Alpha Correction Technique
α補正テクニック


 このページは、ナビゲーターの永遠のテーマであるα補正について解説します。また、全日本ナビの山口 励様の御協力により、山口さんの補正に対する考え方と問題をご紹介させて頂きます。
山口さんから問題の解答を頂きました。(1998.4.12)



 α補正 for 初級ナビ編

 α補正 for 中級ナビ編

 α補正 駆動方式と距離の出方

 補正の問題と課題提起

 α補正 for 上級ナビ編

 メール送信 nishida@po.aianet.or.jp

 ナビゲーションテクニックでもご紹介しました私の補正に対する考え方を再掲致します。あくまで、基本の作業ができるようになってから、やっていただきたいと思います。
アルファ補正 for 初級ナビ編

 アルファ補正とは、ODで補正率を正確にとっても、タイヤのすり減り(通常では考えられないほど磨耗します)、走り方、タイヤの空転(スリップ)などにより、距離が多く出たり少なく出たりするものを補正することです。アルファ補正の方法には下記の3つがあげられます。ただし、正確にナビの仕事ができるようになってから考慮して下さい。これを行うと一見かっこいいように思えますが、基本の仕事ができてからでないとやらない方が好結果を招きます。
 また、試走車の種類(FF,4WD)や、オンタイム試走かグリップ試走かを指示書かドラミで確認して下さい。
 補正は、勘に頼る部分も多いのですが、勘を養うためにもコマ区間距離は控える習慣をつけましょう。(その為にMAPはホールドされるのですから。。。) その他にも、自分で一定区間をグリップで走った場合と全開で走った場合、上り,下りの差、駆動方式の差をデータにしておくといいと思います。
 実際のラリーであったのは、コマ図が無い区間でAVE55km/hで走らされた(Cクラスはのれるが、A,Bクラスはのれない)区間でAVE5km/hで走った場合の正解所用時間が次のCPでの申告というものもありました。これなどは、データを持っていなければ、勘しか無いわけです。

   −−− [アルファ補正の方法  基礎編]−−−

  1. コマ図補正
     コマ図ごとにオフォシャルの距離と実際の走行距離(MAPボタンを押したときにホールドされている距離)を補正するものです。ただし、コマ図の距離が100m単位のときはかえって不正確になるので行ってはいけません。計算は「コマ図の距離−自車の距離」/速度=時間をファイナルタイムに足します。すなわち距離が多く出たとき(なかなかコマ図が出てこない時)には、タイヤが空転しているわけですから、遅れているわけです。

     もし、コマ図がなかなか出てこないときには、遅れているので適当に先行気味で走ってもらいその間に素早く計算を行います。関数電卓でプログラムできる場合にはプログラムする、暗算が得意な人は、速度を秒速に換算(速度km/s/3600*1000=m/s)して暗算してもOK。私の場合は、秒速表を画板に張り付けて暗算でだいたい何秒かをドライバーに伝えてから、必要な場合は電卓で計算しています。) 距離が少なく出てきたときには先行しているのでゆっくりまたは、止まれという指示をします。

  2. PCごとの補正
     実際に一番有効な方法はこのPC間を電卓で計算してしまい、スタートタイムを入れ替えていく方法です。ナイトラリーでは殆ど電卓で計算できてしまう場合もあるので、計算でできる区間は必ずこの方法で計算します。

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アルファ補正 for 中級ナビ


   中級ナビともなれば相応の経験をお持ちでしょうし、私程度の実力で偉そうに解説するのも気が引けておりましたところ、山口励様よりメールを頂き日頃の疑問点を質問したところ「私のこれまでの経験が新しいナビケーターの方々の助けになり、楽しく参加できるようになれば幸いです」というメールを頂き、快く解答して頂けました。
 皆さんご存じだとは、思いますが山口様は約10年前まで赤と黒のラリー車で全日本戦に山内伸弥選手と一緒に参加し、かなりの勝利を納められた日本を代表するナビゲーターの一人です。
 山口励さんのメールアドレスは下記の通りです。(山口さんも御多忙ですので、その辺を留意の上メールを差し上げて下さい。)
advanhagemu@jsn.justnet.or.jp


山口 励ナビに教えて頂いた補正に対する考え方
<Q1>
補正率を変更するのは、
1.タイヤ交換した場合
2.天候が大幅に変わった場合。
3.ドライバーのドライビングが目に見えて変化したとき。
4.オフィシャルの距離がステージが変わって合わなくなっととき。かつ、 複数の日で、試走したと思われる場合と考えていますが?

