ミチルの執念

 「ちよっと待っててね」

 ミチルと洋輔の部屋に連れ込まれた和美は床の上に座らされると一人にされた。和美の胸は由香里を身代わりに立てたことに対する悔恨の念で溢れていた。もう、自分は教師なんかじゃない。ただの女奴隷として彼らのいいなりになるしかないのだ。和美は自分の取った行動を合理化しようと必死だった。

 不意に由香里の号泣する声と男たちの歓声が上がった。由香里の排泄が始まったのだろう。和美は縛られていなければ耳を覆いたかった。今まで聞いたことも無いような由香里の激しい泣き声を聞きながら和美自身も涙を流している。ここに巣食う悪魔の心を持つ、少年たちの所業に全てを粉砕されてしまった思いを和美は感じていた。

 「終ったわよ。由香里の取り乱し方は激しかったわ」

 ミチルは洋輔を伴って部屋に入ってくると和美に楽しそうに報告する。

 「殺して!なんて叫んじゃって。気が狂ったかと思ったわよ。今夜、一哉と裕司に抱かれれば収まると思うけどね」

 ミチルの言葉に和美は凍り付くような思いがした。心と身体を極限まで追い詰めた上での陵辱を受ける由香里。小悪魔たちの残忍な所業に由香里の生命の危機さえ感じる和美であった。

 「何を考えてるの?先生はこれから私たちと楽しみ合えばいいのよ」

 ミチルは和美の耳に口を寄せて甘い声でそんなことを吹き込むと乳房を隠微に愛撫し始める。和美はミチルのそんな行動に思わず身体を固くしてしまう。

 「先生。辛いなんて思ったら損よ。楽しまなくちゃ」

 和美の裸体を横たえたミチルはスラリと伸びた太腿を撫で擦りつつ、二肢を割り開き、その頂点に息衝く花園にその焦点を合わせてゆく。

 「嫌、これ以上。惨めにしないで」

 和美はむずかるように太腿を閉じ合わせるとミチルに訴えた。女に身体を溶かされた経験の無い和美はとてつもない屈辱感を感じているのだ。しかし、ミチルはうっとりした目つきになると強引に割り裂いたその部分に顔を寄せるとニンマリとした笑みを見せた。

 「これが先生のクリチャンね。前は洗濯バサミに挟んでお仕置きしたけど今日は優しくして上げるね」

 ミチルが陰核を弄び始めると和美は悔しげに唇を噛んだ。しかし、歯の隙間からは小さな呻き声を洩らし、ミチルの愛撫に反応を示している。

 ミチルはもどかしげに衣服を脱ぎ去り、全裸になると和美の裸体の上に逆に折り重なるとその先端を口に含み激しく吸い上げた。

 「あっ、何をするの。嫌、嫌よ」

 緊縛された全裸を揺らして和美はミチルの口先から逃れようと身を揉んだ。しかし、ミチルの全身の重さに妨げられ、その動きは鈍いものとなってしまう。

 「洋輔。先生にしゃぶらせて上げなさいよ。今日は何も食べてないからお腹が減ってるはずよ」

 髪を梳き上げながらそんな事を言ったミチルが再び攻撃を再開すると全裸になった洋輔が和美の頬を突付いた。

 「先生の辛い気持ちを和まそうと俺たちはこんな事をしてるんだぜ。しゃぶってくれよ」

 ミチルが足を開き、和美を跨ぐ形になると洋輔は和美の頭部を自らの太腿に載せ上げ、催促がましくその唇にいきり立った一物を突き付ける。

 ミチルの執拗な愛撫に気持ちの高まりを抑え付けられなくなった和美は甘い吐息を吐くと押し包むようにそれを口に含んだ。

 くなくなと顔を動かし、洋輔を楽しませ始めた和美は全てを忘れ去りたかった。それだけが悲惨な現実を忘れ去られることが出来る唯一つの方法だと自分に言い聞かせた和美の舌捌きはミチルの愛撫に呼応して大胆になり始める。

 「いやーん」

 目前に揺れる大きな尻の割れ目に洋輔が指を這わせるとミチルは大袈裟な声を上げて振り返った。しかし、和美が熱心に洋輔を愛撫している事を目にして満足な笑みを洩らすのだった。恋人であるカップルに翻弄される和美は何も考えなかった。ただ肉欲の赴くままにその身を操られているだけであった。 

 それからどれくらい時間が経過してだあろうか和美は洋輔の上に載せ上げられ騎上位で繋がり、激しく腰を動かしていた。

 「今日の先生ってとても可愛いわ。私たちを相手に本当に燃えてくれるんだもん」

 ミチルは熱く火照った和美の頬にぴったり頬を寄せるとそんな事を言った。そして、たまらなくなったように和美の半開きの唇に口を合わすと激しく舌を吸い上げる。和美も最早、女に弄られているという嫌悪感など無く、快楽を追求する一匹の性獣と成り果て、ミチルと舌を絡めあう。

