「本当だ! そしてこの方はこの国の第一王女……」
リュウカはエドアルのわき腹を殴った。
「ご迷惑をおかけしまして申しわけありません」
身を二つに折ったエドアルを尻目に、リュウカは謝罪した。
「ご息女はさぞかし怖い思いをされたでしょう。謝ってすむことではありませんが、どうか謝罪だけでも受け入れていただけませんか」
「謝罪なんてお断りだよ!」
母親は睨みつけた。
「あんたたち金持ちは何でも金で解決しようとする。あたしらは、自分たちが生きてく分ぐらい自分で稼げる。恵んでもらういわれなんかないね。とっとと帰りな。二度と顔を見せないでくれ」
エドアルはびっくりした。
「金ではなく、宝石だ。ほんの好意の印じゃないか」
「ふざけんじゃないよ。あんたたちが出ていかないってんなら、叩きだすよ! なんならお役人を呼んでやろうか。王子さまや王女さまをかたる不届き者がいるってね」
どうして、自分の気持ちをわかってくれないんだ!
エドアルは歯がみした。
一昨日はあんなに親切なご婦人だと思っていたのに。
ただ親切にしてもらったお礼をしたかっただけなのに。
「この子はウソつきではありません」
リュウカはやんわりと言った。
「考えが足りず、ご迷惑をおかけしたことは申しわけなく思います。誠意をもって償わせていただきます」
「誠意? このウソつきが。今、王子だか王女だか言ったのがウソじゃないとでも言うのかい」
リュウカはゆっくりと小さくうなずいた。
有無を言わせない雰囲気が漂っていた。
「そんなこと……」
母親の顔がひきつった。
エドアルは勢いづいた。
「デュール・ヒルブルークを呼んだら、すぐにわかる。ここに呼ぼうか」
イッポリートがとつぜん目を輝かせた。
「領主さまに会えるの?」
エドアルはうれしくなって力をこめた。
「会えるさ!」