情念の淵
この別荘の唯一の和室に案内された和美はミチルによって化粧を施されていた。
生まれたままの素っ裸を後手に括られ、正座した和美の顎に手を添えてミチルは口紅を引いていた。
「綺麗にすれば工藤さんも先生に優しくしてくれる筈よ。精一杯甘えて、可愛い女になるのよ」
女生徒に化粧させられ、中年男の餌食に供される自分の身をふと哀れに思った和美は涙を堪えて視線を落した。大きい夜具に二つの枕が載っている。言いようの無い寂しさが和美の胸を締め付け、目尻から一筋、涙が尾を引くとミチルはそれを見つけて笑顔を見せた。
「先生。泣いちゃ駄目じゃない。男はそんな女は嫌いだよ。笑顔を見せてね」
ミチルは和美の涙をティッシュで拭うと頬紅を挿してその出来映えを見やるのだった。
「先生。綺麗になったよ。見てご覧」
手鏡を当てられた和美は化粧した自分の顔を悲しげに見やるのだった。満足に食事が与えられていないせいか頬は幾分こけ、痩せた感はあるがその瞳の妖艶さは以前より明らかに増した印象を和美は受けていた。それは洋輔に監禁されてから連日に亘って淫逆な扱いを受け続けているからに違いなかった。和美は自分の知らない女の目覚めを感じるとその考えを打ち払うかのように頭を振った。
「何をしてるの。先生。もう、泣かないでね」
ミチルの言葉に救われたように顔を上げた和美は諦めたような笑みを浮かべた。
「判ったわ。もう、悲しんだりしない。工藤さんに満足して貰えるのが今の私の務めね」
はっきりとした声音で自分に告げた和美を目にしてミチルは満足げな笑みを浮かべて立ち上がった。
「そうよ。先生。頑張ってね」
ミチルが部屋を出て行くと入れ違いに工藤が室内に入ってきた。
「綺麗になったね。先生。立ち上がって体を見せてくれ」
工藤は夜具の上にどっかと胡坐を組むと立ち上がった和美の全身を嘗め回すように酒ににごった視線を這わすのだった。縄に締め上げられ、その豊満さをより一層強調された乳房、見事にくびれた腰、官能を盛り上げたような臀部、どれを取っても今まで自分が経験した女の中でもトップクラスだと工藤は溜息を付いた。
「畜生、こんな良い身体を一哉の奴が好きにしてたかと思うと妬けてくるぜ」
工藤は独り言を言って苦笑すると和美の裸体にさらに目を凝らした。
「おや」
工藤は素っ頓狂な声を上げて和美の太股の付け根辺りで視線を止めた。
「そこの毛はそんなに薄いのか?」
「それは、剃れたんです」
陰毛の事を問われて和美は首筋まで赤く染め、口篭った。
臭い立つような和美の羞恥の仕草に工藤は官能の芯を刺激されたのだろう。立ち上がった工藤は和美の背後から縄に締め上げられた乳房を優しく揉み始める。
「あいつらに随分、酷いことをされたみたいだな。楽しかった事はあったか?」
工藤が愛撫を強めながら色づき始めた和美の耳元にそんな事を囁くと和美は激しく首を振った。
「辛いことばかりでした。何、一つ楽しいことなんか・・・」
和美は捕われて以来の苦難の日々が一瞬、脳裏をよぎり胸が詰まった。
「そうか。俺が楽しい気分にさせてやるぜ」
工藤は自信たっぷりにそう言うと和美を布団の上に突き転がし、服を脱ぎ始めた。
「どうだ。凄いだろう」
褌一枚になった工藤は後を向いた。その赤銅色の背中一面に般若の刺青が彫られている。若い頃、ヤクザ稼業に手を染めていた頃の名残だった。
「凄いわね」
和美はこんな男にも身体を汚される事に惨めさを感じていた。しかし、運命は容赦なく和美を崖っぷちに追い詰めてゆく。
「こっちはどうだ」
くるくると褌を解いた工藤は正面を向いて、いきり立った凶器を揺らせて和美に迫った。それは黒人の物のように黒光りして息衝いている。和美は恐怖を覚え目の前に突き付けられたそれから目を逸らした。
「なんだ、怖いのか?」
工藤は笑い声を上げると和美の頭を掴んでもう一度それに目を向けさせた。
「さっきの子は中学生なんだろう。それでもこいつをしゃぶって見せたぜ。先生がそんな態度じゃ笑われるぞ。しっかり嘗めてみろ」
工藤に促されると和美は心の中から湧き上がってくる震えを抑え、それに口を寄せる。年輪を重ねているだけにそれは異臭も激しく、和美は駆け上がってくる吐き気を堪えながら丹念な愛撫を続けている。
「どうだ。若い奴の青臭い物とは違って良い味がするだろう」
泣きたくなるのを堪えて屈辱の奉仕を続けている自分に一工藤こんなからかいの言葉を掛けると和美は自棄になったように舌を激しく使い始めた。このまま追い落としてしまえば相手のスタミナを奪うことが出来る。和美の悲しい決断だった。
