リュウカが日参するのは、街道から外れた辺鄙な村だった。
山あいの何もない田舎で、村長の家ならまだしも、リュウカが行くのは、山麓のほったて小屋だった。
王女の訪問を住人たちは少しもありがたがらなかった。それどころか、ご馳走も支度せず、目すら合わせようとはしなかった。
リュウカは髪をスカーフで覆っていたが、それでもアーモンド形の黒い眼はどこか異国風で目立った。
どこへ行っても、殿下はお美しい。
と、デュール・ヒルブルークは思った。
リュウカは静かに住人たちに話しかけた。仕事を手伝いながら、辛抱強く話しかけた。
彼らの仕事は、切り株を掘り起こし、固い地面を掘り返すことだった。
護衛の者たちも手伝った。
住人たちの様子を見て、道具をそろえ、荷馬車に積んで運んできた。
住人たちは二頭の牛しか持たなかったが、リュウカの一考は農耕馬を数頭連れてきたので、開墾ははかどった。
馴れない仕事はデュール・ヒルブルークにとって苦痛だった。昼、お茶、夕の休憩が待ち遠しかった。休憩を終えて鋤を持つと、うんざりした。
大きな鋤を馬に引かせるのは、下級の兵士ばかりだった。郷里では自分の土地すら持たず、地主の広大な土地で、地主の馬に鋤を引かせていたという。
デュール・ヒルブルークも試しにやってみたが、馬は思うように動いてくれなかった。
馬を引く者どもは涼しい顔で馬を引き、素手の何倍もの速さで耕し、殿下にもよく話しかけられる。
自分だって、やり方がわかっていれば。ほんのわずかな差ではないか。なのに、あちらは殿下の覚えがめでたく、自分は手にマメを作り、汗水垂らして、大勢の中に埋もれるのだ。
休憩時には住人たちにも飲み物やパンがふるまわれた。
礼も言わずに遠慮なく住人たちは飲み、食べ、懐に入れた。
男だけでなく、女子どもも働き、よく食べた。
だが、リュウカはあまり食べなかった。
やつれてきたように、デュール・ヒルブルークには見えた。
夕方、道具を片づけながら、リュウカは兵たちを一人一人ねぎらった。
デュール・ヒルブルークもまた声をかけられた。このときを待っていた。
「殿下、いつまでこのようなことをくり返すのですか? 私どもはこんなことをするためにお伴してきたわけではありません。殿下をお守りするのが私どもの本分です。殿下もどうかおやめになってください。泥にまみれるのはあの者どもの仕事です。殿下のなさることではありません」
リュウカはうなずいた。
「すまない」