従弟たちが発つと、妹の不具合の原因が告げられた。
「おめでたですよ」
尼の医師が固い表情で言った。
「とても危険な状態ですから、安静に」
これで、完全に助かった! と妹は思った。子までなせば、もう誰もふたりを引き裂くことはできないと思った。
半年ほどして、伯父が来た。
従弟を遠い南の国に送ってきたのだという。
妊娠を知ると、堕ろせと言った。
尼の医師がきっぱりとはねのけた。医師だけではなかった。院長をはじめ、尼たちは総出で伯父を追いだした。
伯父は産後落ち着いたころに迎えにくると言って帰っていった。
産み月が近づいたころ、尼たちの悪気のない噂話を聞いた。寝たきりの妹が退屈だろうと思って、尼たちはよく噂話を聞かせてくれた。
「都では、火事があったそうよ。ただの火事じゃないのよ。王さまのお姉さまのお屋敷が焼けたんですって。王女さまが逃げ遅れて亡くなったそうよ」
自分は死んだことになったのか、と妹は安堵した。
死者までは探すまい。伯母は賢いと思った。
だが、次の話を聞いて凍りついた。
「王さまはお怒りになったけれど、その火事ではお姉さまのお子さまやご学友がたくさん亡くなって、もう、誰が誰だかわからないほどひどい有りさまだったのですって。原因は王女さまの火の不始末らしいから、王さまもお怒りをお納めになったんですって」
伯母は学友まで死なせたのか?
噂だもの、本当のこととは限らない。
しかし、不吉な予感がした。
妹は手紙を一通したためた。
「遠いけれど、これを必ず届けて」
髪飾りやドレスの飾りを売って送り賃を作り、早馬に託した。