モザイクの雌の選び方 (その2) メリハリ
 
 前項では、モザイクの雌の選び方の基本的なことを書きましたが、ここからは、ブリーディングテクニックとしては、かなり高度なものになってきます。しかし、前項までで、モザイクの雌を見分ける目もだいぶ慣れてきたものと思いますので、さらに先に進みましょう。
 品種を維持し、さらに、レベルアップしてゆくには何が大切か。それは雄に現れる顕著な特徴を、僅かな個体差でしか表さない多くの雌たちの中から読み取ることです。このことは、すべての品種にあてはまります。では、この項のテーマである、モザイク柄のメリハリ、これを表す雌はどんな雌でしょう。
 まず、雄の尾柄に出る、濃色部分を取り巻く白い発色はどのようなものなのか。これについて考えてみます。これまでにも何度か述べましたが、大きな要因は、その生地にあります。しかし、この発色にはさらに大きな要因が加わります。それを私はシルバー発色と考えています。これは、プラチナモザイク、プラチナレッドテールなど、品種名の前に付く、独立したプラチナ遺伝子による発色に似ていますが、これとは区別して考えてください。
 このシルバー発色は多くの観賞魚に見られますが、グッピーの場合も個体差こそあれ、ほとんどの品種に現れています。特にここ数年、ドイツイエローなどの人気の品種にはこの発色の強いものが多くなってきています。これは、プラチナ遺伝子によって得られる、突発的な表現ではなく、選別淘汰によって得られたものです。特徴としては、プラチナ遺伝子による発色が比較的、ボディーの上半身を中心に現れ、色もプラチナゴールドとよべるようなものが多いのに対し、このシルバー発色は、口吻部、頭部から背、尾筒にかけてのホワイトゴールドの表現になり、時には胸鰭にも現れます。タキシードの場合、下半身の濃色とこの光沢とのコントラストがその魚をゴージャスに見せます。では、タキシードに対してノーマルのボディーではどうでしょうか。
 ノーマルのボディーの魚はタキシード系と比べると、もともと光沢のある明るい色彩を持っているものが多く、このシルバー発色はあまり目立ちません。しかし、たしかに、ノーマルボディーにもこの発色はあり、選別淘汰によってこれを強く表現させることが可能です。そして、この発色はさらに、雄の尾鰭にまで影響を与えています。ドイツイエローでは尾鰭にまぶしいような光沢を与え、他の品種でも、この発色があるものとないものとでは、尾鰭の色の明るさに大きな差をつけます。私はモザイク系の魚の場合、このシルバー発色が尾柄にメリハリを与える大きな要因になっていると考えています。


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   前置きが長くなりましたが、いよいよ本題に移ります。では、この要素を持った雌をどう見わけるか、それは、企業秘密です。と言いたいところですが、ここまで書いてしまった以上、ここでやめるわけにはいきません。モザイクあるいはモザイクタキシードの雌を良く見てください。背鰭のすぐうしろから、尾鰭の付け根にかけて、ほんの少しだけシルバーの発色があるものは見つかりませんか。この発色があり、尾鰭が明るく白っぽく濁っているものがベストです。写真(1)(2)は同じ魚です。私の温室では、この系統の雄には、個体差はあるものの、みなボディーにシルバー発色があり、尾鰭の濃色部分には白い縁取りがあります。写真(3)にはこの発色はなく、この系統のモザイクの雄の尾は赤と黒になります。この雌の使い道は別にあるので、後に書きます。
 ここまで書いてきたことは、すべて、私のモザイク系統の飼育経験をもとに、私が現在行っている雌の選択法です。したがって、現在の私の温室ではこの方法でブリーディングを行っていれば、ほとんど、大きな失敗はありません。しかし、これを一から始めるとなれば、すべてが一度にうまくゆく訳ではありません。自分はまず、何に重点を置くか、色彩か模様かメリハリか、テーマを決め、世代を重ねるごとに少しづつクリアしてゆかなければなりません。これ、と思った雌を使っても結果が芳しくないことはよくあります。良い結果が出る確率は少しづつ上がってゆくものです。はじめ、つまり、普通のモザイクを購入する事から、ある程度のレベルにまでそれを仕上げるには、早くても三年ほどはかかると思いますが、この「モザイクのはなし」を読んでくれているみなさんにはそれほど時間はかからないでしょう。是非、挑戦してください。また、無理に低いレベルの魚からはじめる必要はありません。レベルに応じた魚を購入したい方は<DELTA SPACE>にご相談ください。
 次の項では、グッピーコンテストについて少し書いてみたいと思います。 その次にモザイクのいろいろなバリエーションについて書きます。
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