祭りの後

 由香里をも巻き込んだ若き野獣たちの祭りが終わったのは夜もとっぷりと更けた頃だった。若い彼らは女に欲望を吐き出しては食べ物を食らい、また、女体に絡みつく繰り返しを何度も続けた。

 三人は満足げな笑みを浮かべながら衣服を身に着け、陸に打ち上げ゛られた漂流物のように身動きしない二人の裸体を眺めている。

 「どうだ、楽しかっただろう。先生、俺は今日、七回も吐き出しちまった。新記録だぜ」

 呆然とした視線を宙に泳がせている和美にそんな言葉を吐いた一哉はその腕を取って引き起こす。急に立ち上がらせられた和美はバランスを崩し、よろめき、その裸体を一哉に受け止められた。

 「どうした。先生。喜びすぎて腰がふらついいてるじゃねえか」

 一哉にからかわれ尻を叩かれた和美はそんなことには何の反応も示さず、人間の感情を消失したような表情を浮かべたまま立ち竦んでいる。

 「先生。と二人でシャワーを浴びて来い。今日のお努めは終わりだ」

 裕司が付き添った由香里と和美を浴室に送り出した一哉は旨そうにタバコを吹かしながらパソコンに向かっている洋輔に声を掛けた。

 「思いの他、うまくいったな。あの身体は一級品だ。思い切り楽しもうぜ」

 「あまり調子に乗るなよ。屈服しように見えてもいつまた暴れださないとも限らない」

 「そうだな。明日はあの小生意気な茂みを剃り上げて泣きべそ掻かせてやろうぜ」

 一哉が残酷そうな笑みを浮かべると洋輔も頷いた。

 「そうだな。心と身体の両方から奴隷らしさを身に付けさせないとな」

 「あはは、面白くなってきやがったぜ」

 一哉は大きく息を吐くとソファに身体を預けてしっかりと目を閉じた。網膜の裏には和美の裸体が乱舞し始める。一哉は苦笑して目を開いた。

 「お前、今日はここに泊まるのか?」

 「ああ、ビデオの編集をしなくちゃならない。明日はまた撮るからのんびりしてられないんだ」

 「じゃあ、俺は帰らしてもらうぜ。お袋がうるさいんだ」

 「いいぜ」

 由香里を監禁してから誰かがこのマンションに泊まって奴隷を監視する事になっていた。洋輔は三日間、自宅に戻らない事になるが致し方ないと思っていた。

 そこへ、裕司が二人の女を引き連れて戻ってきた。

 一哉は立ち上がると強張った表情を崩さない和美の手錠の片方を外し、それを由香里の腕に嵌めた。

 「今日から二人で仲良く寝かせてやる。さあ、入りな」

 二人の背を押して納戸に押し込んだ一哉はそこも外から施錠した。

 「それじゃ、俺たちは帰るぜ。また、明日な」

 洋輔を残し、一哉と裕司は帰っていった。手錠の鍵はその日、泊まる者には持たせない決まりになっている。だから二人は彼らが来るまでお互いに手錠で繋がれることになる。

 洋輔はビデオ編集に精を出していた頃、納戸の中では和美が声を潜めて泣きじゃくっていた。由香里に誘い出され、洋輔の口車に乗ってこの一室に自ら出向いてしまった事を和美は後悔していた。

 「先生。ごめんなさい。私にはどうすることも出来なくって」

 由香里は再び謝った。いくら謝っても謝り足りない、そんな思いに駆られた由香里は涙を浮かべて何度も頭を下げる。

 「いいのよ。あなたの立場も承知してるわ。私が馬鹿だったのよ」

 泣くのを止めた和美は由香里に微笑んで見せた。そんな気丈な和美の態度に由香里はまた涙が込み上げてきてその裸の胸に顔を埋めて号泣の声を放つ。

 「あなたも一人であんな連中に取り囲まれて心細かったでしょう。私がこれからは一緒よ。何とか逃げる手立てを考えましょう」

 和美に背中を擦られて泣いていた由香里は逃げるという言葉を聞いてびくっと身体を震わせた。

 「そんなことをして失敗したら大変な事になります。止めて」

 和美の顔を覗き込んで由香里は声を震わせた。

 「逃げようとしたことあるの?」

 「あります。夜はここには一人しか泊まりません。その時は手錠を嵌めるだけでした。洋輔さんが寝入った隙に玄関まで行ったんです。しかし、ドアチェーンに鍵が掛かっていて出られなくて物音におきて来た洋輔さんに見つかってしまいました」

