ここまで、モザイクについて書いてきましたが、「モザイクのはなし」は一休みして、少しコンテストについて書いてみたいと思います。
 その前に、ここまで書いてきたことを振り返り、若干の訂正を加えたいと思います。
 まず、(モザイクの雌の特徴)の項の中で、雄の尾柄は次代の雄には反映されない、と書きましたが、これは正確ではありません。雌の重要性を強調するあまりにこのように書いて しまったのですが、実際には、ボディの色柄は雄からの遺伝を受け継ぎますし、尾鰭にも影響を与えます。これはY染色体にもモザイク遺伝子が存在するためで、モザイクの建て直しの時にモザイクの雄に対してレッドテールやレッドテールタキシードの雌を使うとF1の尾鰭は赤地に黒のスポット模様になります。このことからもモザイクの雄が次代の雄の柄に影響を与えていることがわかります。しかし、あくまでも次代の雄の尾鰭の色柄を決定づけるのは雌で雄は補助的な役割にすぎないと考えることが、モザイクをレベルアップしてゆくことへの早道だと思います。なぜなら、雄の選別は他の品種と同じく、まず体格、体型、泳ぎなど、一般的な必要条件をクリアしたうえで、自分の好みの色柄のものを選べば良いわけで、あまり難しく考える必要はありません。つまり、単純に目に映るものを追ってゆけばよいわけで、なれないブリーダーはそれに頼りがちになります。しかし、雄に頼って雌選びを重視しないでいると、モザイクは大抵失敗するからです。(本文に注釈を加えました。)   