 縄に締め上げられた乳首をミチルに抓まれると塞がれた口の中で絶叫した和美はこの日何度目かの頂点を迎えた。

 洋輔の身体から滑るように落ち、床にその身を横たえた和美の耳元にミチルが口を寄せた。

 「また、往っちゃったのね。嬉しい」

 汗が浮かぶ額にキスされた和美はうっとりと頷くと目を開きぼんやりとした視線を彷徨わせた。その表情には悲壮感など微塵も無く、男を迷わせる色気が滲み出している。

 傍らではミチルが洋輔の上に跨り、喜悦の声を発している。和美はそれをうっとりとした眼差しで見つめていた。

奴隷会議

 翌朝、工藤は東京に帰っていった。一泊十万円の上客はいなくなった。彼らの休みも残り数日となった。彼らは結論を出さねばならなくなっていた。和美と裕美の処遇である。その日、奴隷を地下室に閉じ込めたまま、彼らはその件について話し合っていた。

 三人を洋輔のマンションに監禁することは可能だった。しかし、学校に行ってるいる間は見張る者がいない。由香里については逃げ出すことも警察に密告することも無いと洋輔も安心していた。だから学校に通わせる予定であった。しかし、和美の場合はそうは行かない。裕美の場合も勿論だ。

 彼らは悩んでいた。

 「ねえ、殺しちゃえばいいじゃない」

 ミチルが唐突に言った。皆、その事を考えてはいたが口に出すのは始めてだった。

 「簡単に言うなよ。俺たちは人殺しまでするのか?」

 洋輔はミチルをたしなめたが名案が浮かんだわけでは無かった。

 「叔父さんは何て言ってた?」

 洋輔は一哉に意見を求めた工藤が処置に困ったら相談しろと言ってたことを思い出したからだ。

 「香港の人身売買組織を知っているって言ってた。若い女は高く売れるっていう話だぜ」

 一哉はいつも悪党ぶりが影を潜めている。虐げ続けてきた和美がいなくなってしまうことに一抹の寂しさを感じているのかもしれなかった。

 「ねえ、名案があるわ」

 不意にミチルが声を上げた。

 「先生に裕美を殺させるのよ。そうすれば簡単には私たちの事を告ったり出来ないわ。教師として学園に行かせても大丈夫よ」

 ミチルの自慢げな話を一同は黙って耳を傾けていた。和美に罪を負わせるのは確かに名案だった。

 「しかし、先生が裕美を殺すかな?」

 一哉は首を傾げてタバコに火を付けた。

 「しなかったら二人ともお陀仏っていのはどう?これなら先生もやるしかないわ」

 悪魔的な笑いを浮かべたミチルの言葉に洋輔は従うしか無かった。

 「先生を連れて来てくれ。決意を聞いておこう」

 洋輔の言葉でミチルと裕司が立ち上がった。一哉は下を向いたままだった。

 程なくして、相変わらずの全裸の和美が前手錠でリビングに引き立てられてくる。和美は洋輔の前に膝を折るように指示された。

 「先生。相変わらず綺麗だね」

 洋輔がそんなことを言うと和美は皮肉っぽい視線を送って、目を伏せた。彼らが何らかの重要な決定をしたのを和美も薄々感ずいていたのだ。

 「もうすぐ、夏休みも終わりだ。ずっとここで先生と楽しみ合いたいけどそれも駄目だ。それで先生にはある程度の自由を与えたいと思う」

 「私を解放してくれるの?」

 「ああ、学校にも行けるし、自由に出歩ける。俺たちが呼んだときにマンションに来て貰えればいい」

 和美は洋輔の言葉が信じられなかった。しかし、和美はそんなことを手放しで喜ぶほど彼らの周到さを知っている。その次の言葉を待っていた。

 「条件があるんでしょう?」

 「ああ、裕美を殺してくれ」

 洋輔の言葉を聞いて和美の表情は一変した。こともあろうに自分に殺人を強要するのとは。しかも、相手はまだ十五歳の少女なのだ。

 「何て言う人たちの。私には出来ないわ」

 和美は即座に拒否した。いくら、解放されると言っても殺人と引き換えにはできない相談だった。

 鋭い視線で自分を見上げる和美の雰囲気に圧倒されながらも洋輔は再び口を開いた。

 「先生をこのまま自由にする訳には行かないんだ。先生が罪を犯せば僕たちも安心して先生を解放できる」

 洋輔の更なる説得も和美は拒否した。涙を滲ませた瞳を開いて洋輔を睨みつる。

 「あなたたち、裕美さんの気持ちになった事ある?監禁されて犯されてその上、殺されるなんてとても惨め過ぎるわ。考え直して、お願いだから」

 逆に説得する和美に過剰な反応を示したのはミチルだった。ツカツカと歩み寄ったミチルは和美の蒼白な頬を平手打ちにした。

 「先生。ちっとも奴隷らしくないよ。私たちの好意を無にしてその上、説教を垂れるなんてさ」

 ミチルは和美の涙に滲んだ瞳を睨みつけながら片頬をゆがめる。

 「先生がやらないなら、裕美に先生を殺させるよ。それでもいいの?あの子やるよ」

