モザイクの応用(その1)

   ここからは、いろいろなモザイクのバリエーションについて書きます。簡単に言えば、モザイク系と称される品種のことです。私がこれまでに現在継続中のものも含め、ブリーディング経験のあるものは、代表的なもので以下のとおりです。

モザイク
プラチナモザイク
メタルモスコー
プラチナアクアマリンモザイク
モザイクタキシード
オールドファッションモザイク
フルメタルモザイク
サンタマリアモザイク
コーラルモザイク
モザイクコブラ
アクアマリンモザイク
ギャラクシーモザイク

  さらに、それぞれのブルー系、いくつかの品種についてはブドウ目アルビノ(ルチノー)、RRE.A、ゴールデンそしてリボンタイプも飼育経験があります。これら一つ一つを品種として数えると30種を超える数になりますが、これらに一つ共通していることは、雌はモザイク、つまり、X染色体上にMo、モザイク遺伝子を持っているということです。もちろん、アルビノなどの体色遺伝やロングフィンなどは、さらに別のタイプの遺伝子が必要ですが、モザイク系の基本になる遺伝子は同じです。遺伝的にはこのような説明になりますが、実際はもっと簡単、モザイクの雌はタキシードは別として、上に挙げたどの品種にも共通して使えるということです。
 もう少し遺伝について説明します。表現型の遺伝には体色遺伝のように遺伝子が常染色体上にあって雄雌に関係なく遺伝するものと、性染色体X上にあって前者と同じように雄雌の区別なく遺伝するもの、そして性染色体Y上にあって雄から雄へと遺伝するものがあります。さらには、性染色体XYどちらにも存在する遺伝子もあります。
 Y型の遺伝子で代表的なものはプラチナ、コーラル、オールドファッション、コブラ、アクアマリン、メタルなどですが、他にもたくさんあります。また、これらの遺伝子は、突然変異によってX染色体に移行することがあるのでY型といっても決定的なものではありません。現在では、Xプラチナ、Xコブラなどと限定的に呼んで、新しい品種の作出に多く利用されています。
 これに対し、X型と呼べるものはあまり多くありません。レッドテールやブルーテールなどはこのタイプと思われますが、実際にブリーディングしてみますと、例えば、レッドテールの雄にモザイクの雌をかけたときのF1はそれぞれの中間的な表現をしているものが出ることが多くあり、やはり決定的とは言えないようです。
 そして、性染色体XYどちらにも存在するタイプですが、品種として代表的なものはドイツイエロータキシード、グラスそしてモザイクなど、表現型として代表的なものはタキシードです。Y型を除いた遺伝子、つまり、もともとX染色体のみ、あるいはXY両方に存在するタイプの遺伝子は、Y型がボディの色柄に大きく影響を与えるのに対し、尾鰭の色柄や形に強い影響を与えます。そしてこれらの遺伝子の組み合わせによっていろいろな品種が作られます。はなしは戻りますが、モザイク系と呼ばれる品種もこのように、Y型の遺伝によるボディとX染色体上にあるモザイク遺伝子による尾鰭から作られるわけです。
 以上のようなことを踏まえて、実際のブリーディングについてお話します。ここまでの「モザイクのはなし」の中でも幾度となく繰り返しましたが、ここでも基本は同じです。モザイク系の品種を維持するにはモザイクの良い雌が必要です。ですから、好みでメタルモザイクを飼いたい、オールドファッションモザイクを飼いたいと言う人も、それと平行して、モザイクをブリーディングすることをお勧めします。良いモザイクの雌を持っていれば、他のモザイク系のブリーディングは必ず成功します。私の温室には、現在、十数年続いているモザイクとオールドファッション、プラチナアクアマリン、モザイクコブラなど数種類のモザイク系品種がいます。これらのモザイク系品種は、2〜3代同胎で仔を採ったら雌をモザイクから採ったものと入れ替えるというように定期的に雌を交換することによって簡単に維持できます。また、私の場合はこれらのモザイク系品種の雌をモザイクの雄とかけ合せることはしません。特に理由はありませんが、モザイクは別の方法で建て直しをしています。次の項では品種別にブリーディングの注意点などを解説します。


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