モザイクの雌の選び方
鑑賞価値の高いグッピーをブリーディングするうえで、もっとも重要なことは、良い雌を選ぶことです。このことは、全ての品種にあてはまり、同一品種を維持するためだけでなく、品種改良をするうえでもブリーディングテクニックとして、もっとも注意を要するところです。質より量とばかりに不要な仔までたくさんとり、余分な殺生をするばかりか、限られた数の飼育水槽を無駄に使ってしまうのは、自分の楽しみを減らしてしまうように思われます。計画的なブリーディングと、質の高いブリーディングテクニックによって、楽しみを増やしてゆけるよう心がけたいものです。
モザイクの雌を選ぶには、まず、自分の目的とする魚のイメージを思い浮かべ、それに近い雄を見つけるか、それがかなわない場合は、そのイメージのなかの要素を持った雄を見つけることからはじめます。そのためには、数多くの魚を見て歩くことが、必要ですが、現実にはなかなか思うような魚は見つからないのが普通でしょう。そこで、今回は特に良くもなく、悪くもないという普通のレベルのモザイクが手にはいったとしましょう。
まず、F1をとります。若い親なら、2番目か3番目の子の中から次の親を選び、4ヶ月位に育ってからペアリングすると良いでしょう。ただし、このときすでに、親よりも、著しくレベルが低下していたら、この系統は早いうちに処分することが、得策かもしれません。
モザイクは、同じ腹の子でも、かなりの個体差があり、数多くの子を採れば、雄の中に、自分の好みに近いものも見つけられることがよくあります。この段階では質より量もやむを得ないでしょう。好みの雄が数匹見つかったとして、これからが、いちばん大事なところです。雄にかなりの個体差があるということは、実は雌にもそれがある、ということです。しかし、雌には雄にあるような、顕著な色柄の差はないため、ごく微妙な違いの中から雄のタイプにあったものを選ばなくてはならないわけです。雌をよく観察し、目を慣らすことが必要です。では、具体的に雄の特徴にあった、雌の選び方について考えてみましょう。
雄のタイプをいくつかに分けて、それぞれに合う雌を探してみます。透明感のある、濃い赤の雄には、やはり、透明な感じのブルーの尾を持った雌を選びます。雄の尾の透明感は雌のそれの濁り具合、つまりは、さきに述べた生地によって決まります。このタイプのモザイクはかなりの確率で同じレベルの子が採れますが、赤と黒の単調な色彩になってしまい、鑑賞価値は、高いとはいえないようです。
オレンジ、朱色など、厚みのある、明るい感じの尾にしたい場合は尾の生地に黄色やクリーム色など、濁りのある雌を選びます。黒や濃紺のはっきりした柄が入っているものは、その仔の雄にも受け継がれますが、この柄がぼやけた感じになっていても、モザイクの場合、必ずしも全ての雄が同じような柄になるとは限らず、中には、柄のはっきりした、とてもきれいな雄が混じって生まれることがよくあります。また、このような、ぼやけた感じの尾柄をもつ雌の場合、雄の系統の流れの中で、黄色や黄緑などをまじえた、多色の尾柄の性質を遺伝的に持つものも多いようです。ただ、このタイプの雌の場合、ブリーダーが長期間、同じ系統で維持していて、次の仔を予測できる場合は別として、今回のように、より良いモザイクを作ってゆくという目的においては、選別するうえでの決め手に欠けるものとして、排除してゆくほうが無難だと思います。
色彩的にはここまでに書いたように分けられますが、あとは、モザイク柄の決め手となる、濃色部分をどう選ぶかです。これも雌の尾にはいる柄で見分けられるので、好みにあったものを選ぶことができます。ただし、前に写真を参考にして述べたように、尾全体が濃色の柄で埋まってしまっているようなものや、尾の下部が放射線状のすじになっているものは避けましょう。
ここまでは、モザイクについて書きましたが、モザイクタキシードの雌選びについても基本的には同じです。ただ、タキシードの場合、モザイクよりも、全体の色がかなり暗くなりますので、その点を考慮に入れることが必要です。モザイクのブルー系については後に書いてゆきます。次の項では柄にメリハリをつけるための雌選びについて書きます。