<A1>
 基本的には、西田さんの考え方で間違っていないと思います。但し、タイヤを交換した場 合ではなく、タイヤの状況が極端に変化した場合とするのが正解でしょう。
<Q2>
 上記項目以外では、あまり、神経質に補正率そのものは変えない方がいいのでは、ないかと考え ております。いかがなものでしょうか?>
<A2>
 基本の補正をいじった場合でも、つなぎの区間では必ず正規(初期)の補正率に戻すのが 、正解だと思います。基本補正が変化している状況を的確に把握するのは、つなぎの区間以外で は不可能だと思います。私のα補正のやり方は、ラリー競技中、基本的には正規の補正率を変更 しません。新たな補正が必要な場合には、指示速度を変更する方法です。個人の好みもあります が、できるだけラリコンをいじらないように操作していました。複雑多岐な操作をすれば、それ だけ操作ミスも増える可能性が増大すると思います。

<Q3>
−−−−−−シビアな計算について
<ドライバーの走り方では、新潟県のラリーエントラントチームWINの鈴木賢一ナビか らよく注意されたのは、ドライバーは、ファイナルタイムを見ながら走ってはいけないというこ とです。ドライビングがギクシャクして、補正が意味をなさなくなるとよくいわれました。
 また、昨年、PD誌の林ナビか大溝ナビの記事を読んでいると0.5秒先行で入れとか、0.3秒遅れでCPinせよとかいう指示をしていると出ていました。全日本ラリーでは、そこまでシビアに計算しておられるのかと関心すると同時に、初〜中級ナビがこれをまねてもうまく合わないだろうなと感じました。それを裏付けるだけの計算が多分きちんとできないと思うからです。>
<A3>
 西田さんの考え方は、間違っていると思います。計算はあまくで机上の計算であって、事実でも正解でもないのですから。国内ラリーのつなぎ区間はあくまでクイズと思ったほうが良いと思います。
 正解のないクイズでいちいち落ち込んでしては、ラリーは楽しくありません。楽しむことが、第一番目標ではないですか。ただ、自分の思い通りに補正があえばより楽しいと思いますが。
 但し、つなぎの区間でドライバーの走り方に区間ごとの変化がでるのであれば、もっとリズムカルな運転できるように練習を重ねることが必要と思います。林哲ナビ、小田切ナビ等各人の言っていることはそれぞれ正しいと思いますし、そのようにしたいと常々思っていることだと思います。ただ、いつもそのようにできれば、優勝以外にはありません。0.3秒は約 3 m ですし、10 m で 1 秒です。全体としては小さいことではありませんか?

 小さなことよりラリー全体がどの様に推移しているのか観察することのほうが重要ではありませんか。良い成績を残すためには。有名ナビの言うことは、半信半疑で参考とする事ですね。友人の公式声明(?)を批判する事ができませんのであしからず。
 私が、ラリーを楽しんできたのは、普通の人ではなかなか見ることができない景色(風景 )を楽しんできたからだと思います。富士山の赤富士、黒富士。オロフレ峠の朝の白樺林。 じつにすばらしいものです。また、各地の美味しい食べ物もいっぱいありました。一年に一度逢えるすばらしい友人。ラリーは、楽しいものです。

<Q4>
 北海道大学の竹下紀子さんより質問頂いた内容を山口ナビに解答して頂きました。

<以下竹下さんからの質問>
 実はこの前のラリー(北海道Jr.シリーズ第5戦小悪路ポリスラリー)からずっと疑問に 思っていたのですが、先に進むにつれてだんだんオフィシャル距離があわなくなってくる ような場合は、どのようにして補正をのせていますか?(この前は、最初、k=0.98位 だったのが、2cpあたりではスタートから約30kmの積算でkを計算して、k=0.95位でした)(ただし 、今回はオフィシャル距離がちょっといい加減だったという噂もあり。)  このような距離の傾向の変化でたいていのナビが補正を乗せ切らなくて減点されてい るような時でも、「スーパーナビ」はコケずにすんでいるんですよね。不思議なことに。 噂では「彼はどんどんkを入れ替えているよ」というのですが、これはつまり、距離 があいているコマ図が来る度にそこまでの積算距離でkを計算し直していれかえているということ なのでしょうか?考えてみればODもただのコマ図もオフィシャル距離がわかっているという点では同じことですし。このような場合のノウハウ、ご存じでしたらぜひ教えてください。

