モザイクの維持(その2) 建て直し(1) 

 同一品種のグッピーを長年維持してゆくには、幾通りかの方法があります。前項でも述べた、@定期的に同品種で違う系統の血を導入する、A子孫を数系統に枝分かれさせ、ときどきそれらをクロスさせる、B@とAを繰り返しながらブリーディングする、C別品種を使って建て直しをする、などです。利用できる水槽の数や飼育目的など、それぞれのブリーダーの持つ条件によって、維持方法は変わってきますが、Cの建て直しとなると、グッピーの世代にして3〜5代、一年半ほどの期間を要します。また、その間に生まれるグッピーたちは親に使われる数匹を除いては、一代限りの雑種として処分される運命にあります。このように、建て直しには時間と手間がかかり、不要な魚を多く作ってしまうという大きなマイナス面もあります。しかし、これにはより大きな利点があります。
 一つは自分だけの系統を作れると言うことではないかと思います。例えばショップなどで有名ブリーダーの系統と書かれたグッピーを購入したとします。これをそのまま維持してゆけば、いつまでたっても誰々の系統という言葉が頭についてまわります。後から別系統の血を導入しても、今度は誰と誰の系統という具合に変わるだけで、いつになったら自分の系統と呼べるようになるのかわかりません。こんなとき、思い切って建て直しをして、自分だけの系統を作ることができれば、ブリーディングの楽しみはより大きなものになるでしょう。とまあ、これは見栄みたいなところもあり、気にしない人の方が多いかもしれませんが、実際面はどうでしょう。
 グッピーを同系統のみで維持すること、いわゆるインブリーディングを長年続けてゆくと、奇形が多くなる、体型が小型化する、繁殖率が悪くなるなどの弊害が現われてきます。品種によってはそれほど顕著に出ないものもありますが、最悪のケースでは、まったく仔が採れなくなり、系統が絶えてしまうこともあります。
 モザイクの場合、レッドテールやグラス、タキシードなどいろいろな血が過去に導入されているためか、比較的、この手の弊害には強いと思われますが、やはり同じ系統のみで長く続けてゆくことは避けた方が良いと思います。また、先にも書きましたが、この品種はブリーダーの好みを色柄に反映させることができます。このため、ともすると尾鰭の柄が細かくなりすぎる、逆に大きな柄に固まってしまう、赤黒く暗い感じになってしまうなどの見た目の偏りが出てしまうことが多くあります。こんなときにも建て直しは有効な手段といえます。
 さらにもう一つ利点があります。それは、他品種を使って行う場合、2品種、場合によっては3品種同時に建て直しができるということです。例えば、モザイクの建て直しにレッドテールタキシードを使う場合、モザイク、モザイクタキシード、レッドテールタキシードの建て直しができ、一石三鳥というところでしょうか。
 次は私の行っている建て直しの方法について書きます。

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