悲しき対面
真の暗闇に閉じ込められている真琴は蓋が激しく叩かれる音で目を覚ました。気が付くと松井がニヤケタ表情で自分を覗き込んでいた。
「そろそろ出番だ。上がってきな」
(また、屈辱に塗れる一日が始る)
真琴はそう思うと穴の中に留まりたい思いが強くなった。しかし、悪魔たちに反抗的な態度を見せれば妹の身に危険が及ぶ。真琴はのろのろとした動作で梯子を上り、松井と塩野が待ち受ける地下室に這い上がった。
昨日の徹との戦いの疲労が色濃く残る真琴の肉体を眺めながら松井は唇を歪めるのであった。
「跪いて、両手を後に廻せ」
かつては屈辱的な命令を受けるたびに怒りの篭った視線を悪魔たちに発していた真琴も妹を人質に取られ、手酷い折檻を受けた今となってはそんな素振りも見せず、おとなしく両手を背後に廻してゆく。
真琴が両腕を拘束されてゆくのを楽しそうに見下ろした松井はしゃがみ込むとその腫れの引かない頬を突付いた。
「今日はここでの便器使用は許さない。お客様の前でやらかして喝采を浴びるんだ。それから朝飯はたっぷりと食っておけ。お仕置きの最中は食う気も起きないだろうからな」
松井はせせら笑うとかっちりと後手に縛り上げた塩野が縄尻を引き、真琴を立ち上がらせる。
「化粧をして来い。恵子頼んだぜ」
松井に言われた恵子が縄尻を受取ると真琴をメイクアップルームへと引き立ててゆく。昨日から全裸の刑を言い渡された恵子の尻と連行される真琴の尻が悩ましく動くさまを見て松井と塩野は顔を見合わせて好色そうな笑いを浮かべるのであった。
一階のパーティールームには客人たちが参集し、昨日、抱いた女の事などを声高に話し合っていた。中でも唯を指名した羽田は皆に質問攻めにあい、苦笑いを浮かべて応対していた。
「皆、楽しかったみたいね」
久美子は三枝の傍らに座るとポツリと呟いた。
「久美子さんは楽しくなかったですか?」
久美子もレズということで麻美を宛がってみたのだがどうやら気に入らなかったのか浮かない顔をしてる。
「レズは難しいのよ。お互い惚れ合ってないとね。男みたいに単純には行かないの一晩程度の付き合いでは無理ね」
「しかし、あなたもお忙しいでしょうから」
「そこで相談なんだけど」
久美子は意味深な笑いを浮かべると三枝に近づいた。
「私、暇なのよ。美容師になれば働き口は見つかるけどやる気が起きないの、そこで、お金なんかいらないから暫くここに置いて欲しいの」
芸能界という世界を知ってしまった久美子は普通の美容師に戻ることに嫌気が差しているようだ。ここならレズの相手に困ることもない。遊んで暮らせると久美子は考えたのだ。
「しかし、何も働かない人間をただ置くわけには・・・」
さすがに三枝は難色を示した。
「働くわよ。女の子たちのメイクも出来るし、彼女たちの調教だってやるわ」
「待って下さい。真琴に対する恨みだけで居て貰っても困りますよ」
「そんなものは今日で忘れるわよ。あの子には私の愛を上げたいとも思ってるの」
三枝は成る程と頷いて見せた。
「判りました。他のメンバーと相談しますから、暫くお待ち下さい。夜の結婚式後にお伝えします」
「有難う。良い返事を期待してるわ」
久美子が礼を言って三枝の傍らを離れた時、地下室から松井に縄尻を取られた素っ裸の真琴が首をがっくりと垂れ、重そうな足取りでパーティールームに引き立てられてきた。
同じ頃、栗山は絵里の部屋に真希を迎えに現れていた。
「嫌、こんな恰好のまま、姉に会わせないで」
スカートを剥ぎ取られ、紙オムツをしている下半身を丸出しにした羞恥に真希は怖気づいている。しかし、栗山はそんな真希の懇願を笑って取り合わなかった。
「お姉さんなんか丸裸で暮らしているんだ。君が少しくらい恥ずかしい姿の方が気が楽だと思うよ」
栗山に背中を押された真希はシクシク啜り上げながら廊下に連れ出された。
真希が階段を下り切ってパーティールームに足を踏み入れた時、ステージ上の真琴はようやっと排尿を許され後手に緊縛された裸身を便器の上に跨らせた時だった。
