何年かして、王と王妃が死んだ。人づてに事故だと聞いた。
伯母が来て言った。病のため吐血したのが原因だ。責を問われて医師たちが処刑された。
だが、それは表向きの話。
実際には、兄が刺したのだ。
めった刺しであり、翌朝、兄は自室で血まみれになっているところを発見された。
兄は、自分が刺さなければ先に刺されていた、両親は頭がおかしかったのだ、と言った。父はボケが始まって話がちっとも通じず、母は色ボケが始まっていて自分に色目を使って気色悪かった、とも語った。
使用人たちに訊いてみると、そのような事実はまったくなく、原因はたぶん晩餐時に、嫁の来手がないことについてこぼされたからだろうということだった。
『少しは、自分でも見つけて、連れてきなさい』
王はそう言ったという。
王太子妃の死後、臣下の娘に白羽の矢が立ったが、婚礼の翌朝、死んでいるのが発見された。その体は見るも無惨な有様だったという。花嫁は一晩中、兄に乱暴され、殺されたのだ。それは突然死として片づけられた。
次の花嫁候補は駈け落ちをしていなくなった。
その後、一斉に年頃の娘たちはみなバタバタと結婚したし、小さな娘たちは国外に留学した。
困った王は外国に打診してみたが、みな断られた。
そんなわけで、兄は未だ独り身だった。
「跡継ぎがいないのは好都合だわ」
と伯母は言った。
「今のうちに、足固めしておくのよ」
兄が王位について最初に命じたのは嫁探しだった。政は手薄になり、伯母たちはそこへつけこんだ。
「あなたにも働いてもらいます。遠い親類ということにして、パーヴへの留学を仕切ってもらいます。これを足がかりに対外的なセンスを身につけてちょうだい」
国外へ行ける!
何よりのチャンスだった。