<A4>
<北大の竹下さんの質問に私なりの回答をしてみます。>
 現在のラリーでは、ミス・コースを防止する目的で各コマ図に距離を記入しています。この距離は、補正用の距離ではありません。但し、補正用に利用可能かもしれないと言うことです。
 主催者がどの様にコマ図の距離を考えているかによります。実際、主催者がコマ図の距離とCPの距離を同時に測定していのか、同じ車、同じドライバーかエントラントが確認することは不可能です。また、ドライバーの上手下手でも、道路条件により驚くほどの誤差が発生します。α補正は、主催者の癖を早く見つけることが重要となります。また、CP位置がコース設定時とラリー時とで、必ず一致している保証はありません。要はゲームなのですから、自分で推理し、その結果を楽しむ心が必要と思います。他人と異なることをするには、勇気が必要です。勇気と無謀は紙一重であり、後悔することが多いと思いますが。私達の時代と異なり、現在のナビは経験を積むことが難しくなっていますから、ドライバーとナビの協力関係が大切だと思います。両方がパニックになるとラリーどころではなくなります。
 ドライバーもナビの経験を少しはしたほうが良いと思います。山内伸弥君も手回し式計算機でナビをしたことがあります。初心者のうちは、補正をあまり考えず、ミスコースをせずラリーを終えられるようにがんばるとが重要だと思います。





アルファ補正 駆動方式と距離の出方


 各自でデータを取ってがんばって下さい。。。というだけでは、練習走行禁止の昨今、難しいでしょうから私の秘蔵データを参考にして下さい。
 各車とも標準的なラリー仕様ですが、E−38AはフロントデフがビスカスLSDです。また、補正率は合わせてあります。実走行は8km強と7km弱ですが10kmに換算してあります。AVEは50〜60km/h位です。また、m単位は四捨五入です。

駆動方式の差によるダートでの距離の出方(10km)
走り方上り、下り4WD(E38A)FF(AE92)FR(A175)
グリップ上り0(基準)+180m+120m
全開上り+110m+850m+530m
グリップ下り−100m−50m−120m
全開下り−140m+200m+160m


駆動方式の違いによるターマックでの距離の出方(10km)
走り方上り、下り4WD(E38A)FF(AE92)FR(A175)
グリップ上り0(基準)+130m+50m
全開上り−30m+230m+120m
グリップ下り−50m+50m−30m
全開下り−150m+60m+20m



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アルファ補正 問題編
 山口さんから頂いた問題を掲載しますので、一度考えて下さい。

山口励 さんは書きました:
> 「α補正をどの様に各ナビゲーターが処理しているのか」という国内ナビゲーターの永 >遠の課>題について、全日本戦をベースに思いつくまま問題形式で書いてみます。 >但し、私の経験してきた時代と現在のラリー運営方法(CP間の距離規制、コマ図への距 >離記入及び競技車両(私が使用したのはファミリア4駆までです。一部ランサーも含まれ >ますが)の違いにより、現在ではかなりずれたものになると思います。 > 「小田切順之君の弁によれば、ラリー区間の減点はよりシビアになっており」、各ナビ >ゲーターの奮闘が勝負のベース(ラリー区間の減点が人より大では勝つことが困難)とな >ってきているようです。ナビゲーターの技術がより重要視されてきていると思います。 > > 「円盤または手回し式計算機」でどこまで正確にできるかですが、TE27、37、ミ >ラージュで優勝した場合で、各CPでの平均誤差はほぼ3秒以内です。現在では、1秒以 >内にとの要求がドライバーから出ているそうですが。 > 昔の「DCCSウインター(スパイクタイヤを使用)」では、1CPで必ず5秒以上の >誤差を生じていました。 >2CPからはあまり補正の問題はありませんでした。数年この問題に悩 >まされましたが、ある時期から解決しました。3人のナビが協力して正規の補正値にαを >いくらにすれ >ばよいか発見したからです。原因と解決方法については考えてみてください。・・・問1 >
> 車のセッティングによっても大幅な違いがあります。「アンダーステア」と「オーバー >ステア」では、一度痛い目に遭いました。ハイアベの途中でいつもと車の動きが変わって >いるので伸弥君に尋ねたところ違うとのことでした。もうあとのまつりでした。・・・問2
> PMCSクリサンテーモでは、つなぎ区間ではアメリカ式CP、ハイアベ区間ではヨー >ロッパ式CP、という混在したラリーがあり非常に楽しいものでした。ドライバーとナビ >はない知恵を絞りながら、また各チームは狐と狸と化かし合いながら戦いました。 >特に綾部選手とはその当時のNo.1かけ闘いました。 >どの様な作戦が良いか。ただ作戦を間違えれば、最初のハイアベ区間で脱落します。 >・・・問3
山口さんから問題の解答を頂きました。



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 α補正と最近のラリーのあり方に対すて問題提起したいと思います。是非、皆さんも一度考えて頂きたいと思います。