 「酷い目に合わされたの?」

 由香里はこっくりと頷いて次を続けた。

 「一哉さんに何度も殴られました。下の毛も剃られました。三日間は食事も与えられず縛られたまま犯され続けました」

 言葉を切った由香里はシクシクと再び啜り上げ始める。和美は何の言葉も掛けられずに背中を擦っているだけだった。

 「それからはここに泊まる人と手錠で繋がれて寝るようになりました」

 和美は由香里が落ち着くのを待って口を開いた。

 「あなた、いつからここに監禁されているの?」

 「夏休みが始まってすぐです」

 由香里はもう二十日近くもここに監禁されている事になる。和美はたった一人でこの部屋で暮らしていた由香里の心情を思いやって口を噤んだ。

 「死のうかとも考えました。でも、先生には悪いんですが生きる希望が湧いてきました」

 「そう、少しはお役に立てて嬉しいわ」

 和美は心底そう思った。自分が捕らわれたことにより由香里の孤独感が少しでも和らぐ事に由香里は安心したのだ。二人は姉妹のように寄り添って眠りに落ちていった。

朝の拘束

 洋輔はビデオ編集を朝までやって寝入っていたため一哉と裕司が訪問したことで目を覚した。

 「もう、昼だぜ。奴隷さんもおしっこに行きたくなって腰をモジ付かせてるんじゃないか?」

 一哉に言われても洋輔は気の無い返事をするだけだった。

 「よし、ご機嫌を伺おうぜ」

 一哉は裕司を誘って納戸部屋に入り込んだ。

 和美と由香里は一つの布団に包まっていた。和美は目覚めていたが由香里は未だに寝入ったままだった。

 「おはよう。先生。ご機嫌どうだ?」

 和美は一哉と裕司を見かけると気弱に視線を逸らした。また、陵辱される恐れが和美を臆病にさせている。

 「先生。そんなに嫌がるもんじゃないぜ。俺たちの良さも少しは判ってほしいもんだ」

 一哉が布団を引き剥がすと和美は左手で前を隠した。僅かに残った羞恥心で取った和美の行動を見て一哉は苦笑した。

 「起きるんだよ」

 由香里をたたき起こした一哉は二人を立ち上がらせると居間に出るように促した。

 裕司にロープとバイブレーターを持って来るように命令した一哉はニヤケタ視線を和美に向けた。

 「今日は両手を縛らせてもらうぜ」

 「その前にトイレに行かせて」

 和美は要求を伝えると悔しげに視線を逸らした。昨日のように彼らの目の前でそんな行為を演じることに恐れをなした和美の行動だった。

 「そうだな。今はトイレに行かせてやる。そのままで行って来い」

 「手錠くらい外してよ」

 「駄目だな」

 一哉は視線を逸らしている和美の顎を掴まえると自分の方に向けさせた。

 「先生は油断がならない。両手の自由にさせるわけには行かない」

 一哉に要求を撥ね付けられた和美はそれ以上は何も言わず、由香里と一緒に浴室に向かった。

 「お前、随分、先生に辛く当たるんだな」

 洋輔がソファに身を横たえたまま口を開くと一哉はニヤリとした笑みを浮かべる。

 「俺はあの先生に恨みはないけどな。いかにも自分は美人ですといった態度が気に入らないのさ」

 「そうか、ほどほどにしておけよ。俺たちは別に好き好んででこんな事をしてるわけじゃないんだぜ」

 洋輔は一哉を諭すと身支度を始めた。自宅に戻って食事でもしないと母親がここに押しかけてくるからだ。

 「出かけるのか?」

 「ああ、自宅に寄ってくる。その間、先生と楽しんでな」

 洋輔が出て行くと入れ替わりに和美と由香里が手錠で繋がれたまま居間に戻って来た。

 「すっきりしたようだな。ちよっと細工させてもらうぜ」

 一哉は首を項垂れたままの和美を横目に裕司に合図をした。和美の背後に回った裕司はその豊満な乳房に手を掛けた。

 「な、何をするの?少しはゆっくりさせてよ」

 悲痛な声を上げた和美の顎を一哉は掴んだ。