惨めな晒し者となって恥ずかしい見世物を演じなければならない姉の心境に凍り付くような戦慄を覚えた真希は姉の名を叫びながら栗山の制止を振り切りステージに駆け寄るのであった。
「真希!」
妹の姿を認めた真琴は寸前のところで排尿を思いとどまり、立ち上がって真希を迎えるのであった。
「お姉ちゃん!」
ステージに駆け上がった真希は姉の大きな胸に顔を埋めると声を上げて泣き始める。真琴は妹が曲がりなりにも衣服を身に付けていることに安堵し、涙を流しながら詫びるのだっだ。
「私が馬鹿だったの。お姉さんを許してね」
ステージ上で抱き合う哀れな姉妹を目にしても居並ぶ悪魔たちは新たな生贄の登場に胸のときめき覚えるだけであった。
「さあ、もう、いいだろう」
栗山が肩に手を置いて二人を引き離すと真希が悲痛な叫びを上げた。姉の陰毛が綺麗に無くなっているのを目にしたからだ。
「ひ、酷い」
悪魔たちの残忍さを目にした真希は涙に濡れた瞳で一同を見廻すと溢れてくる思いを止める事が出来なかった。
「あなたたちは人間では無いんですか?姉が何をしたか知りませんがこんな仕打ち、酷すぎます。人間のすることとは思えません」
真希はそこまで叫ぶように言うと腰を落として泣きじゃくるのであった。
「真希。もう、止めて!」
真希の身に危機が迫ることを恐れて激しい声で真琴は叱責した。しかし、三枝はステージに上がると真希の髪の毛を掴み上げ、その泣き濡れた顔を覗き込むのだった。
「まったく、姉に似て、気が強い娘だぜ。何かお仕置きをしてやるか?」
「勝手にすればいいわ。あなたたちは人間の皮を被ったけだものよ」
自棄を起こしたように真希は言い放った。悪魔たちの恐ろしさを知っている真琴は気が気ではない。オロオロした態度で三枝を見つめるのだった。
「妹は何も知らないのです。どうか許して下さい」
「お姉ちゃん。何、慌ててるの?弱気になっちゃ駄目。こいつらにはいつか天罰が下るのよ。そんな卑屈になったらこいつらを増長するだけじゃないの」
身を持って自分を守っていることを知らない真希は髪の毛を掴み上げられながら言いたい放題、三枝を罵倒している。真琴はもう言い返すことも出来ず、俯いて涙を流すだけであった。
「小娘の口を塞いでしまえ」
業を煮やした三枝が命令すると松井が駆け寄り、抵抗する真希の口にガムテープを貼り付けた。
「これで邪魔せずに小便が出来るな」
三枝に放尿を促された真琴は哀願するような目を向ける。
「妹を連れ出して下さい」
「駄目だ。妹にお前が庇っていることを言い聞かせて小便するとこを見せてやれ」
真琴の哀願は三枝によって一蹴された。早くしないと真希を裸に剥くと脅された真琴は自分の真下で栗山に押さえつけられもがいている真希に悲しげの視線を向けた。
「真希ちゃん。お姉さんは自分の命が惜しくてこんな姿を晒しているんじゃないのよ。あなたを人質に取られて、脅されているのよ。だからあなたが暴れてこの人たちの怒りを買うことは私の努力が無駄になることなの・・・」
真琴は懸命になって真希に言い聞かせている。もう隠し立てしてもしょうがない。真実を話して真希を説得する真琴だった。
「私はこの人たちの怒りを買ってお仕置きされているの。おしっこもウンチもこの人たちの前でしないといけないの。だから、だからね。お姉さんを笑わないで」
泣きながら妹に言い聞かせた真琴は堪えきれず嗚咽の声を洩らし始める。
「泣いてばかりいないでとっとと、小便をして見せろ。出ないなら妹にやらせるぞ」
泣いたまま便器に跨ろうとしない真琴に業を煮やした三枝に脅されると真琴は意を決したように足を開いて便器の上に腰を落した。
目前では真希が涙を流しながら自分の姿を見つめている。真琴は耐えられなくなったように顔を背けた。
「真希ちゃん。目を閉じていて!」
叫ぶように言った真琴の股間から水しぶきが立ち上り、便器の中に激しい水音を響かせ始めると三枝は勝ち誇ったように髪の毛を掴み、その悔しさを噛み殺しているような顔を正面に向けさせた。
「真希。よく見るんだぞ。これが俺たちの顔を泥を塗り、大罪を犯した女の末路だ。真琴は一生、俺たちの奴隷で過ごすんだ」
