何の話か、エドアルにはわからなかった。
いや。
薄々気づいていたのかも知れない。
が、信じたくなかった。
「何の話だ?」
平静を装って、エドアルは訊ねた。
一同が、冷たいまなざしを向けた。
沈黙がおりた。
燭台の灯りは赤々としているのに、闇がおりたようだった。
重みを伴った闇だった。
弟のフュトがにじり寄った。
エドアルは扉へ足を向けた。
腕をつかまれた。従弟のシケだった。
殴られた。
一発では済まなかった。
顔、腹、背を殴られ、蹴りを食らわされた。
フュトとシケと末弟のヴィナスの三人の間でなぶられた。
三人と領主タランの顔に笑みが浮かんでいるのを、エドアルは見た。残忍な笑みだった。
為すすべはなかった。
力尽き、ぐったりと横たわると、ヒプノイズたちは部屋を出ていった。
行く先はわかりきっている。
リュウカたちの部屋だ。
エドアルが運んだワインには、何かよくないものが入っており、体の自由を奪われた女性たちを……。
何とかしなければ。
身動きしようとすると、激痛に襲われ、エドアルは身をこわばらせた。
デュール・ヒルブルークの名を呼ぼうとしたが、腹に力が入らず、か細い声が漏れるだけだった。
ダメだと思った。