コンテストについて

   グッピーコンテストの歴史は以外に古く、今から30年以上前、私が4年間ほどグッピーを飼育していた頃は第一次のブームと言われ、日本各地でさかんに開催されていたようです。そのころの私はまだ中学、高校生でコンテストに出品するなどとは考えてもみませんでした。その後ブームは火が消えたように終わり、コンテストも一部を残してほとんどが消滅してしまいました。残ったものとしてはダイヤモンドグッピーコンテストが有名で7年ほど前にその歴史を閉じるまで年一回、第25回まで続きました。このコンテストが終わりを告げるころには、すでにグッピーショップなどが主催するコンテストが各地で開催され、第二次グッピーブームが始まっていました。また、日本グッピー協会が発足し、ブームを盛り上げる原動力となりました。その数年後までがブームのピークといえる時期で日本各地で行われるコンテストも数を増し、グッピー協会の本部大会などでは出品数が400点を超えたこともあったくらいです。
 私がコンテストに出品しようと思うきっかけとなったのは、あるグッピー専門店での、その店の常連さんとの会話でした。グッピーを再び始めてから半年ほどたったころでした。その店で私がほしい魚を物色していると、その人がそばによってきて、「コンテストに出されるのですか。」とこともなげに言いました。まだ、グッピーを始めたばかりの私は、その言葉に仰天してしまい、「とんでもない、たくさん泳がせたいだけです。」と答えました。それから会話が始まり、グッピーコンテストは特別な人だけのものではない、誰でも出品して楽しむことができるものだということを教えられました。
   それから一年ほど後、はじめて買った国産グッピー、レッドグラスからでてきたアルビノ(ルチノー)の二代目がほどほどのサイズになり、勇気を振り絞って出品、という運びになりました。結果は当然のことながら参加賞のみ、しかし、コンテストに初めて出品し、それによって得た感触はそれからの私のグッピーとの関わりにとってたいへん貴重なものでした。それは私の魚と上位入賞魚とを比較して、差はあるにしても、それほど極端なものではない、いつかはきっと勝てると実感したことでした。その後は年に2〜3回、近場の自分で魚を持って行けるコンテストにのみ出品して楽しんでいました。目標は上位入賞写真掲載。そのころはFM,AL誌ともにコンテスト会場にカメラマンを派遣し、上位10点ほどの魚を撮影して誌上掲載していました。しかしこれが私にとっての難関でした。いつも近くまではいくのですが、あと一歩というところで及びません。私のすぐ上の賞が写真掲載だったり、同じ主催者の前回のコンテストでは掲載された賞が私がもらったときには掲載されなかったりなどということがたびたびあって数年がたちました。この数年の間には、新たにグッピーを始めて一年もたたずに私が目標にしていた以上の賞をとった人、また、何度か賞をとり、すぐにやめていった人たちも何人もいます。私のグッピーが今に続いているのは、このときの経験、悔しさがバネになっているのかもしれません。
 そして、最初の目標を達成してしまうと今度はその位置をキープすること、さらには総合優勝というのが新たな目標となりました。こうして目標を持ちながらブリーディングを続けてゆくことが自分にとっての技術の向上、品種のレベルアップに繋がっていったと思います。
 はじめは、コンテストに出品、参加し他の人に自分のグッピーを見てもらうことによって自分のレベルを知り、良い意味で緊張感をもってブリーディングすること学びました。次には、品種をレベルアップする目標ができました。そして現在は、レベルを維持し、さらに良いものを求めるための刺激になっています。また、コンテストを通じて知り合った、先輩方や友人達の存在も忘れてはなりません。
 ここまでは、私にとってのグッピーコンテストと言う内容で、個人的なことばかり書いてしまいましたが、最後に現在の一般的な審査について触れてみたいと思います。コンテスト出品経験のあまりない方、これから始めようと思っている方の参考になればよいと思います。
 現在、日本国内で開催されるグッピーコンテストは東西合わせて20を超えると思われます。日本グッピー協会主催以外の多くのコンテストはグッピー専門店あるいは国産グッピーを扱う熱帯魚ショップかそれらのショップが後援するアマチュアグッピークラブが主催して行われています。いずれの場合もそれぞれの団体の基準に従って審査され、順位が決められます。審査の形態としては、総合審査で順位を決めるものと、品種別、部門別に審査をするものがあります。日本では特異な例として、日本グッピー協会で採用されている、ブリーダーメール部門というのがあります。これは、同品種、できれば同胎、同レベルの雄3尾と雌1尾という組み合わせで出品します。品種によっては非常に厳しいルールとも言えますが、一個体のみならず、その品種としての出来栄えを審査する上では合理的なルールと思われます。
 審査基準は明文化されたものもありますが、多くの審査は複数の審査員による得点の総合によるもので、出品者と審査員との信頼関係によって成り立っています。ですから、審査結果について不満を漏らす人も中にはいますが、これは慎むべきです。
 審査項目については、ある主要団体の審査表がありますので一例としてここに載せます。 

  大きさ     形状    色彩、柄  活発さ(泳ぎ) 5
 ボディ 8 10 12 総合バランス 10
 尾鰭 10 10 18 合計 100
 背鰭 6 5 6
 
 この他にも様々な審査基準がありますが、団体によって違いがあるのは各項目の点数の振り分けくらいで、他は大きな差はないようです。ただし、この他に、重要な要素として品種の作出難易度というものを考慮に入れて審査する場合があり、これを考慮する場合としない場合の総合得点が品種によっては大きく違ってくることがあります。作出難易度は、一般に系統維持、レベルアップが難しいとされる品種ほど高くなります。中には種親として質の良いものを入手することが困難なものもあります。これを考慮にいれることによって、人気品種の上位独占などという、一種の偏りを少なくしようという考え方もあるようです。ただ、ここで問題になるのは、審査員がそれぞれの品種についてどれだけ幅広い知識を持っているかです。審査する側も結果について批判されないためには、日ごろ知識を蓄えておくことが必要です。私の考える、作出難易度が高い品種をいくつかあげてみます。ブルーモザイクタキシード、アルビノ(ルチノー)ドイツイエロー、ブルーのグラス系コブラ(メタルがはいると易しくなります)、スワロー系などほかにもいろいろです。これらはハイレベルのまま長く維持することがとても難しい品種といえます。
 機会がありましたら、またコンテストについて、コンテストに出品するグッピーについてなどを含めて書いてみたいと思います。 
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