前立腺癌の告知をうけ、インタ−ネットによるホ−ムペ−ジ検索、成人病センタ−や大学病院の公開講座、一般書籍、テレビなど
あらゆる情報源から前立腺癌に関する情報を集めました。ホ−ムペ−ジの中には癌患者自身の体験記もあり、最もショックを受けたのは
ホ−ムペ−ジの筆者が、突然急に前立腺癌で亡くなったことでした。
病院の先生のお話は勿論のことですが、これらの情報は治療法決断の源となりました。患者である私が治療法について解説するつもり
は毛頭ありません。治療法の参考になったことがらを簡単にまとめました。
成人病公開講座 (平成14年6月17日)
「泌尿器がん」という演題での大阪府立成人病センタ−の公開講座で、ちょうどPSAが 38 と高値になり癌の可能性が高く、どうすべきか
悩んでいる時であり大変参考になりました。腎臓がん、膀胱がん、そして「前立腺がん-早く見つけるために」 「前立腺がん-自分にあった
治療法は」というテ−マでした。
針生検には約 30% の見落としがあるそうで、2 回目の針生検で 12 ケ所も採ることがあるそうです。
グリ-ソン・スコアの話も出ましたが詳しい説明はありませんでした。しかし最近 NHK テレビで詳しく放映されました。
グリ−ソン・スコア (癌組織の悪性度を表す数字)、病期、PSA 値より組織限局癌の確率、被膜外浸潤の確率、などを推定するもので、そのノモグラムから推測すると、
私の場合はPSAが高いため限局癌である確率は 62%、被膜外浸潤の確率は 33% ということになります。ということは病期が T1c ( ABC区分ではB )で癌は小さくても被膜外に浸潤している可能性は結構高いということです。
アメリカにおける 4,000 を越す症例による統計的数字ですから、信頼性は高いと思われます。
CT、RI (骨シンチ)、MRI で問題がなくても細胞学的には浸潤している可能性がある、ということです。
素人考えですが全摘しても再発があるのはこのへんの理由からでしょうか。
そしてホルモン療法 (内分泌療法) は永続性に欠け、5 年で 80% が効かなくなり更年期障害などの副作用があり、安易にこれに頼ってはいけない、ということを知りました。
10 年ほど前に発見される癌はほとんどが進行癌であり治療法も内分泌療法が定番でしたが、PSAという血液検査で A、B ステ−ジの早期癌が多くなり、無治療から手術、放射線まで多岐にわたり、
年齢、PSA 値、癌の悪性度などを総合的に判断し、患者に合った治療法を患者と医者が一緒になって考えなければならない。ところがこれがまた難しい、というのがこの講座の結論でした。
この講座の講師であった成人病センタ−の先生に一度お話が聞きたくて成人病センタ−で診察を受けました。直腸診と超音波検査をしていただきましたが癌は見つからないということでした。そして全摘手術はなかなか難しい、というお話でした。
市民公開講座 (平成14年7月20日)
日本アンドロロジ−学会の第21回学術大会で大学の先生による学術的なお話でしたが、我々素人にも良く判る内容でした。
年齢、病期 (ステ−ジ)、細胞の分化度などによる治療法の選択肢が説明されましたが、私のような年齢 (65〜69歳) では手術による全摘が主流のようでした。
放射線療法も IMRT という直腸に対する影響を軽減した多方向から照射することにより線量の分布をコントロ−ルする方法、更に日本では未だ一般的ではありませんが前立腺組織自体に中空の針を刺して、
その中に放射線を出す粒を入れ、局所でのみ高い線量を得ようとする高線量率組織内照射
(高線量率小線源治療・マイクロセレクトロン療法)
が今後期待される治療法である、ということでした。
インタ−ネット・ホ−ムペ−ジ
前立腺癌の検索でこれほどのものが出てくるとは驚きでした。大学や学会のホ−ムペ−ジは専門家向けの論文から全摘手術の鮮明な写真、
癌患者自身の体験談まであり、最新の治療技術を知ることが出来ました。小線源治療やまだ日本では認められていない低線量率組織内照射
(放射性シ−ドを永久刺入・これは昨年から日本でも許可されたそうです) なども紹介されており遺伝子治療も最近始まったようです。
そして海外のホ−ムペ−ジではこれらの他に凍結療法まで公開されています。
更に前立腺癌治療の体験者のホ−ムペ−ジは大変参考になりました。作者自身が亡くなる、というショックなものまでありましたが、いかに多くの
方々が頑張っておられるか勇気付けられました。全摘手術が圧倒的に多い中で、小線源治療をうけられた方のものもありましたが、病院によって治療方法が少しづつ違うようで、外照射併用のものもありました。
以上のように医療技術の進歩とあいまって前立腺癌の治療法は多岐にわたり選択も難しくなっています。このような現況の中で
私のケ−スが参考になればとご紹介させていただくことにしました。
治療法の決断
最終的に小線源治療に決断しましたが、年齢、ステ−ジ、組織分化度、QOL (Quality of Life) などを総合的に判断し決断しました。
まだ 60 代後半 (今年70になりましたが) であり合併症もなく、体力もあり普通ならば全摘手術というところかも知れませんが、最も決断を鈍らせた
のは全摘手術でも再発がある、という事実でした。そして全摘手術は難しい、場合によっては輸血も必要なことがある、
ということでした。
自己血不足ということもあり得るわけであり危険な輸血は絶対したくないというのが本音でした。更に最近のテレビやラジオ相談で、全摘手術後の尿失禁の悩みの相談が多いのも参考になりました。
医学書によっても、最近は全摘手術は減っており、医療技術の進歩により放射線療法も全摘手術に匹敵する効果があり、患者の QOL を重視した前立腺を温存する療法が主流になっています。
小線源治療は日本では幾つかの大学病院で十数年前より導入されており好成績をあげています。
公開講座やインタ−ネットを中心とした資料を調べた結果、放射線療法の内照射が一番自分に合った方法だと内心決めていましたので 1 週間で小線源治療を決断しました。そして大阪大学医学部付属病院でお世話になることになりました。
小線源治療を受けて退院後、森前総理が腹腔鏡下前立腺全摘除術をされたこと、更に年の明けた1月16日、天皇陛下が全摘手術を受けられたことを新聞報道で知りました。「比較的タチの良い高分化型で転移はない。
全摘出により根治の可能性が高い」ということで全摘手術を選ばれたとのことですが、それ以上の詳しい理由の説明はありませんでした。夫々最も適切な方法を選択されたものと思いますが、何故という疑問が残ったことは否めませんでした。
前立腺がん体験記のリンク集です。ご参考に。「前立腺がん体験記一覧表」
1. 全摘手術と同様、根治療法である |
2. 全摘手術に比べ尿失禁、性機能障害の確率は低い |
3. 将来の再発の可能性は全摘手術でも放射線療法でも同じである |
4. 全摘手術は高い医療技術が必要であり、手術で輸血の可能性もある |
5. 浸潤があっても、その部分への効果が期待出来る |
6. 全摘手術より入院期間は短い |
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