【第167回】

 

〜 リュウイン篇 〜
第4部 ふたたびリュウイン(中編)
25章 英雄 ……その1

2009.6.24

 

 ヒルブルークの街は喧噪に包まれ、人や馬車をかきわけるように、一行は歩みを進めた。

 エドアルは、馬車の中で小さくなっていた。

 この人混みの中では、敵味方も知れず、暴漢に襲われたとしても身を守るすべはない。

「あきれた。お姉さまが守ってくれてるじゃないの」

 馬車の周りは、リュウカや護衛たちが固めていた。

「誰が裏切るか、わかるものですか」

 エドアルは震えながら答えた。

 城にたどりついても、エドアルは足腰が立たず、リズにすがりつくようにして馬車を降りた。

 汚い、というのが城の第一印象だった。

 古い木造の壁は黒ずみ、床は敷石が露わになり、絨毯も壁掛けも見あたらない。

「王族に、地面を歩かせるつもりか」

 エドアルは大声を張りあげた。

「申しわけございません。ただ今お持ちいたします」

 馬から降りたばかりのデュール・ヒルブルークは、馬番に手綱を渡し、両手を高くあげて叩いた。

「今すぐ敷物を!」

「要らぬ」

 リュウカが鞍上から言った。

「勝手に押しかけたのだ。無用な気づかいだ」

 リズは辺りを見回した。

 貧乏くさい。古くさい。どこがどうとは挙げられないが、落ちぶれた雰囲気だ。

 

 

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