「うるさい! おまえなんかの指図は受けない! 引っこんでろ!」
デュール・ヒルブルークの凡庸な顔を見るだけでムカついた。
そもそも、どうしてこいつはムダに大きいんだ?
同じ年のクセに!
デュール・グレイも長身だったが、ヒルブルークときたら、肩幅まで桁違いに広いじゃないか。デュールっていうのは、どいつもこいつも生意気でムカつくヤツらばっかりだ!
「おまえだけ帰れ!」
エドアルは怒鳴った。
「気がきかないクセに姉上の後について回るだけの厄介者なんか、顔も見たくない!」
エドアルは後ろから護衛が二人ついてくるのを確かめて、表門へ行った。
少年はいなかった。
まだ仕事が終わっていないのだろうか。
少し待ってみることにした。
日が暮れてから、少年はやってきた。
「うち来いよ」
と、少年は誘った。
「オレ、すっかり腹ペコだよ」
「行ってもいいのか?」
エドアルは訊ねた。
突然の訪問は礼儀に反する。
「遠慮すんなよ。どうせ一人暮らしでロクなもん食ってないんだろ?」
少年はエドアルの体を肘でついた。
「勝手に決めつけるな」
「ごまかすなよ。わかってんだ、あんた、ヨソから来たんだろ?」
エドアルの心臓がドキンとした。
「どうして、それを……」
「あんた、なまってるもん」
なまってるのはそっちじゃないか!
呆気にとられている間に、少年は歩き始めた。