「やっと、追い出すんですね」
エドアルが言った。
「出ていくのは、私たちも同じだよ」
食後のワインを傾けて、リュウカは答えた。唇を湿らせてみるものの、飲む気にはなれない。
「今日、宰相から使いが来た。明日はここを発つよ」
「そんな! いきなり!」
「支度をしておきなさい」
「行き先はどこです?」
「今は言えない」
「私にまで秘密ですか? 信用してくださらないのですか?」
リュウカは答えなかった。
何と言えばエドアルが納得するのかわからなかった。
「私は行きませんよ!」
エドアルは言った。
「逃げ隠れするなんて、もうたくさんです! 私は一国の王子なんですよ!」
ヒプノイズと離れるのはイヤだった。また、一人になってしまう。
「ウルサから婿を迎えるまでの辛抱だ」
「そんなこと、姉上の都合じゃありませんか!」
リュウカは何と答えればいいのか、しばし迷った。
リズが口をはさんだ。
「誰のために逃げてると思ってるの! お姉さまはあなたを助けるためにこの国に帰ってきて、あなたを助けるために逃げまわってくれてるんじゃないの! そうじゃなきゃ、今ごろ草原の国で悠々と暮らしていられたのよ!」