 「先生は油断がならないから縛る前にこいつを呑み込んで欲しいんだ」

 一哉はバイブレーターを引きつった表情を浮かべる和美の目の前に突きつける。

 「そ、そんな。私はもう暴れたり逃げ出そうとはしないわ」

 「駄目だ。俺は念には念を入れる性質なんだ」

 冷酷な一哉は和美の願いを一蹴した

 「足を開きな」

 漆黒の繊毛の前に武器を突きつけた一哉は上目遣いに和美を見上げた。もう何を言っても無駄と知った和美は悔しげな表情を浮かべながら大きく城門を開く。

 「ふふふ、嫌だとか何だとか抜かししながら濡れてるじゃねえか。先生はよっぽど好き物じゃあねえか」

 一哉は指先を内部に含ませて潤み具合を確かめると片頬を歪める。意地悪い一哉の物言いに和美は一層悔しさが募ったが、眉を寄せるだけであった。

 「うっ」

 遂にバイブレーターが挿入され、和美の肉を不気味な音を立てて抉り始めた。和美は立っているのももどかしいほどの反応を示している。

 「代わってくれ」

 代わって裕司がバイブレーターを操作すると一哉はロープを手にして和美の背後に廻る。

 「手錠を外すけど暴れるんじゃないぜ」

 一哉の言葉に頬を上気させた和美はこっくりと頷くと一哉は由香里と繋がっていた手錠を外した。

 「後ろに手を廻して組み合わせろ」

 後ろ手に廻した腕に縄を掛けられながら快楽の中心点を激しく刺激される。和美は小悪魔たちの自分への警戒の厳重さを思い知った感があった。逃亡など図ったら彼らの怒りは留まることなく自分に降りかかるに違いない。和美の心は慄くばかりであった。

 豊かな乳房の上下にも縄を巻きつかせかっちりと後ろ手に縛りに和美を縛り上げた一哉はその姿を正面に廻って眺めると快心の笑みを浮かべた。

 「先生。似合うぜ。縄で縛ると美しさがより引き立つっていうもんだ」

 そんな事を言って和美をからかった一哉は優美な裸身を背後から抱きしめるとそのままソファに座らせた。

 「もう、十分でしょう。終わりにして」

 また、激しく乳房を揉み始めた一哉に和美は悲痛な声を上げた。

 「ついでだから一度、往かせてやるぜ。先生だって嫌いじゃないだろう?」

 一哉に耳たぶを嘗められ、あっさりと要求を撥ね付けられた和美は涙を飲み込むような表情を浮かべながら瞼を閉ざした。裕司の手にするバイブレーターに操られながら和美は情欲の淵へと沈んでいった。

 もう自分ではどうすることも出来ない。甘美な啜り泣きを織り交ぜながら胎内に発生した炎はメラメラと燃え盛り、和美は悔しくも淫情に敗れる姿を彼らに露呈する事になった。

 一哉の両足によって極端にまで広げられたしなやかな二肢を痙攣させながら和美は頂点を極めた。

 「えへへ。往っちまいやがった。でも、可愛いじゃないか。ここをヒクヒクさせて」

 裕司が責められた後の肉体の変化を嘲っても和美の心には何も響かなかった。陶酔の感覚の中で和美は自分という存在が変ってゆくような思いに駆られていた。

新たなる共犯者

 洋輔がマンションに戻ってきたのは夕方近くだった。その日、一哉と裕司に繰り返し陵辱を受けた和美はここに監禁されて始めての食事を取らされていた。相変わらず後ろ手に縛り上げられたままの和美は裕司の手で食べ物を口に運ばれている。

 「ご機嫌いかがですか?先生」

 洋輔はしゃがみこむと凍り付いたような表情で口を動かしている和美の顔を覗き込んだ。

 「先生は結構楽しんでいるみたいだぜ。さっきは俺の耳たぶに噛み付いたくらいだぜ」

 ソファに寝そべってタバコを吹かしていた一哉が代わって答えた。

 「おお、そうだ。昨日の作品の人気はどうだろな?」

 洋輔はパソコンのディスプレイを目にしてにんまりとした。『無修正・女教師調教日記01』と銘打たれた映像ファイルは共有ソフトに載せられたくさんのリクエストを受付それを消化している最中であった。

