【第133回】

 

〜 リュウイン篇 〜
第4部 ふたたびリュウイン(中編)
21章 亡命 ……その20

2008.10.29

 

 翌朝、ウルサからの客人はヒプノイズを発った。

「城からの迎えなら、途中で会えるでしょう」

 エヴァ=リータは道案内の衛兵だけを必要とした。

 自称パーヴの王妃は、連れていかれることになった。

「ここに残しても、あなたの手にあまるでしょ」

 エヴァ=リータの言う通りだった。

 パーヴとの火種になるばかりで、利点はなかった。

「婿の件は、くれぐれもお願い申しあげます」

「私はただの外交官で、権限はないのよ。伝えるだけは伝えるけど。あとは上の判断だから、悪く思わないでね」

 それから、エヴァ=リータはリュウカの耳元に唇を寄せた。

「首尾よくいったら、あの子を愛人にするのね。命も惜しまず働いてくれるわよ」

 リュウカは答えなかった。

 そんなことは、わかっている。だからこそ、遠ざけたのだ。

 エヴァ=リータは間近からリュウカの顔を見つめた。

「もし要らないなら、私がもらっちゃうわよ」

「ご随意に」

 自分と一緒にいるより、ずっといい。

 陽気に歌いながら、各地を旅する。あの子にあった暮らしではないか。

「即答?」

 エヴァ=リータは笑った。

「あの子はまだ十六だけれど、きっといい男になるわ。後から返してと言っても遅いわよ?」

 本当の年を数えていたのか、とリュウカは少し驚いた。公称では一つ上で、エドアルたちすらダマされていたではないか。

 この人には本当のことを話していたのだろうか?

 それなら、安心だ。

「もし、あの子に会うことがあったなら、よろしく頼みます」

 足を引き、頭を下げた。

 宮廷式の正式な礼だった。

 

 

[an error occurred while processing this directive]