【第181回】

 

~ リュウイン篇 ~
第4部 ふたたびリュウイン(中編)
25章 英雄 ……その15

2009.9.30

 

「うるさい! おまえなんかの指図は受けない! 引っこんでろ!」

 デュール・ヒルブルークの凡庸な顔を見るだけでムカついた。

 そもそも、どうしてこいつはムダに大きいんだ?

 同じ年のクセに!

 デュール・グレイも長身だったが、ヒルブルークときたら、肩幅まで桁違いに広いじゃないか。デュールっていうのは、どいつもこいつも生意気でムカつくヤツらばっかりだ!

「おまえだけ帰れ!」

 エドアルは怒鳴った。

「気がきかないクセに姉上の後について回るだけの厄介者なんか、顔も見たくない!」

 エドアルは後ろから護衛が二人ついてくるのを確かめて、表門へ行った。

 少年はいなかった。

 まだ仕事が終わっていないのだろうか。

 少し待ってみることにした。

 日が暮れてから、少年はやってきた。

「うち来いよ」

 と、少年は誘った。

「オレ、すっかり腹ペコだよ」

「行ってもいいのか?」

 エドアルは訊ねた。

 突然の訪問は礼儀に反する。

「遠慮すんなよ。どうせ一人暮らしでロクなもん食ってないんだろ?」

 少年はエドアルの体を肘でついた。

「勝手に決めつけるな」

「ごまかすなよ。わかってんだ、あんた、ヨソから来たんだろ?」

 エドアルの心臓がドキンとした。

「どうして、それを……」

「あんた、なまってるもん」

 なまってるのはそっちじゃないか!

 呆気にとられている間に、少年は歩き始めた。

 

 

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