「ジュースマイヤー」は、ドイツ語で Franz Xaver Suessmayrと書く。(この綴りはドイツ語新正書法によるものである。)“S”は後ろに母音が続く場合は濁り、“ue”は“u”の上に“‥”が付くuウムラウトを表し、口の形をuにしてユと発音する。“ss”はβという字に似たエスツェットで子音の「ス」となるから合せて「ジュース」となる。そこで、「ジュースマイヤー」とか「ジュスマイア」のように書かれることが多い。
しょせん外国語をカタカナにするには限界があるから、どれが正しいということではなく、いずれも近似的なものに過ぎないが、書く人によっていろいろあることは認識しておくのもよいのではないか。ちなみに、海老澤敏氏や茂木一衛氏は「ジュースマイヤー」であり、作曲家の池辺晋一郎氏は「ジュスマイア」、ほかに「ジュスマイヤー」などがある。また、全音楽譜出版社の『レクイエム』に別宮貞雄氏が書いている解説には「ジェスマイヤー」版となっているが、これはかなり少数派に属する読み方であり、違和感を覚える。
ついでにいえば、別宮氏は「みいつの大王 Rex tremendae」を“みいず”と書いているが、これは誤りではないか。そもそも神聖であることを意味する「いつ」という言葉があり、漢字では「厳」ないしは「稜威」と書くが、その尊敬語が「みいつ(御稜威)」であり、威光とか威勢を表す。したがって“みいず”では意味が通らないはずだ。次回増刷のときに検討されてはどうだろう。(他にも誤字誤植が2箇所ある)