「こんなもの食えるか!」
「まあ! あんたのせいで、私とおばあちゃんの分が減ったのよ! 感謝して食べてよ!」
「誰もそんなこと頼んでないぞ! 私を殺す気か!」
「口に合わなかったのかい。ごめんねえ、うちにはこんなものしかなくてね」
ゆるやかな口調で祖母が言った。にこにこと微笑んでいる。
「びっくりしたろうねえ。でも、死んだりはしないよ。みんな同じものを食べてるからね」
「そうそう。元気でピンピンしてる」
マルタンが笑い、ファビアンはその額を軽くこづいた。
「おまえは元気よすぎるんだよ」
「まったくよ。もっと仕事増やしてもらったら? 稼ぎが増えたら、食費だって苦労しなくて済むんだから」
イッポリートが話しているスキに、弟のヴァレリアンがその皿にスプーンを入れた。
「何すんの!」
イッポリートは手をたたいた。
「少しぐらいいいだろ、ケチ!」
「これは、私の! あんたのはあるでしょ!」
「オレは育ちざかりだから、腹が減るんだよ」
「私だって、育ち盛りよ!」
「ウソだ! デブのくせに!」
イッポリートは手をあげ、派手な音とともにヴァレリアンの頬に平手打ちをくらわせた。
「誰がデブだって? もういっぺん言ってごらん!」
「言ってやらぁ! デブ! デブ!」
母が叫んだ。
「あんたたち! さっさと食べちゃいな!」
エドアルは唖然とした。
にぎやかなのは、食後になってもおさまらなかった。
ストーブのそばで祖母が繕いものをし、洗いものを終えた子どもたちが周囲に集まって暖をとる。
「いつか役人になるんだ」
マルタンは言った。
「学者より役人のほうが金が稼げるだろう」
「役人なんかなれるわけない」
ファビアンが容赦なく断言した。