モザイクの維持(その1)
ここでは、モザイクの維持、具体的にはモザイクの色柄の改良や建て直しの必要性、その方法など、実際のブリーディング法について書きます。
私が現在ブリーディングしているモザイクは、10数年前あるショップで1万円で購入したモザイクリボンに始まっています。当時のグッピーの値段は今よりも高めでしたので、リボンで1万円は格安という感じでした。今、私が持っているリボンの系統ももちろんこのときのものです。
人間にとって10年というのは長いようで短いものです。しかし、世代交代の早いグッピーにとっての10年というのは、人間に置き換えるとどれほどの年数になるか考えてみたことはあるでしょうか。グッピーが生まれてからおとなになって、仔を産むまでを5ヶ月としましょう。一方、人間の場合を、昔の年齢を考えると少し早めのほうが良いので25年とすると、グッピーの1ヶ月は人間の5年にあたります。ということはグッピーの10年は人間で言うと600年にあたり、日本では室町時代、足利義満が活躍していた頃から現在までに相当します。この間にブリーダーがいろいろな細工を施すわけですから、グッピーも変わってゆくわけですね。ただし、良い方に変わるか悪くなるかはブリーダーの腕次第です。
私のモザイクも2代目の時には気に入った雄はたったの1匹しか採れませんでした。しかし、代を重ねてゆくうちになかなか良いものが多く採れるようになりました。そして、大きな転機になったのがモザイクタキシードの導入でした。この血を入れたことにより、それまで弱点だった貧弱な背鰭が改良され、コンテストでも勝てるようになりました。このように、モザイクを系統維持するために、モザイクタキシードを定期的にかけ合せるというのも一つの方法で、とても効果があります。モザイクの雄にモザイクタキシードの雌をかけ合せます。最初の雌がタキシードホモの場合、F1はすべてモザイクタキシードになりますが、F1の雌にモザイクの雄をかけ合せればその仔は雄雌ともにノーマル、タキシード半々で採れます。こうして仔を採ってゆくと両方の品種を楽しめます。このほか、まったく別系統のモザイクを数年に一度、導入するというのが一番簡単な方法です。それまで維持してきたものと一時的には色柄など特徴が変わってしまうことになりますが、自分の魚をよくわかっているブリーダーならすぐに元に戻せます。このように、同系品種の血を外部から採り入れることが効果的で、最も簡単な維持方法です。このほかに戻し交配など、同系交配による方法がありますが、この方法は、グッピーに限らず、他の魚や動植物でも一般的に使われているのでここでは省きます。では、私は自分のモザイクをどのようにブリーディングしているか、具体的に説明します。
私は自分のモザイクの尾鰭の特徴は赤よりも明るめのオレンジ色に近い色彩と、濃色部分の柄にあると思っています。特に色彩についてはコンテスト会場や写真でも同じようなものはあまり見かけないので、私のものはすぐにそれとわかります。この色彩は単に私の好みによるもので、その評価とは別です。この色合いを作るための雌の選び方は「モザイクの雌の選び方」に書いていますので参照してください。柄についてもやはり雌で判断しますが、同時に同じ胎の雄の群れを良く見ます。ここでなにを判断するのかというと、全体的な雄の濃色部分の柄の具合です。細かく散らばっているか、大きく繋がっているか、白い縁取りが入っているかなど1匹2匹ではなく、ストックしてある同胎の雄全体の印象を確かめます。このときに雄の尾柄が細かすぎたり、あるいは濃色部分が寄り集まって全体に黒っぽく見えるようなときにはその胎の雌は特別な理由がないかぎりは使いません。ここで雄全体を見て良しと判断したときにはじめて雌を選びます。やはり大事なことは柄が尾の上から下まできれいに入っていることです。モザイクを長く維持し続けるにはこれが一番重要なポイントだと考えます。