「おお、凄いな」
思わぬ和美の反撃に工藤も驚きの声を放ったがその心地よさにそのまま任せてしまう。
顔を真っ赤にさせた和美は頬を膨らませ、がっぷりとそれを口に含み、舌を遮二無二動かしている。まるで無常の戦いに挑むような必死な和美の態度に煽られ、工藤は自失してしまう。
舌の上にその迸りを感じた和美は工藤を降参させたことに感激のあまり涙さえ浮かべながら脈打つ一物を咥えながら続々と送り込まれるそれを飲み下していた。
やがて、最後の一滴を飲み下した和美は口を離すと大きく息を付き、布団の上に仰向けに倒れこんだ。
「良かったぜ。先生」
工藤も和美の隣に寝そべると縄に締め上げられた乳房を弾いて満足の笑みを見せる。
「今度は俺が楽しませてやらなくちゃな」
工藤が口を寄せてくると和美は何のためらいも無く唇を合わせ、差し入れられた舌を激しく吸い上げる。和美は積極的に振舞ってこの中年男をキリキリ舞させてやるんだと闘魂のようなものを漲らせていた。捕われ、辱められ、売春婦のような真似事をさせられている和美にとってそれは一種の復讐だったのかも知れない。とにかく和美は物の気に憑かれたように男と相対していた。
二人掛かり
それから一時間が経過していた。最初こそ和美の態度に度肝を抜かれた工藤だったがそこは中年男の狡猾さを発揮して和美を操り始めればひとたまりもない。和美は何度も頂点に押し上げられ、その度に悔し涙を流さねばならなかった。
「なんだ、もう往生しちまったのか」
下半身を小刻みに震わせながら泣きじゃくっている和美を見て工藤は満足な笑みを浮かべて身体を離した。工藤は最初に放出しただけで今でも十分な硬度を保っている。和美の努力は無駄に帰し、情念の波に揺さぶられるだけの存在になっていた。
「お願い。縄を解いて」
両手を拘束されているために受身一方になっている現状を打破しようと和美は哀願した。しかし、工藤は笑って取り合わない。
「先生は気位が高いからな。縄は解くなと一哉に言われてるんだ」
和美はがっくりと首を横に伏せ、工藤がその濡れた裸体に手を伸ばそうとしたとき、ドアがノックされ一哉が顔を出した。
「叔父さん。首尾はどうだい?腹が減ったと思って差し入れ持ってきたよ」
一哉は淫らな空気が蔓延する室内に入ると握り飯と缶ビールが載ったトレイを置いた。
「有り難い。喉が渇いてたとこだ」
工藤は缶ビールに手を伸ばしごくりと喉を潤すとタバコに火を付けた。
「最初は積極的なんで面食らったけどな、俺の手管に掛かっちゃひとたまりもないぜ」
工藤の言葉を聞いて和美が苦戦していると感じた一哉は笑みを浮かべその汗に滑った肌に手を掛けた。
「先生。叔父さんを相手にもっと頑張って貰わないと駄目ですよ」
ひっぺ返すように身を起こされた和美は縺れ髪を後に跳ね上げると虚ろな目で一哉を見た。
「せめて、縄だけは解いて頂戴」
両手の自由があれば工藤に翻弄されるだけの窮地は脱せられると和美はそれだけを願っていた。
「おう、解いてやろう。その代わり一哉も一緒に相手して貰え」
「え、いいの?」
一哉は思わぬ申し出に叔父の方を振り向いた。
「構わねえよ。親父には黙っていてやるぜ」
工藤の言葉に一哉は楽しそうに和美の縄を解き始めた。慌てたのは和美の方であった。二人の男と同時に情交を結ぶことなど和美にとっては新たな屈辱を与えられることに他ならない。和美は必死の眼差しを工藤に向けた。
「お願い。それだけは嫌。もう、我儘言ったりしません。お願い。許して下さい」
「ならねえ。これから朝まで一哉と二人でじっくりとお前の身体を味合うんだ」
ビールを飲み干した工藤は立ち上がると一物を揺らせながら和美の傍らに近づくと座り込みその形の良い顎を手に取った。
「俺は子供の頃から先生って言う奴が大嫌いなんだ。偉そうに子供に色んなことを教え込みながら自分は何の責任も取らない。今日はその先生が相手だからな息子も張り切ってるんだ」
工藤から思いもかけぬ言葉を叩きつけられた和美は押し黙ることしか出来なかった。もう、情欲の淵に沈み込んで彼らのなすがままに操られるしかないと和美は覚悟を決めるのだった。
「よし、先生。キスしてくれ」
縄を解かれた和美の目前に手早く全裸になった一哉が唇を差し出してくると和美は口を合わせねっとりと舌を絡ませ合う。一哉が右手を股間に導くと和美はそれを掴み緩やかな刺激を与えている。もう、彼らの思うがままに操られるしかないと和美の悲しい諦めだった。
