ブルーモザイク(その2)
前回はブルーモザイクの遺伝について推測してみましたが、今回はブルーモザイクにとって邪魔になる遺伝子を取り除くにはどうしたらよいか考えて見ます。その前に、前回少しわかりにくいと思われる部分があったので、それについて補足します。また、その部分の内容の一部を訂正しました。
前回、私は、ブルーモザイクの下腹部に赤い斑紋を現出し、尾柄をグラスのような細かいスポット模様にする遺伝子は常染色体上にあると推測しましたが、この理由は単にブルーモザイクを維持することが難しいという、一般的な尺度と私自信の飼育経験からこのような推測をしてみたにすぎません。、もし、この遺伝子が性染色体上にあるのならば、ブルーモザイクのブリーディングが難しいと言われ、実際にこの品種を維持するブリーダーが極めて少ないという理由はないのではないかと思われるからです。実を言うと、私もブルーモザイクについて、今回のように、深い考えを巡らすのは、このホームページを公開するために、「モザイクのはなし」を書き始めてからのことです。美しいブルーモザイクを作るために、邪魔になっている遺伝子を排除しなければならないという考えは、常に頭の中にはありましたが、実際に文章にするのは初めてです。したがって、まだこの推測は検定されていませんし、また、検定するには時間がかかります。そこで、先に書いた、X染色体上にあると仮定した場合も含めてブリーディング法を考えてみたいと思います。下の写真はこのタイプの典型的な個体です。
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この遺伝子がX染色体上にあると仮定した場合、これはどのような遺伝子か特定し、これを排除することは常染色体上にある場合と比較するとかなり容易です。考えられるのは、グラス遺伝子、ヘテロモルファ遺伝子などですがヘテロモルファ遺伝子がブルーモザイクに、ここに取り上げているような影響を与えるかどうかはわかりません。
この遺伝子は他の多くの遺伝子と同じく、外見上は雄のみに現れ、雌からは判別できません。しかし、X染色体上にあるとすれば、その場所が特定できているわけですから、これを排除することはそれほど難しくはありません。
まず、この影響のでている個体、遺伝的にはブルーモザイクで、下腹部に赤い斑紋があり、尾鰭に厚みがなく、グラスのような細かいスポットのある雄を種親として使わなければならない場合、これと同じ胎の雌は使えません。この胎の雌は最低1個、場合によれば、両方のX染色体に、この遺伝子を持っていると考えられるからです。このときに使う雌は赤系モザイクの雌、できればグラスと掛け合わせたことがないと思われるものがベストです。複数の雄に対しやはり複数の雌を付けます。出来るだけ若い雌を選び、仔が採れたらそれぞれの雌がどの仔を産んだか覚えておきます。これは大事なことで、当たりの雌が見つかった場合、この仔魚が成長したときに必要になります。もし、これらの雌のなかに、産んだ雄がすべて赤い紋を持たないものが現れたら、それが当たりの雌です。この雌とその仔の中の雄、あるいは赤い紋を持たなければ別の雄でもかまいません。これを掛け合わせれば、一応は雄雌ともにブルーモザイクと呼べるものが出てきます。また、この雌(親)から仔が採れない場合は、その仔の雌を使います。これらの雌はすべて片方のX染色体上に邪魔になる遺伝子を持っているわけですから、それらの仔はこの遺伝子を持つもの持たないもの雄雌ともに半々の確率で出てきます。そのあと、同じ方法で複数の雌を付ければあたりの雌を見つけられる確率はずっと高くなります。すぐに当たりの雌が見つからない場合、例えば、赤い紋を持つものと持たないものが半々で出た場合などでも、良い方の雄を使って新しく赤系の雌をつけていれば、必ずあたりの雌は見つかります。
ここまでは、赤い斑紋の遺伝子が性染色体X上にあると仮定した場合のそれを排除する方法です。文章にしてみると長いようですが、考え方自体はそれほど難しくはないと思います。
次は赤い斑紋を出現させる遺伝子が、常染色体上にある、と仮定した場合の、これを除去する方法です。前項に書きましたように、私はこの遺伝子は、性染色体上よりも、こちらの方ではないかと思っているのですが、現在、検定をしているところなので、時間はかかりますが、確認できたらお知らせします。
この遺伝子が常染色体上にある場合、性染色体上にある場合と比べて、これを取り除くことは、かなり面倒な作業になります。それはなぜかといいますと、雄がこの遺伝子を持っている場合、それがどの位置にあるのかが特定できないからです。
具体的にいいますと、これが性染色体上にある場合は、X側にあるわけですから、この遺伝子は、雄親からはその仔の雌にしか遺伝しません。これに対し、雄親の常染色体上にある場合、雄親から雄、雌どちらの仔へも遺伝するということです。雄の生殖細胞が減数分裂して精子をつくるときに、X染色体を含む側とY染色体を含む側に同じ確率で移行するからです。そしてさらに、雄にも雌と同様に、この遺伝子を1個持つものと、2個持つものの二通りがあるということを念頭においてブリーディングしなければなりません。
この場合も、雄の外見は同じものからはじめます。雌も前述のものと同じ条件で選びます。表現形は同じでも、雄には二通りの遺伝子の組み合わせがあるわけですから、雄雌を掛け合わせる場合、複数の雄に対し複数の雌という方法はとれません。雄1に対し、雌数匹という組み合わせをいくつか作り、それぞれの雌が産んだ仔の比率によって判断します。この結果、生まれてきた雄が赤い斑紋を持つものと持たないものが半々だった場合のみ、当たりの雌ということができます。この結果から考えられる親の組み合わせは、この遺伝子を1個持った雄と、この遺伝子を持たない雌以外ありません。ただし、雄雌が生まれる比率や、リボンの出現率のように、その時々の胎にばらつきがあるので、絶対確実というわけにはいきません。これ以外の仔の出現率からもいろいろな親の組み合わせが推測できますが、長くなりますので、ここでは省きます。この後のブリーディング方法は前と同じです。そして、赤い斑紋を持つ雄が出現しなくなったら、特に注意することは、素性のわからない雌を使わないようにすることです。雌の外見では全く判別がつかないので、このことを常に意識していることが必要です。ここで間違えると、振り出しに戻ります。
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