【第153回】

 

〜 リュウイン篇 〜
第4部 ふたたびリュウイン(中編)
23章 忠誠 ……その15

2009.3.18

 

 何の話か、エドアルにはわからなかった。

 いや。

 薄々気づいていたのかも知れない。

 が、信じたくなかった。

「何の話だ?」

 平静を装って、エドアルは訊ねた。

 一同が、冷たいまなざしを向けた。

 沈黙がおりた。

 燭台の灯りは赤々としているのに、闇がおりたようだった。

 重みを伴った闇だった。

 弟のフュトがにじり寄った。

 エドアルは扉へ足を向けた。

 腕をつかまれた。従弟のシケだった。

 殴られた。

 一発では済まなかった。

 顔、腹、背を殴られ、蹴りを食らわされた。

 フュトとシケと末弟のヴィナスの三人の間でなぶられた。

 三人と領主タランの顔に笑みが浮かんでいるのを、エドアルは見た。残忍な笑みだった。

 為すすべはなかった。

 力尽き、ぐったりと横たわると、ヒプノイズたちは部屋を出ていった。

 行く先はわかりきっている。

 リュウカたちの部屋だ。

 エドアルが運んだワインには、何かよくないものが入っており、体の自由を奪われた女性たちを……。

 何とかしなければ。

 身動きしようとすると、激痛に襲われ、エドアルは身をこわばらせた。

 デュール・ヒルブルークの名を呼ぼうとしたが、腹に力が入らず、か細い声が漏れるだけだった。

 ダメだと思った。

 

 

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