城の中に入ると、ますますその印象は深まった。
飾り気のない薄っぺらなドア、安っぽいテーブルと椅子、分厚くて重たそうな皿。
出された食事はといえば、道中で口にしたものより温かい、という程度だった。
「お風呂に入りたいわ」
食事には期待しないことにして、リズは言った。
着の身着のままで飛びだしてきたため、寝間着は埃で真っ黒だった。
「着替えもしたいし、早く寝たい」
デュール・ヒルブルークはテーブルの呼び鈴を鳴らした。
飛びだしてきた使用人と少し話してから、デュール・ヒルブルークは言った。
「いま少しお待ちください。支度に手間取っておりますので」
リズはがっかりした。ここでは、食事だけではなく、何事も期待しないほうがよさそうだ。
「すまぬ。手間をかける」
リュウカが言った。
「とんでもありません。殿下をお迎えできて、私どもこそ光栄です。なにぶん田舎なもので、至らぬことが多く、ご不自由おかけいたします」
「警護のほうは、だいじょうぶなんだろうな」
エドアルが言った。
「街の城門は固めさせております。殿下にも衛兵をご用意しております。ご安心ください」
「お前がつくんじゃないのか? 下っ端にやらせて、ラクしようっていうのか?」
「ヒルブルーク卿はこの街の主だよ。ほかにも仕事があろう」
「それこそ下っ端にやらせればいいじゃありませんか! こんなちっぽけな田舎町と私の命と、どちらが大事なんです!」
リュウカは唇をかんだ。