モザイクの維持(その3) 建て直し(2)

 私は通販のためにグッピーを作る傍ら、自分の趣味として主にモザイク系の魚をコンテストに出品しています。そのような目的でより大きく、美しいグッピーを作るため、主要品種は3〜4年に一度の割合で建て直しを行っています。モザイク系では過去に二度、ネオンタキシードを使いました。レッドテールタキシードではなく、ネオンタキシードにしたのは、ブルーモザイクタキシードを視野に入れてのことですが、この目論見は二度ともはずれました。また、タキシードを使ったのは、背鰭の大きさを維持するためと、私の場合、雌を選ぶときにモザイクタキシードの方が判断しやすいと考えているためです。この項では、私の温室で現在進行中のモザイクの雄とドイツイエロータキシードの雌を使った建て直しを中心に紹介します。
 
 前述のように、ネオンタキシードを使ったことは二度ありますがドイツイエローは初めてです。2002年9月にモザイク雄2、ドイツイエロータキシード雌2で交配を開始しました。モザイクの雄を使ったのはY染色体にモザイク遺伝子を残すためです。
 翌、10月にF1が採れました。右の写真が、生後5ヶ月の頃の個体です。遺伝的には雄はDYTMo、雌はDYTMoです。2,5ヶ月ほどの若魚はドイツイエローの仔とほとんど変わりませんが、さらに成長するにつれ、尾鰭には、モザイクの影響が強くなり、柄こそ入りませんが、かなり赤みを帯びてきます。次はこの雄と、同じ胎の雌を使って仔を採ります。このときF2は採らず、手持ちのモザイク、ドイツイエローとかけ合せます。今回は、この胎の雄とモザイクの雌、モザイクの雄とこの胎の雌、同じく、この胎の雄とドイツイエローの雌という3とおりの組み合わせにしました。
 
 2003年2月にペアリングを開始し3月にはそれぞれの仔が採れました。写真の個体は6月初旬現在、生後2,5ヶ月前後です。


@

A

B
C

 @はF1の雄とモザイクの雌をかけ合せたものです。ドイツイエローの影響か、尾鰭の下地が白く肉厚になり、全体に明るくなって華やかさが増したように思います。
 Aはモザイクの雄とF1の雌をかけ合せたものです。やはり、元の系統のモザイクタキシードよりも尾鰭の色が明るくなりました。
 BはAと同胎の雌です。まだ、尾鰭の柄がはっきりしませんが、モザイクとかけ合せるうちに良くなってゆくと思います。
 CはF1の雄とドイツイエローの雌をかけ合せたものです。次の世代が楽しみです。
 どの個体も当然ながら、まだ品種としての完成度は低いですが、次の世代に期待を抱かせてくれるに十分な若魚たちです。
 最初に親を選別してからここまでくるのにすでに約9ヶ月かかっています。そして、これらを親にして仔を採り、結果が判断できるようになるにはさらに半年近くかかり、これで1年3ヶ月を要したことになります。建て直しに要する時間としては平均的かやや早いくらいでしょう。この期間も従来の系統で同時にブリーディングしていますから、失敗を恐れることはありません。それよりも、心に描いていたような魚ができたときの喜びは、まさにグッピーブリーディングの楽しさ、喜びを感じさせてくれるものと思います。
 建て直しの方法やかけ合せる品種にはいろいろな組み合わせがあります。手持ちの品種のみで行う場合は、その品種はある程度飼い込まれているわけですから、基本的な遺伝の仕組みとその品種に対する知識があればそれほど難しいことはないと思います。ただし、使う品種の組み合わせによっては、後で苦労するものもありますので、最初に品種を決めるときは慎重に選別してください。特に最初はノーマルとタキシードをかけ合せるなど、遺伝子の動きがよくわかるものを使うと良いと思います。

 

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