岡市民合唱団〜土浦市立都和中学校混声合唱団:「大地讃頌」(混声)、横浜稲門グリークラブ〜埼玉第九合唱団:「神のみわざがこの人に」(混声)などが歌われた。

 第3部の合同演奏、ベートーヴェン『第九交響曲』から「4楽章」のみの演奏は、宮寺勇(関東支部副支部長)指揮、ソプラノ・高橋美穂、アルト・小川明子、テナー・荻野久一(関東支部長)、バリトン・玉川昌幸(静岡県合唱連盟理事長)、伴奏は埼玉中央フィルハーモニーオーケストラが受け持った。


 合唱のメインは埼玉第九合唱団だが、誰でも歌える人は自由参加、練習なし、譜持ちOKということで、所狭しとオンステした。そして、合唱団が“Freude shoener Goetter funken, Tochter aus Elysium,”とメロディをいっせいに歌いだす箇所、いわゆる練習番号<M>といわれる部分は、会場全体も一緒に大合唱するという趣向で、雰囲気を盛り上げた。

 演奏以外にも、出場団体がおみやげを持ちより抽選でお互いに交換し合うおみやげ交換会もけっこう会場が盛り上がった。軽くて適当に大きくてたくさんの人に行き渡るようなもの、クッキーのようなお菓子が多かったが、それぞれ郷土色があり面白いものだった。ちなみに埼玉第九合唱団は埼玉にちなんで草加せんべいを提供した。


 この合唱祭は、まだ始まったばかりではあるが、その存在を知らない人がけっこう多いのではないだろうか。くわしいことが書かれたホームページ(HP)がどこにもない。これだけのイベントが、いつどこでどんな内容で開かれるのか紹介されていないのである。じつにもったいない話である。関東支部に広報にあたるツール、つまりHPなどがないことが原因なのだろうか。関東支部加盟の各県連は、それぞれ独自のHPを運営しているけれど、関東支部としてのそれがないから正式に情報を発信することができず、結果的に関係者だけしか知らないイベントとなっている。
 望ましいのは関東支部が自前のHPなどを持つことだが、それがむずかしいなら、次善の策としてつぎのようなことも可能ではないだろうか。それは、開催県が自分のHPに詳細を案内し、結果もまとめて掲載するのである。他の県では、担当県のHPを参照してほしいと書いて紹介しておけばそれなりに情報が流れると思うがどうだろう。ただし、このやり方の問題点は、情報が分散して、一貫したものにならない心配があることだが、それでも何もないよりは格段によいのではないか。

 






       
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