「長生きすると、珍しいものを見るねぇ」
「姉上は、異国の血をひいていらっしゃるのですよ」
エドアルは得意になりながら説明した。
祖母はうなずいた。
「昔、人づてに、お城に直訴に行った人の話を聞いてね、そのときの偉い役人があんたにそっくりなんだよ。体が大きくて剣を持っていて、炭を流したみたいに真っ黒い髪で、月のない夜みたいに真っ黒い眼の女の人だったって」
それから、ハッと血相を変えた。
「あんた、お役人かい? まさか、ポリーをどうかしようと……」
リュウカは首をふった。
「お詫びにうかがったのです。エドアル」
リュウカは促した。
エドアルは目を剝いた。
代わりに謝ってくれるのではなかったのか?
今さらおじけづいたのか? それともダマしたのか?
ズルい!
「何かあったのかい?」
祖母はエドアルの両手をそっと取り、眼をのぞきこんだ。
姉上よりもよっぽどやさしい!
少しホッとして、エドアルは口を開いた。
「昨日、お世話になったお礼に、マルに宝石をやったのです。それをポリーが上着につけていたらしくて、役人たちはその宝石を狙ったらしいのです」
話してみると、自分はちっとも悪くないのだと、エドアルは気がついた。
「だから、ポリーは人さらいに遭ったわけではないし、もう宝石もなくなったのだから、怖がる必要もないと、教えてやろうと思って」
祖母はとまどったような顔をした。
「宝石なら、また持って来ますから、安心してください。その悪い役人たちもきっと捕まえますし」
祖母は、エドアルの手をひとつにまとめて、ぎゅっと握った。
「そんなものは要らないんだよ。もう持ってくるんじゃないよ。それより、早くポリーに教えておやり」
欲のない人だ、とエドアルは思った。
それでは、ますます厚意に応えなくては。