【第145回】

 

〜 リュウイン篇 〜
第4部 ふたたびリュウイン(中編)
23章 忠誠 ……その7

2009.1.21

 

「エドアル、食事はもう済ませたのか」

「いいえ」

 エドアルは顔を真っ赤にしたまま答えた。

 悔しさをこらえるのに必死だった。

「では、食事をともにするのはどうかな。食後に話がある。ヨアラシ殿にはすまないが、食後に席を外してもらいたい」

 観客に徹していたヨアラシは、急に水を向けられてぎくりとしつつ、うなずいた。

「噂ついでに訊きたいんだけど、あんた、ヒバ村を手なずけようとしてんだって?」

 リリーがストーブで温めていたパンを配り、エドアルがヨアラシを睨んだ。

「話を聞きたいのだが、うまくいかない」

 リュウカは相変わらず無表情に答えた。

「下々の田舎もんに、何を訊きたいのかね」

 あきれたようにヨアラシは笑った。

「以前、母があの村から訴えを聞いたのだが、事実ではなかったようなのだ。多くの人々を不幸にしてしまい、もう詫びようもないのだが、今からでも改めるのは私の義務だろう。しかし、事実を知ろうにも、なかなか話を聞けなくてね」

「つまらんことを」

 ヨアラシは皮肉に笑った。

 リュウカは静かに訊ね返した。

「つまらないことだろうか?」

「少なくとも、あんたたちお偉方にはどうでもいいことだろうよ。あんたたちときたら、搾りとることしか頭にないんだからな」

 エドアルがひどい形相で睨みつけていた。

 だが、ここではリュウカのほうが偉い。エドアルが何もできないのは、ヨアラシにとって百も承知だった。

「まったくだ。私には何もできない。役立たずだ」

「お姉さまは一生懸命やってるわ!」

「そうですとも。ナントカ村が分からず屋なんですわ!」

 リズとリリーが反論するのを、リュウカは片手をあげて制した。

「言いわけが、なんの役に立つ?」

 

 

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