【第147回】

 

〜 リュウイン篇 〜
第4部 ふたたびリュウイン(中編)
23章 忠誠 ……その9

2009.2.4

 

「やっと、追い出すんですね」

 エドアルが言った。

「出ていくのは、私たちも同じだよ」

 食後のワインを傾けて、リュウカは答えた。唇を湿らせてみるものの、飲む気にはなれない。

「今日、宰相から使いが来た。明日はここを発つよ」

「そんな! いきなり!」

「支度をしておきなさい」

「行き先はどこです?」

「今は言えない」

「私にまで秘密ですか? 信用してくださらないのですか?」

 リュウカは答えなかった。

 何と言えばエドアルが納得するのかわからなかった。

「私は行きませんよ!」

 エドアルは言った。

「逃げ隠れするなんて、もうたくさんです! 私は一国の王子なんですよ!」

 ヒプノイズと離れるのはイヤだった。また、一人になってしまう。

「ウルサから婿を迎えるまでの辛抱だ」

「そんなこと、姉上の都合じゃありませんか!」

 リュウカは何と答えればいいのか、しばし迷った。

 リズが口をはさんだ。

「誰のために逃げてると思ってるの! お姉さまはあなたを助けるためにこの国に帰ってきて、あなたを助けるために逃げまわってくれてるんじゃないの! そうじゃなきゃ、今ごろ草原の国で悠々と暮らしていられたのよ!」

 

 

[an error occurred while processing this directive]