<最近のラリーに思うこと   課題提起>  

以下山口さんとのメールのやりとりです。
山口励さんは書きました:
> あなた方が、記載されましたナビゲーションのいろいろな問題を楽しくまた懐かしく拝見させて
>いただきました。約30年前の学生時代にナビゲーション練習のために色々な問題を考え、友人
>達と過ごした時間を思い出しました。
> この時代には、現在のナビゲーション用コンピュータはなく、手回し式のタイガー計算機やパイ >ロット計算機、円盤またはクルタ計算機を1台または2台使用して実際のラリーを行っていまし >た。だから計算方法を考えながら、また素早く計算できるようにいつも下宿で練習していたもの >です。
西田→私も自動車部に入部した当時ラリコンなるものは部に無く、電卓か円盤とKSカ ウンターがあるのみでした。そこで、先輩から円盤の使い方を教わりましたが、 実際には、デジタル世代ですので、PC8200?だったでしょうか、当時発売された ばかりのハンドヘルドコンピュータにプログラムを組んで何メートル遅れという ような計算でラリーを行っておりました。 >あなた方が考えられた記載の問題も、私たちが練習したり、大学ラリーで出題されていた問題か >らあまり複雑に(難しく)なっていないようですね。
→そうですか。ラリコンを使っている割には、新しい問題は、あまり出来ていな いのかもしれません。そのためでしょうか、大先輩ナビ(40才以上の)方々は、 簡単に手計算で解いてしまわれます。若い世代は、基本的な計算能力が落ちているのかもしれ ません
>あなた方の回答は、すべてラリコンを使うようになっていますね。 >初期(開発途上)のラリコンは現在のような仕様ではなく、もっと扱いにくいものでした。 >例えば、PC処理でPC発見前に時速をラリコンに前もってインプットしておき、PC発見時に >エントリーボタンを押すことになっていました。この場合の不都合はよく理解できると思います >が。
> 私としては、ラリコンが発達したおかげで多数の人がラリーを楽しむことが可能になりましたが >、勝負としては面白みが半減したと思います。(但し、国内ラリーに関して) >海外ラリーの場合は、つなぎの処理が非常に楽になりましたが。
>内心としては、ラリコンを誰でも簡単に使用できるように開発すべきではなかったと思っていま >す。
>初期発売当時は、私の基本給が8万円位でラリコンは25万円しましたが!
>                            − 山口 励 −
西田→同感です。私は、ドライバーからラリーに入りましたので、最初はナビゲー ションについて考える余裕も無かったために、実際には、ラリコンからナビの世 界に足を踏み入れました。この経験から言うと、ラリコンが無ければ、ナビを やっていなかったかなとも思います。  しかし、後輩達にナビゲーションを講義するようになり、円盤や電卓で計算し ないと計算能力が身に付かないことを痛感しました。そこで、ラリコンなしクラ スの設定されている新潟大学市民ラリーによく出場しましたし、後輩達にも出場 するようにさせました。  ところが、JAFの公認ラリーでは、このようなラリーテクニックも生かす場 が無く、あくまで補助計算の演習的になってしまいます。いろいろ考えた末、現 実的にラリコンを使うことを前提にHPを作りました。  この電卓、円盤での計算方法もHPに掲載しようと思っていたのですが、需要 が殆どないため後回しにしております。現実的にメールで頂く意見などでも補正 は、どうするとかいった話題ばかりです。  実際のラリーでラリコンを使わない(使わせない)ラリーが無いためだと思い ます。  このあたりが、HPを作っていて一番ジレンマを感じたところです。分計時で ラリコンなしでラリーを楽しむようなラリーは、今では、はやらないのでしょう か?

 このホームページをごらん頂いている皆さんは、円盤or電卓+機械式距離計のみで、ファイナルタイムの計算ができるでしょうか?この計算ができるのと、できないのでは計算能力を養う上で大きな差が出ると思います。地区戦や全日本ラリーで、若手が台頭できないのは、ヒョットするとこのへんに理由があるように思うのですが。。。。
 皆さんも机上でいいですので、手計算でファイナルタイムを算出できるように訓練してみては、いかがでしょうか?



アルファ補正 for 上級ナビ編

 上級ナビともなれば、人それぞれ補正に対する立派な御考え方をお持ちだと思います。是非、凋落気味であるラリー界の興隆を図り、悩める初級〜中級のナビへご自分のノウハウを公開してあげて下さい。多くの方のお便り、HPの開設をお待ちしております。
 今回御協力いただきました山口励様に厚く御礼申し上げます。


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