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加 藤 良 一
2009年7月24日
◇日本代表最終予選突破
サッカー日本代表がアジア最終予選A組をオーストラリアに次ぐ2位で突破し、4大会連続、4度目のワールドカップ出場を決めたのは去る6月のことである。戦績は4勝1敗3分で勝点15だった。アジアではオーストラリアの強さが抜きん出ている。6勝2分、勝点20で負けなし。日本は最終戦でそのオーストラリアと当ったが、闘莉王が前半に1点もぎとったものの、後半にティム・ケーヒルに2発食らってひっくり返されてしまった。それでもとにかく2010年6月の本大会への進出が決まったのは喜ばしい限りである。ほんとか嘘か知らないが決勝リーグ進出を口走る人もいるようだけれど、オーストラリアにも勝てず、アジアでトップにもなれないようではかなり厳しいことを覚悟しなければならない。
◇南アフリカの政情─アパルトヘイトその後
さて、いよいよ南アフリカ大会が見えてきたわけだが、開催国の南アフリカ共和国に思いを馳せてみようとして、意外に大した情報や知識がないことにあらためて気付かされた。そもそも私の場合、南アフリカといえば「アパルトヘイト」による白人支配という悪い印象がいまだに残っているわけで、過去の負の遺産がどこまで払拭されたのか気になるところである。
アパルトヘイトとは、白人による黒人の人種隔離政策のことで、人道上許されないような酷い人種差別が行なわれていた。差別対象は、黒人だけでなく、インド、パキスタン、マレーシアなどのアジア系住民や、カラードとよばれる混血民たちも含まれていた。
アパルトヘイトは、1948年に法制化され、30年以上続けられたが、国際社会から激しい非難を浴び、その間オリンピック大会への参加も拒否されるなど強い批判を受けていた。しかし、国際的な経済制裁を受けて経済が行き詰まり、1994年、国連に「人類に対する犯罪」とまで言われたこの制度は完全に撤廃された。
しかし、アパルトヘイト廃止から今年でまだ15年しか経っていない。果たして、あれだけ混乱していた社会情勢、経済、政治はどう変わったのだろうか。とくにワールドカップに絞ってみれば、治安の問題がとても気になるところだ。また、会場建設でも作業員のストなどで工事の進み具合もよろしくないという報道もある。偏見があるかも知れないが、日本人のようなきめ細かな大会運営は望めそうもないだろうか。たまたま昨日(7月23日)の読売新聞に南アフリカの現状を伝える囲み記事が掲載されていたので要約を次に示そう。
南アフリカで反アパルトヘイト闘争を支えた理想が風化し始めている。 来年(2010年)6月にワールドカップという一大イベントを控えながらも、政治、経済両面での停滞から抜け出すのは容易ではない。ヨハネスブルク郊外、旧黒人居住区ソウェトにある記念碑「ソウェト蜂起」がカラースプレーで落書きされ「歴史が忘れ去られた」と嘆いている。これは若い人たちの仕業である。「世代交代により、解放闘争への敬意が薄れつつある」と警鐘を鳴らしている。 アパルトヘイト終焉後、黒人中間層が生まれたが、未だに電気も水道もない小屋暮らしの貧困層はそのまま。2007年までの11年間で経済格差は拡大、人口の1割に過ぎない白人層の総収入が、8割を占める黒人層の約4.5倍に上り、世界で10番目に貧富の差が大きい国だという。失業率は23.5%、黒人層だけをみれば27.7%と厳しい経済状況である。「アパルトヘイトさえ終われば豊かになれると、誰もが思い込んでいたが、生活は一向に変わらない。あの頃の夢は何だったのか」とソウェト暮らしを続ける男性は肩を落とした。 |
●ヨハネスブルク、プレトリア、ケープタウン及びダーバン:「十分注意してください」(継続) |
こんな危険情報を読まされたのでは、よほどのことがない限り近づきたくない国となってしまう。やはり、旅行会社では得られない情報だろう。予想に違わず南アフリカの現状は、日本では考えられないような治安の悪さだ。そんな状況で、選手や観客の安全をどのように確保するのだろうと世界中がきっと心配しているはずだ。
歴史を振り返ってみると、1986年大会では、当初コロンビアで開催予定だったが、治安と国内情勢の悪化から、メキシコに変更されたという例もある。今大会も同じような理由から南アフリカでの開催が疑問視されている。とくに2会場のあるヨハネスブルグは「世界最悪の犯罪都市」「世界の犯罪首都」とまで言われており、その他の都市についても治安面に課題ありとみなされている。FIFAは水面下で代替開催地の模索をしているようだ。
◇ワールドカップのリスク管理
最近、南アフリカの治安問題やインフラ整備について国際的な議論がなされたというレポート(「月刊監査研究」2009年7月No.423、清水武氏報告)に出会った。それは、内部監査人協会The
Institute of Internal Auditors(IIA)国際大会で、2009年5月、南アフリカ・ヨハネスブルクに約90カ国から2千人を超える参加者が集って行なわれた会議である。
全体会議の一つ「2010ワールドカップのリスク管理」がその演題である。演者は、ワールドカップ南アフリカ大会組織委員会メンバーであり、かつてマンU(マンチェスター・ユナイテッド)で活躍したゴールキーパーGary Bailey氏。
以下に報告の内容を要約して紹介する。
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内部監査に関する会議でワールドカップの運営が取り上げられるというのも面白いが、考えてみれば、内部監査や内部統制はどのような組織体にでも適用しうるものだから、当然といえば当然かも知れない。
◇サッカーの負の側面 フーリガン
南アフリカは、国民性もわれわれ日本人とは大きく違うだろうし、大会成功のレベルをどこに設定しているかにもよるが、彼らなりになんとか成功にたどり着いて欲しいものである。また、報告書で触れてはいなかったが、サッカーと治安といえばフーリガンの問題もある。1980年代に比べればずいぶん下火になったようだが、ブラックリストに基づいた封じ込めを徹底すべきである。
そして、願わくは、日本代表チームが決勝リーグに進出し、世界をアッといわせて欲しい。こちらのほうのリスクマネジメントは、おさおさ怠りないとは思うが予断は許されない。よい戦いができることを期待したい。