「よし、下の口が寂しいだろう。ぶち込んでやるぜ」
工藤は和美を膝立ちにさせると背後から狙いを定め挿入した。口を合わせた一哉に身体を支えられ、工藤の動きにあわせて腰を揺さぶる和美は官能の炎がまたメラメラとはためき始めたのを知覚する。
「よし、俺のもしゃぶらせてやろう」
一哉は仰向けに横になると和美の身体の下に潜り込むと和美の揺れ動く結合部を下から覗き込むことになった。
「叔父さんが出し入れしているところが良く見えるぜ」
「こら、俺だって恥ずかしいじゃないか」
和也にからかわれて工藤はおどけたような声で諭したがしっかりと和美の腰を抱えて激しい動きを続けている。
激しく喘ぎながら和美は真下にそそり立つ一哉の一物を目にすると性の妖気に酔いしれたような表情を浮かべてそれを口に含むと激しく顔を上下させ、一哉を追い落とそうとした。もう、全てを忘れ去りたい一心で和美は官能の炎の中に身を投じたのだ。
「先生。男、咥えながら往生できるなんて幸せだろう」
和美の激しく収縮する臍を突付いて一哉がからかっても和美は動きを止めなかった。官能の嵐に巻き込まれ、今にも頂点を迎えそうであったからだ。
「---」
和美は一哉を含んだ口の中で声にならない悲鳴を放って頂点を極めた。一哉を食い締めないようにギリギリの自意識を保つために和美は必死になって舌を動かしていた。
「よし、いくで」
工藤が激しく腰を動かしてそのまま射精すると、一哉も緊張を解放した。和美は二人の男の欲望を同時に満足させると意識が遠のいていった。
朝の衝撃
「ほら、歩きな」
乱暴に背中を押された和美が和室から出てきたのは朝の気配が辺りに漂い始めた頃だった。元通り後手に縛り上げられた和美はよろけるようにして廊下を歩いて階段を下り始めた。
工藤と一哉は言葉通り、一睡もさせず和美を朝まで痛ぶり尽くしたのだ。
容赦ない彼らの扱いに和美は疲労の極に達していた。一刻も早くかび臭い地下室で疲れ切ったこの身を横たえたい。それだけを願って和美は歩を進めていた。
「待ちな」
工藤に肩を叩かれ和美は階段を下りたところで立ち止まった。一哉が水の入ったバケツを手にして戻ってくるとそれを和美の足元に置いた。
「その上にしゃがみな。そのままじゃ気持ち悪いだろう」
工藤に促され、和美がその上に股を割ってしゃがみ、一哉が手を差し伸べてくると和美は反射的に股を閉じ合わせようとする。
「今更、恥ずかしがるなんておかしいじゃないか先生」
一哉に笑われた和美は思い直したように股を開き、その隠微な掃除に身を任せてしまう。昨夜、彼らはそれまでしなかった中出しを容赦なく行っていたのだ。しかし、和美はそんな事に恐れを抱くほどの余裕は無かった。次々と繰り出される矛先を甘美な襞で覆い尽くし、甘い収縮で立ち向かうだけだったのだ。
「俺の頼もしさが判っただろう」
一哉の指先で内部を掻き回されている和美の冷め切った頬にぴったりと頬を寄せた工藤が官能美を盛り上げた臀部擦りながらそんな事を言っても和美は力無く頷くだけあった。
「さて、終ったぜ。そうだ、先生。おしっこがしたいならそのままやってくれ。トイレに行く手間が省けるからな」
一哉は立ち上がると縛り上げられた裸体をバケツの上でしゃがませている和美を見下ろして言い放った。
和美は恨めしそうな目をして一哉を見上げた。夜通し、痛ぶり尽くした上に追い討ちを掛けるような小悪魔たちの所業に和美は気が遠くなるような思いだった。しかし、疲れ切った和美には羞恥を気に掛ける程、余裕無かった。彼らが望む姿を露呈し、その支配下を一刻も早く逃れることに思いは先走っていた。
「したくないなら、行くぜ」
一哉が髪の毛を引っ張ると和美は掠れた声を出した。
「するわ」
「じゃあ、早く済ましな」
一哉が手を離すと和美は括られた裸体を動かしてバケツを狙い始めた。
「じゃあ、俺も見物させてもらおう」
工藤が興味津々と言った風情で和美の正面にしゃがみ込むとその部分に目を注ぎ始める。
和美はどうでもするがいいとばかりに捨て鉢の度胸を決めると緊張を解き放った。
「ふふ、始めたぜ」
バケツの中に水音が響くと工藤は舌なめずりをして和美の水しぶきとその悔しそうな顔を交互に覗いては満足な笑みを浮かべている。和美はそんな彼らの事など無関係のように屈辱の放尿を続けていた。