【第197回】

 

~ リュウイン篇 ~
第4部 ふたたびリュウイン(中編)
25章 英雄 ……その31

2010.1.20

 

「本当だ! そしてこの方はこの国の第一王女……」

 リュウカはエドアルのわき腹を殴った。

「ご迷惑をおかけしまして申しわけありません」

 身を二つに折ったエドアルを尻目に、リュウカは謝罪した。

「ご息女はさぞかし怖い思いをされたでしょう。謝ってすむことではありませんが、どうか謝罪だけでも受け入れていただけませんか」

「謝罪なんてお断りだよ!」

 母親は睨みつけた。

「あんたたち金持ちは何でも金で解決しようとする。あたしらは、自分たちが生きてく分ぐらい自分で稼げる。恵んでもらういわれなんかないね。とっとと帰りな。二度と顔を見せないでくれ」

 エドアルはびっくりした。

「金ではなく、宝石だ。ほんの好意の印じゃないか」

「ふざけんじゃないよ。あんたたちが出ていかないってんなら、叩きだすよ! なんならお役人を呼んでやろうか。王子さまや王女さまをかたる不届き者がいるってね」

 どうして、自分の気持ちをわかってくれないんだ!

 エドアルは歯がみした。

 一昨日はあんなに親切なご婦人だと思っていたのに。

 ただ親切にしてもらったお礼をしたかっただけなのに。

「この子はウソつきではありません」

 リュウカはやんわりと言った。

「考えが足りず、ご迷惑をおかけしたことは申しわけなく思います。誠意をもって償わせていただきます」

「誠意? このウソつきが。今、王子だか王女だか言ったのがウソじゃないとでも言うのかい」

 リュウカはゆっくりと小さくうなずいた。

 有無を言わせない雰囲気が漂っていた。

「そんなこと……」

 母親の顔がひきつった。

 エドアルは勢いづいた。

「デュール・ヒルブルークを呼んだら、すぐにわかる。ここに呼ぼうか」

 イッポリートがとつぜん目を輝かせた。

「領主さまに会えるの?」

 エドアルはうれしくなって力をこめた。

「会えるさ!」

 

 

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