モザイクの雌の特徴

   グッピーの雌は雄の華やかさにくらべ、色柄においてはとても地味です。しかし、見ようによっては、大変美しい雌もいて、モザイクの雌もその中に入るのではないでしょうか。色は透明からクリーム色までの生地に、淡いグリーンあるいはブルーがかかり、柄は、雄のモザイク柄をそのまま写したようなものから、さまざまな大きさのスポット柄までいろいろです。卵形に、大きくひろがったそれは、なかなか美しいものです。しかし、その美しさばかりに気を取られていてはよくありません。モザイク、モザイクタキシードあるいはそのブルー系などの改良、維持が難しいと言われるのは、雌選びが非常に重要だからです。
  雌選びに入る前に、ひとつ大事なことを頭に入れておき、常に忘れないようにしておく事が大切です。それは、モザイクの雄の尾の色柄は、隔世遺伝を繰り返している、ということです。雄の尾に現れる色柄はX染色体上にある、モザイク遺伝子によるものなので、その子供の雄には受け継がれず、すべてが雌にわたってしまう、ということです。ですから、自分で選んだ雄がいたとしても、その尾柄が反映されるのは、F2から、ということになります。さらに忘れてならないことは、モザイクの雌は、通常二つのX染色体それぞれに、モザイク遺伝子を持っていて、一つは母親から受け継いだものなので、父親である雄からもらうのは、半分だけ、ということになります。ごくあたりまえのことではありますが、このことを忘れてしまって、F1のできがよくないのでやめてしまうなどというのは、もったいない話です。 
 (注:これは、私のブリーディング方法を基本とした考え方で遺伝的には正確ではありません。実際に雄はY染色体にもモザイク遺伝子を持っていますので、次代の雄にも少なからず影響を与えます。しかし、私のモザイクのブリーディング法を出来るだけ分かりやすくお伝えするには、あえて、雄の影響を体格や体形など最小限の考えにとどめ、モザイクとしての雄を無視してしまったほうがよいのではないかと考え、このような記述をしました。また、OFモザイクやモザイクコブラなど、Y染色体にモザイク遺伝子を持たず、X染色体上にあるモザイク遺伝子のみでモザイクの尾柄を表現するいわゆるモザイク系と呼ばれる品種にはこれはすべて当てはまります。この考えをもとに、一度良い雌を作ってしまうと、後のブリーディングや他のモザイク系のバリエーションを増やすことが非常に楽になります。)            


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モザイクの雌選びの基本

  ここでは基本的なモザイクの雌選びについて触れ、のちに、モザイクの雄が持つ、様々なタイプの色や模様はそれぞれ、どのような雌の親によって生み出されるのかということについて書いてゆきたいと思います。ボディーについては選ぶ基本は同じなので省きます。
  モザイクの雌選びの基本は、やはり、その特徴である、模様に重点を置くべきだと思います。前にも述べたように、目に見える、雌の尾柄は、確率的に、数において、50%はその子供の雄に反映されます。あとの50%はその雌がもう一つもっているモザイク遺伝子に影響を受けるので、予想と違う子が産まれる場合もよくあります。したがって、求めるものは、とりあえず予想できる50%の中から、という認識のもとに、雌を選びましょう。
  上にある写真(1)はモザイクタキシード、(2)はモザイクです。どちらも上から下までほぼ均一に模様が入っています。モザイクタキシードの方は、つながりのある黒い模様が適度に入り、中央が黄色みを帯びて、尾の厚みも十分にあり、とても良い雌と思われます。次のモザイクは、黒い部分が若干細く弱いことと、全体が白すぎるので、子供の雄は、ピンクがかった明るい色になると予想され、好みが分かれるでしょう。(3)もモザイクの雌ですが、この尾は黒い模様が多く、さらに、模様同士がほとんどつながっているため、暗い感じがします。特に良くない点は、下部の放射状の筋です。この模様は、雄に、このまま遺伝し、暗くにじんでぼやけたような柄を作るので、このての雌はさけるべきですが、モザイクの場合、このような、尾の下部に問題のある雌が多いようです。                                         
 もうひとつ、基本的なことなのですが、あまり知られていないことについて触れます。モザイクをある程度の期間、ブリーディングしたことがある人で、雄の色柄がはっきりしてくる、4ヶ月位のサイズになると、尾の先端が箒状にばらけたり、または大きく欠けたりして、それ以上大きくなっても治らない、というような経験をした人はかなり多いと思います。この原因の多くはモザイクの持つ柄の特性にあると思われます。それは、モザイクの黒い模様の部分が、尾の最先端にはみだしてしまったときに起きる現象で、柔軟性のある、尾の先端部分がなくなり、本来は内側にあるはずのもろい部分が外に出てしまうためにおこると考えられます。これは、雌をよく選ぶことによってほとんど防ぐことができます。このような状態が雄に現れたとき、その周辺の雌をよく見ると、黒い模様の部分が尾の先端部にはみだしているものが多くいるはずです。この雌を使うと、次の代の雄はかなりの確率で、模様がはっきりしてくるころに、尾が切れてしまいます。よく雌を観察して、このような雌を選ばないようにすることが必要です。  

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