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ピアニシモの秘訣

「誉め殺し」のような、恐縮感・・・これが、私のピアニシモ!?

 


織 田 茂 樹
 

 

 

 

 松村一夫様

 昨年の東京男声合唱フェスティバルでは、フォア・ローゼズがよい演奏をしたと思います。
 今までにない、すばらしい表情で、表現していたと思います。技術的には、彼らはすばらしい3名のバリトン・トーンとテナーでカルテットを構成し、アクースティックス日本版を演奏しています。日本の代表的なバーバーショップ BBS カルテットだと思います。一方、私たちSue Sea Four>SSF は、本来は、2名のセカンドテナー、ハイバリトン、ベースの構成で、男声合唱曲を歌うとそれなりにハモるのですが、それなりです。

 バーバーショップの譜面に初めて出くわしたとき、その構成では、なんともならなかったことが思い出されます。3年前です。構成を、ベースの芋野氏がテナーへ、バリトンの渡辺氏がベースへ、トップの岩尾氏がリード、そして、セカンドの私がバリトンへ変更しましたが、イマイチの連続でした。そこへ登場したのが、『バーバーショップ・ハーモニーへの招待』です。私たちにとって、すばらしい『教本』との出会いでした。特に、序文に北村協一先生の『バーバーショップと私』を見て、読み終えた後、「なんで、協ちゃん、現役の時に、教えてくれへんかったんや!」と・・・。この本には、ハマリましたし、音量のバランスのことや、様々なバーバーショップの妙味を感じ取らせていただきました。そして、取り寄せた98年からのインターナショナルカルテットチャンピオンらの、ビデオでした。最初は、見聞きすればするほど、すぐには馴染めず、飽きてきて、どこも同じ・・・しかし、だんだんと「違い」みたいなものが解りかけてきた時、メリハリ、強弱、フレーズの終わり方の処理方法等がテクニック的には必要だな、と。ただ、フォルテッシモ fff では、あんな胸板の厚い、デカいアメリカ人には、勝てないワ!と、つくづく「進駐軍」の恐ろしさ(?)を感じました(笑)

 松村さんから、ピアニシモの演奏について、お言葉をいただき、恐縮しております。評価もいただき、たいへん嬉しく思っております。昨年のイマイチの理由を、練習不足にしておりますが、確かにそれはありますが、集中力にかけていたことと、メンバーと気持ちが合っていなかったかもしれません。

 あの時に歌ったのは、『Smilin' Through』(2000年インターナショナルカルテットチャンピオン/PLATINUM)ですが、2002年8月に、テナー芋野氏が採譜し、約3ヶ月の練習(合わせたのは、5回ぐらいでしょうか?)で、ステージに乗せました。たいへん難易度の高い曲と思いますが、譜面とビデオで練習しました。ただ、SSF 再結成した時からではありますが、やる曲のほとんどに、みんな結構、「思い入れ」を持って取り組むようになった背景がありますが、この曲にも同様に、訳詞や、この曲の背景(1932年アカデミー賞ノミネート作品であったことや、まだ見つかっていませんが、映画を探したり、永遠の微笑みのこの女性の写真はないか→これは見つかりました)を調べたりとか、歌うときに、思いっきり「感情移入」できるベースがあったことも事実です。主人公が、初老の男性であり、その「悲哀!?」を感じる事ができ、私たちの年代には、結構、「ジーン」とくるものがあります。

 

「ピアニシモの秘訣」について
 テクニック的には、松村さんのおっしゃるとおりだと思います。最近思う事は、相撲の世界でよく使われますが、「心・技・体」です。
 あの曲の最後の歌詞は、“those two eyes of blue still smilin’ thro’ at meが2回繰り返されます。前述したように、結構、思い入れを持って取り組んでいましたので、最後の部分では、「彼女の笑顔の映像」を描き、歌詞の意味を、「彼女の永遠の微笑をいつまでも・・・私に」と2階席に投げかけるような気持ちで、1回目は、ピアノでthose two eyes ofと歌い、blueの発音で「ウ」でスワイプさせながら、より小さくし(おそらく、松村さんさんがおっしゃっているのは、ココだと思います。歌いながら、鳥肌が立ったのを覚えています)、「ためて」から、smilin’ thro’の最後のメッセージをフォルテまで、一挙に引き上げ、2回目は、その「余韻」で、自然に歌い(バックには、テナーのG♭のロングトーンが5小節続きますが、最後のat meに繋いでいます。

 最後のコードは、G♭のオープンハーモニー(テナーとベースは、2オクターブの根音)です。関学グリーで教えられたことに、根音、3度、5度のピッチのことがあります。いわゆる「純正律ハーモニー」ですが、3度は、ピッチを低く、5度は高い目に、です。科学的根拠、デジタル的なことはよくその理屈は知りませんが、確かに・・・倍音が鳴ります。しかも、この曲の最後のコードは、2オクターブの中ですので、ベースG♭、バリトンD♭、リードB♭、テナーG♭で、ベースとテナーが根音でしっかりとピッチを合わせ、バリトンが5度でピッチ高め、ベースと5度の倍音を狙い、リードの3度は、「軽く」音に乗るだけで、ハモります。
 それと、ステージに上がる前のSSF内での取り決めがありました。それは、歌い終わったあとの「5秒間静止画像体勢」です。これは、PLATINUMのビデオでもそうだったのですが、at meと歌い終えた後、5秒間は、余韻に浸っており、「四分休符」が4拍分ぐらいあり、いわゆる「音のない」休符を、心の中で歌っている、そんな感じがあります。
 これを、やろうと、取り決めしていました。ですから、あの時、お客様の拍手が、たたこうとしてもタイミングが合わずに、遠慮がちに、拍手がきたのを感じました。したがって、心の中では、「やったぜ」でした。

 最後に、2年前、感じたことですが、男声合唱団「」のヴォイストレナーであり、私たちの先輩である、森氏のトレーニングを受けた時です。普段、あまり体の姿勢や、呼吸法を気にしないところがあり、ましてや、年齢とともに、より歌う姿勢が悪くなっている事に気付きました。これは、なかなか普段から、発声練習やこういったトレーニングをする時間、機会がないだけに、継続できないのですが、地道にやらなければ、ダメなんだなぁと思っているところでもあります。

 歌の世界も「心・技・体」なんでしょうね。
 『音楽は体力です』のタイトルをみて、思わず、購入したのも、この頃でした・・・。
 たかだか 歌 されど 歌・・・。
 楽しんで練習し、本チャンは、われわれも、聞いていただくお客様も、心から楽しめる、2004年もそんなステージを継続してやっていけたらいいなぁ!と思っています。

(2004年1月8日)