ペアリング(その1)

  始めてグッピーを飼う時の親魚は普通、お店や通販で買う1〜2ペアか友人、知人から貰い受ける、数ペアで、ここは本格的なブリーディングに入るための準備段階です。さて、仔もたくさん採れ、無事に育ってきたときに、次の世代に向けて親を選別し、予備の親魚、観賞用の魚を残し、不要魚を処分してゆく、このへんからが本番です。他の品種にも興味を持ち、魚の数が増えるにつれ、水槽の数も増してゆきます。ここで必要になってくるのが、ただ闇雲に仔を採って増やすのではない、計画的なブリーディングのテクニックです。ペアリング(その1)では確実に子孫を残し、数を絞りながら、計画的にブリーディングする方法をペアリングするときの親魚の数や親魚を選ぶ基本について、(その2)以降は系統分けの方法、仔魚や若魚のストック方などを中心にご紹介します。
 最初は、確実に仔を採り、その品種の特徴を維持しながら、さらにレベルアップを計るためのペアリング方法です。まず、水槽の大きさですが、グッピーの親魚を入れるためには、市販のS水槽かM水槽が適当です。45cmや60cm水槽では、親魚が少数の場合、餌の食べ残しなど、スペースが広すぎる故のマイナス面があり、何よりも置き場所の問題があります。60cm水槽を横置きできる幅があれば、30cm水槽を縦に3本置くことができ、グッピーのブリーディングにはこのほうがずっと有利です。
 この小型水槽に、親を選んで入れますが、まずは雄です。種となる雄は2匹選びます。このとき大事なのは、同系統、できるだけ同胎で、表現が同じか、ごく近いものを選別します。品種改良のためのペアリングのときも、同じように、体形、色柄、各鰭の形など、改良の目的に沿って、できる限り近い表現をしているものを選びます。じつは、雄は一匹に絞る事が理想なのですが、複数の雌から仔を採るので、それを確実にするため、雄も複数にします。
 次は雌です。グッピーの場合、美しさで評価を受けるのは、やはり雄で、品種の特徴をよく現すのも雄です。しかしながら、このHPの「モザイクのはなし」の中でもいくどとなく書いているように、品種を維持し、さらにレベルアップしてゆくには、雄と比べてその特徴の表現が弱い、あるいは雄と大きく表現が異なる雌の中から、親として適当なものを選び出してゆくことこそが、もっとも重要なことと言えます。ところが、この、雌選びというのが、初心者の方には難しく、ベテランブリーダーと言えど失敗し、次の代は無残な結果となることがあります。そこで、初心者の方や、ベテランでも、それまで持ったことのない品種や系統でペアリングをするときに、この失敗を少なくするための雌選びをご紹介します。選ぶ雌は3〜4尾、それぞれが違った特徴を持ったものを選び出します。モザイクではいくつか例を挙げて説明しましたが、他に、例えばドイツイエロータキシードでは、雌は尾鰭の色が黄色いものから、白に近いものまでかなりの違いを見ます。できるだけ白い雄を作りたいからといって、雌も白っぽいものばかり使っていると、雄の尾鰭に厚みがなくなってきたり、青みがかかってくるなど、マイナス面が出てくることがあります。また、ブルーグラスでは、ほとんど透明な地に、細かいスポットが入っているだけのものから、黒っぽく墨の入ったものまで表現はさまざまです。また、尾鰭の形もいろいろで、上下の部分が尖ってデルタテールに近いように見えるものからラウンドテールまで、同じ品種でも、選別淘汰によって、特徴の際立ったものが出来てきます。さらに、ブリーディング結果から見た、雄雌の相性も経験的に、重要なポイントとなります。 このように、雌もよく見れば、幅広いバリエーションを持っていますから、自分の目的に適う雌を選び出すことは、何代かを経て、雌の表現を固定するまでは、かなり難しいことと言えます。さて、違うタイプの雌を選んだら、次は、それぞれの特徴を良く覚えておき、仔魚が十分に育ったときに、どの雌の仔かを確認できるようにしておきます。最初は期待どおりにゆかず、処分しなければならないものも多く出ますが、こうすることによって、少しずつ、最良の雌の選び方を覚え、無駄のないブリーディングができるようになります。


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