新品種(新種)の紹介(サンセットモザイクその3)

 この新品種の紹介も今回で3回目になりますが、回を重ねるごとに、この品種の持つ特異性とでも言いましょうか、今までのグッピーには見られない変わった特長をご紹介できることが楽しみになってきています。今回はサンセットモザイクその2以降の魚たちと、前回簡単な説明を入れた、サンセット遺伝子のY染色体からX染色体への移行が明らかになったことなどを中心に説明します。
 さて、前回の本文の中で、(雄の中に、普通のモザイクの表現をするものが多く現れ、このことは、Y染色体上にあったオレンジ色を表現する遺伝子が、組み換えにより、X染色体上に移ったか、または、ごくまれに起こるようですが、常染色体上に転座するなどの突然変異が起きていることを示唆しています。)と書きましたが、その後のブリーディング結果により、今回サンセット遺伝子が雌のX染色体上に組み変わったことが確認されました。経過は以下のとおりです。
 1、DELTA SPACE内での通常の交配として、サンセットモザイクの雄に普通のモザイクの雌を掛け合わせていたところ、突然仔の中に、それまでは出なかったオレンジ色にならないモザイクが半数以上も混じってしまった。この品種のブリーディングを始めてからその時までの約2年間このような例はありませんでしたので、この遺伝子はY染色体上で安定しているものと思っていました。さらに、これは1匹の雌からだけではなく、同時に交配していた複数の雌の仔にも同じ結果として現れました。
 2、この胎の雌の中に、DELTA SPACEでブリーディングしている普通のモザイクの雌にない特長を持つものが現れた。長年私が維持してきている赤系モザイクの雌の背鰭は薄茶色で墨が多少入る程度です。ところがこの胎の雌の中には背鰭に尾鰭と同じブルーやグリーンの発色があり、きれいにスポットが入っているものが多く混じりました。さらにその中には僅かですが、腹鰭、尻鰭にまで発色のあるものまで見られました。この品種の特長としてすでにご紹介していますが、サンセットモザイクの雄は尾鰭、背鰭の他、胸鰭、腹鰭、さらに尻鰭が変化したゴノポジウムにまで色柄の乗るものがいます。このことからも、Xサンセットの存在が容易に予想できます。


 3、この雌(リボン)に普通のモザイクの雄を掛け合わせたところ、約半数にサンセットモザイクの雄が出現した。

 以上が現在進行中のブリーディング報告です。Xサンセットが確認されているので、これをモザイク系のいろいろな品種に活用することが可能になりました。今のところ、この遺伝子はモザイク遺伝子と同じ染色体上に存在するため、グラスやその他の品種との掛け合わせには配慮が必要ですが、いずれは単独で利用することも可能になると思われます。

尾鰭の柄も決まってきました。雄のボディーは成長が速く尾鰭、背鰭は後からついてくるという感じです。

雌の下側の雄は特に発色が強く、鰓蓋のあたりからオレンジ色に光っています。
この個体はサンセットモザイクの特長が良く出ていて色柄もしっかりと決まっている完成度の高い魚です。
ブルーモザイクの雌から採った個体です。ブルー体色の個体には赤の発色はないか、あるいは肩や下半身に僅かに現れる程度ですが、サンセット遺伝子を持った魚は個体差はありますが、このようになるのが普通です。
胸鰭にご注目、尾びれと同じ色柄を持っています。
同じ腹から生まれた仔ですが、上の個体とは明らかに色柄の感じが違います。背鰭の形や大きさもこの品種の特徴のひとつです。

 次ページへ   前ページへ4