ペアリング(その2)


 ペアリング(その1)の補足になりますが、ここではまず、親を選別する時期について、考えてみましょう。
 種親を選ぶ時期というのは、ブリーダーによってそれぞれ違い、ブリーディングの目的や品種、そして水槽の空き具合によっても変わります。新しい品種を作出する目的があるときや、遺伝的な検定を行う時など、出来るだけ早い仔採りが必要なときは、幼魚段階で雄雌を分けずに個体数のみを減らしていって、一番早い時期に結果を出してしまうこともあります。それに対して、品種の維持、改良を目標としたブリーディングのときは、その品種の特長や改良を要する色、柄、サイズ、フォームなどの条件を満たす親魚を選ばなければならないわけですから、ある程度のサイズアップを待たねばなりません。私がモザイク系の種親を選ぶ時期は、雄の尾鰭の赤の発色が決まり、雌の尾鰭の地色や柄がはっきりと見えるようになる、生後4ヵ月半前後にしています。 ブルーグラスなど、グラス系の品種は、これよりも早く、アルビノ、ルチノーは同時期かやや遅めにしていますが、RRE.Aはかかりが悪いことがあるので、早い時期から雄雌一緒にしてしまうこともあります。また、私の温室でブリーディングしているレッドヘッドやゴールデンUSレッドテールなど、USA系の赤のソリッドは、特に晩成型なので、親を選別するのが5ヶ月を過ぎてしまうこともよくあります。ときには、次の仔を採らなければならないことを忘れてしまっていて、6ヶ月過ぎの親を使うこともありますが、それでも仔が採れないことはほとんどありません。
 このように、ペアリングのタイミングというのは、一定のものではありません。採仔目的や品種の違いによって一番良い時期を選んで行くことが大切と思われます。そのためには、各品種の成長過程をよく観察することが肝心です。いずれにしても、私はあまり早い時期に仔を採ってしまうことは品種の維持、改良にはマイナスだと思います。品種を維持して行くためには最良の親選びが不可欠ですから、これを行うためには、それぞれの品種の特徴がはっきりと現れるまで待つことが必要です。特に若い雌はどれも同じように見えてしまいますから。
 一般的にはペアリング開始から一ヶ月程で最初の産仔が見られ、二回目以降は3〜4週間周期でこれを繰り返します。私の場合、ある程度親を大きくしてからペアリングを始めます。そして産仔まで一ヶ月ほどかかりますから、親はさらに成長しています。したがって最初の産仔でも大抵50匹前後の仔が採れます。この時期の親は若くて元気です。そして、胎に持つ卵の数が比較的少ないため、粒が大きく質の良い仔が採れます。
 確実に仔を得るためにはいくつかの注意が必要です。まず、水槽にメンディングテープなどを貼り、ペアリング開始日を記録しておきます。3週間を過ぎた頃から雌のお腹をよく観察します。アルビノやゴールデンなどはそのころになると雌のお腹の中にいる稚魚の目玉が見えてきます。産仔直前になると、雌のお腹は張り出して、顎の下がくびれて見えるほどに膨らみ、水槽のガラス面を上下に落ち着きなく泳いだり、一匹だけ離れて隅のほうでじっとしていたりと、いつもと違う行動をします。これが産仔開始のサインで、このときが産卵箱に入れるタイミングです。産仔が始まると、肛門の辺りが少し出っ張ったようになりますから、それから産卵箱に移しても、大部分の仔は確保できます。ただし、これは一般的な例で、品種や系統によっては、あまり雌のお腹が膨らまず、こちらが気づかないうちに産んでしまうものもあります。また、産仔の間隔も、私の温室では最短17日というのがありますので、日ごろの注意が必要です。
 採仔の方法としては、産卵箱を使う以外にも、水草を密集させて稚魚の逃げ場を作ってやる、目の粗い樹脂製の網やかごなどに親をいれて、隙間から稚魚だけが逃げ出せるようにするなど、いろいろありますが、小型の産卵箱を使うことが産仔後の管理にもとても都合が良いので、私の温室では他の方法は行っていません。
 次ぎの項では稚魚の飼育管理について説明します。


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