【第159回】

 

〜 リュウイン篇 〜
第4部 ふたたびリュウイン(中編)
24章 北方の姫君(三) ……その4

2009.4.29

 

 一ルーニーほどして、伯母が迎えに来た。

 剃髪した妹を見て、泣きながら抱きしめた。

「なんと早まったことを!」

 伯母がさめざめと泣くのを見て、妹は悔いた。

「こんなことになるのなら、早くあの子と娶せるのだった! かわいそうに!」

 伯母は、やはり自分を愛していたのだと思った。それがわかっただけで、もう、じゅうぶんだと思った。

「ところで、子どもは?」

 伯母が訊ねた。妹は人づてに里子に出したと答えた。

「誰に預けたの?」

 伯母は訊ねた。

 信頼のおける人に。尼となっては、もう自分の子は育てられないから、と答えた。

「おまえひとりの子じゃないのよ。あの子の子どもでもあるのだから。どこに預けたの」

 伯母は執拗だった。

 伯母にとっては、かわいい孫で、大事な跡継ぎだもの、当然だわ。

 こんなに心配して、愛してくれるのだから、本当のことを言ってしまおうか。

 でも、もう一つだけ、隣国の王弟に従ってみよう。

「他国に預けましたの。さる高貴な方に事情をお話ししましたら、快くお引き受けくださいましたの」

 伯母の顔が蒼白になった。

 妹の両腕を握りしめ、激しく揺さぶった。

 どこの誰だ、きちんとおっしゃい、どこそこの誰々か、それともこちらかあちらかと、訊ねる口調には殺気すら混じっていた。

 なぜ、蒼くなるの?

 妹は思っていた。

 お礼を言って引き取りに行けばいいだけじゃないの。むしろ、他国を味方につけて、私たちの仲を正式に認めさせたらいい。

 なのに……。

 妹は心に決めた。

 決して真実は告げまい。

 

 

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