「エドアル、食事はもう済ませたのか」
「いいえ」
エドアルは顔を真っ赤にしたまま答えた。
悔しさをこらえるのに必死だった。
「では、食事をともにするのはどうかな。食後に話がある。ヨアラシ殿にはすまないが、食後に席を外してもらいたい」
観客に徹していたヨアラシは、急に水を向けられてぎくりとしつつ、うなずいた。
「噂ついでに訊きたいんだけど、あんた、ヒバ村を手なずけようとしてんだって?」
リリーがストーブで温めていたパンを配り、エドアルがヨアラシを睨んだ。
「話を聞きたいのだが、うまくいかない」
リュウカは相変わらず無表情に答えた。
「下々の田舎もんに、何を訊きたいのかね」
あきれたようにヨアラシは笑った。
「以前、母があの村から訴えを聞いたのだが、事実ではなかったようなのだ。多くの人々を不幸にしてしまい、もう詫びようもないのだが、今からでも改めるのは私の義務だろう。しかし、事実を知ろうにも、なかなか話を聞けなくてね」
「つまらんことを」
ヨアラシは皮肉に笑った。
リュウカは静かに訊ね返した。
「つまらないことだろうか?」
「少なくとも、あんたたちお偉方にはどうでもいいことだろうよ。あんたたちときたら、搾りとることしか頭にないんだからな」
エドアルがひどい形相で睨みつけていた。
だが、ここではリュウカのほうが偉い。エドアルが何もできないのは、ヨアラシにとって百も承知だった。
「まったくだ。私には何もできない。役立たずだ」
「お姉さまは一生懸命やってるわ!」
「そうですとも。ナントカ村が分からず屋なんですわ!」
リズとリリーが反論するのを、リュウカは片手をあげて制した。
「言いわけが、なんの役に立つ?」