 「ふふふ、先生の姿が皆のパソコンに保存されて鑑賞されるんだよ」

 洋輔がそんなことを言っても和美は黙々と食事を続けて、何の反応も示さなかった。そんなことに怯えを見せればこれらの連中が面白がることくらい百も承知の和美だった。

 「昨日のビデオ見せてやればいいじゃないか?」

 「そうだった。主演女優に見せなくちゃね。ディスプレイのスイッチを入れてくれ」

 一哉が液晶の大型テレビの電源入れると洋輔がパソコンを操作した。暫くして画面が現れた裸の和美が足を大きく広げられているシーンからだった。

 「さあ、先生。特等席で見させてやるぜ」

 食事も終えてない和美を一哉は抱き取るようにしてディスプレイの正面に据えた。

 さすがに和美は画面を見る勇気は無い。しかし、一哉は無理やり正面に向けさせ和美に画面の中のあられもないその姿を目撃させようとする。

 「ちゃんと見るんだよ。先生。あんな顔をして俺に入れられてたんだぜ」

 一哉は目を閉じ合わせている和美の乳房を抓って無理強いする。和美は泣き濡れた瞳を開いて画面の中で陵辱される自らの姿に視線を向けるのであった。

 和美の身体を弄っている一哉が不意に肩を叩かれ、振り向くと洋輔がにんまりとした表情を浮かべていた。

 「ミチルがやって来た。ちよっと会って来る」

 「おう、ゆっくりしていいぜ」

 一哉のからかいの言葉を受けた洋輔は部屋を後にした。ミチルは二週間の夏期講座の合宿に参加していたためしばらくぶりの再開だった。和美を恨みに思っているミチルの登場は和美にとって新たな試練となる筈だ。洋輔は胸をときめかせながら公園へ向かった。

 薄暗くなった公園のベンチでミチルは洋輔を待っていた。ちよっと不良っぽいところのあるミチルだがセックスのとき長い髪が邪魔だと洋輔が言えば髪を短くしてくるような気丈な面を見せる彼女は洋輔にとっていとおしい存在だ。しかし、洋輔はミチルのことをそれほど重要には感じていなかった。

 「会いたかったよ。洋輔」

 いきなりしがみつかれて洋輔はびっくりした。二週間ぶりに会うミチルは何か新鮮な感じが洋輔にはしていた。

 「私ね。講習会に行ってる間、洋輔に会いたくて堪らなかった。あの奴隷女と毎日やってると思うと気が気でなくってさ。でも、携帯電話は禁止だし、家にしか電話することが許されなかったの。ごめんね」

 「いいんだよ。気にしなくて」

 「そう、言って貰えると嬉しい」

 ミチルは洋輔に軽く口付けした。

 「ねえ、抱いてよ。そればっかり浮かんで勉強が手に付かなかったよ」

 ミチルは猫撫で声を出して洋輔に擦り寄った。洋輔は苦笑いを浮かべてミチルを見た。

 「お前にとっておきのプレゼントがあるんだぜ」

 「えっ、何、教えてよ」

 プレゼントがあると聞いてミチルの顔が明るくなった。

 「ふふふ、橘和美を捕まえた」

 「えっ、音楽の橘を?」

 さすがのミチルもびっくりしたような声を放った。

 「ああ、ちよっと訳があってな。今、俺の部屋で奴隷にされている」  

 「う、嬉しい。洋輔大好き」

 ミチルは大袈裟に洋輔に抱きつくと更に熱く口付けを交わした。

 「ねぇ、行こうよ。橘の奴を懲らしめてやるんだ」

 ミチルは洋輔の腕を取ってずんずん歩き出そうとする。

 「まあ、慌てるな。逃げやしないから。その前にホテルに行くんじゃないのか?」

 「そんな事、後でゆっくり出来るよ。橘の惨め姿を見てやるんだ」

 ミチル燃えるような瞳を洋輔に向けた。

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