 「構わないわ。裕美さんを殺すくらいなら私を殺してよ」

 挑戦的な瞳で言い放った和美にミチルは舌打ちして洋輔の方を向き直った。

 「殺されるのは先生に決定よ。いい?」

 洋輔は致し方なく頷いた。浣腸を施されるときに由香里を身代わりにし、大きな後悔を感じた和美は今度は自分が犠牲になって裕美を助けようと決意したのである。

 「先生の処刑は明日の朝よ。今日はこの世とお別れの先生のために男とやらせて上げるわ。三人の中から誰かを選んで」

 男を選べて言われて和美は恨めしそうな視線でミチルを見上げた。

 「死ぬ前の日くらい静かな一日を過ごさせてよ」

 「駄目だよ。先生にはあの世に行ってからも色狂いでいて貰わないとこっちが安心できないんだ。選ばないなら三人とも相手させるよ」

 恫喝ともいえるミチルの言葉に屈したかのように和美は口を開いた。

 「内村君にお願いするわ。私をこんな運命に落したのは内村君だから」

 皮肉っぽい口調で言い放った和美はミチルの彼氏の洋輔に最後の相手をさせることで一矢を報いた気分になっている。

 ミチルはそんな事には一切お構いなしに和美を縛り上げるとその縄尻を洋輔に手渡した。

 「洋輔。先生を楽しませて上げて。最後なんだからこってりとね」

 階段の下から緊縛された和美が臀部を揺らして二階に引き立てられるのを見送ったミチルは裕司と一哉を呼び寄せ、次の指示を与えるのであった。

野ざらし

 洋輔との最後の行為を終えた和美が緊縛された全裸で階段を下りてくるとミチルがそれを出迎えた。

 「どうだった?先生。楽しかった」

 ミチルに乳房をパタパタ叩かれてからかわれても処刑を宣告されている和美は唇を真一文字に結んで何も発しなかった。これらの連中と口を利くのも億劫に思えている和美であった。

 「先生を明日の朝までやすらかに過ごせる場所にご案内するわ」

 ミチルはそんな事を楽しそうにしゃべり裸のを背中を押して和美を庭に導いた。

 既に陽も落ちて、薄暗くなった庭の片隅で一哉と裕司は穴を掘っていた。

 「ここが先生のお墓になるのよ」

 和美を裸足のまま近くに連れて行ったミチルは穴を指差して笑っている。和美の頬に新たな涙が零れ落ちた。身に纏う一辺の布も与えられぬまま、海からの風を受ける人知れぬ場所で命を断たれる自分の身が哀れに思えてきたのだ。

 「泣いてるのね。先生。それは教え子に弄ばれてこんな場所に埋められるんだからご同情申し上げるわ。これも運命だと思って諦めてね」

 ミチルはクスリと笑って和美の肩を叩くのだった。

 「それにしても穴を掘るのって大変ね。二人とも汗だくじゃない」

 一哉と裕司がパンツ一つになって穴を掘り続けているのを目にしてミチルは言った。二人の腰の高さ辺りまで既に穴は掘られている。

 「この位でいいだろう。先生。入ってみろよ」

 一哉は額の汗を拭って和美に向かって微笑んだが和美は長い髪を風になびかせて微動だにしなかった。

 「さあ、入りなさいよ」

 ミチルに背を押されて穴の淵まで追い立てられた縛られ和美を掬い上げる様に一哉は抱き上げると穴の中に下ろした。

 「そこで座るんだ。先生」

 一哉に肩を抑えられた和美は土の上にぴったりと膝を揃えて正座した。

 「高さは丁度いいわね」

 身を屈めて土手の高さと和美の首の位置を確認したミチルが言うと裕司と一哉が物置の戸板を和美の背後に嵌めこんだ。

 「じゃあ、土を入れるぜ」

 穴から出た和也と裕司は戸板で仕切られた穴の半分に土を入れ始めた。和美の裸体は徐々に土で覆われ、やがて首を残すだけで埋められた。

 足で土を踏み固めて、和美の生き埋めは完了した。

 「明日、こののまま裕美に首を絞めさせて先生を殺したら戸板を外すのよ。先生は自然に後に倒れて土を掛ければ先生のお墓のできあがりって言う訳よ」

 和美の土で汚れた頬をタオルで拭いながらミチルは楽しそうに笑うのであった。

 「虫が寄ってきて顔を刺されちゃ可哀想だから蚊取り線香をつけてあげるね。私たちって親切でしょう」

 ミチルは蚊取り線香を炊くと和美の傍らに置き、立ち上がった。

 「それじゃ、明日の朝までそのままでいてね」

 ミチルは皆を促して家の中に消え、和美は一人にされた。

 辺りは闇に包まれ冷たい風が頬をくすぐった。何か考えていると自然と涙が溢れてくる和美は何も考えまいと心に決めて瞼を閉じた。遠くで波の音が聞こえている。木々のざわめきと虫の声も聞こえている。和美は自然に抱かれながら再び目覚めないことを祈っていた。

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