無理矢理、姉の羞恥図を目撃されている真希は悔しさに全身を小刻みに痙攣させながら三枝の顔を睨みつけている。真希にとって怒りよりも姉の身の方が心配だった。おそらく連日に渡って地獄のような責め苦の渦に巻き込まれている姉は死を考えているかに違いない。姉がその辛さに耐えかねて、自ら命を断つのではないかと真希は懸念していたのだ。
「もう、いいんだな?」
放尿を終えた真琴に髪を掴み上げたままの三枝が尋ねると真琴は喘ぐようなの表情を浮かべ頷いてみせる。
「よし、俺が後始末をしてやろう」
淫猥な笑みを浮かべた三枝が自分のあからさまに開かれた股間をティッシュを使って拭い去ると真琴はすくっとその均整の取れた裸体を立たせるとそれまで閉じていた瞳を開いて悲しげな視線を妹に向けた。
「真希ちゃん。この人たちに逆らってはいけないわ。私もあなたも捕われの身なのよ」
声を震わせて妹に訴えた真琴は睫毛を伏せるとシクシク啜り上げ始める。悪魔たちの演出した悲しみの対面は予想以上に真琴の心にダメージを与えている。
「さあ、部屋に戻ろうか?」
栗山に促され、立ち上がった真希は突風のように巻き起こった怒りの衝動を抑えることが出来なかった。栗山の胸に思い切り肩先をぶつけて栗山を転倒させた真希はそのままステージに駆け上がると姉を庇うように三枝と対峙した。
「お姉さんをこれ以上、苛めるのは止めて!私はどうなっても構わないから」
ガムテープが外れた真希は姉が自分を人質に取られ、無残な折檻に遭っていると理解し、姉を救いたい一心の思いを口にしたのだった。
「元気の良いお嬢さんだ。慌てなくても時期が来たら奴隷にしてやる」
「お姉さんを苛めないで」
真希は再び、悲痛な声を張り上げると三枝を燃えるような目で睨み付ける。
「まだまだ、お姉さんには俺たちのお仕置きに遭って貰うんだ。無理だな」
冷徹に言い放つ三枝に怒りをぶつけるように真希はその身体を突進させる。しかし、身構えていた三枝には真希の突進を容易にかわすと足を飛ばして小さな身体を転倒させる。
真希の髪の毛を掴んで身体を引き起こした三枝はその身体を松井に預けると大きく息を付いた。
「こいつのお仕置きは真琴のが済んでからする。素っ裸にして穴倉に放り込んどけ」
真希を仕置きすると聞いて真琴の表情が一変した。今まで、真希を餌食にしないという言葉を信じて辱めに耐えてきたからだ。
「そ、それは約束が違うわ。私を騙すつもりなの?」
眉を吊り上げ、挑戦的な表情を再び見せ始めた真琴に三枝は怒りを覚え、その緊張を高めている頬を引っ叩いた。
「そこの毛まで毟られてる癖に生意気な顔をするんじゃねえ」
頬を張られても真琴は表情を変えなかった。悪魔への怒りに真琴は歯を噛み締めている。
「妹の自業自得さ。俺たちを怒らせるからいけないんだ。お前の約束とは関係ない」
三枝の言葉を聞いて真琴の表情は見る見る曇り始める。このままでは真希が悪魔の洗礼を受けてしまうと真琴は哀願するより仕方なかった。
ステージの上に跪いた真琴は三枝に対して頭を下げた。
「妹の不始末。どうかお許し下さい」
「お姉ちゃん。そんな奴に頭を下げることなんかないわ!」
真希が激しい言葉を飛ばしたが真琴は頭を下げ続けた。
「私に出来ることなら何でも致します。どうか、妹をお許し下さい」
懇願を続ける真琴を見つめる三枝の目が怪しく光り輝いた。その表情は魔王のように変化して哀れな子羊を見下ろすのだ。
「真琴。ではチャンスをやろう。昨日の野郎ともう一度対決するんだ。それでお前が勝ったら、真希には手を付けずに置いてやる。負けたら姉妹仲良く、ここの奴隷になって暮らすんだ。いいか?」
「やります。やらせてください」
どんな小さな望みでも真琴にとって縋りつくしかなかった。三枝の表情が再び醜く歪んだ。
「今度は二人ともノーハンディだ。時間制限もない。それでもいいのか?」
悲壮な表情を浮かべて真琴は頷いた。どんな状況でも戦わねばならないのた。
「負けたらお前が犯されるだけでは済まないんだぞ」
三枝は真琴の苦悩する表情を楽しむかのように何度も何度も念を押している。真琴は人形のように頷き返すばかりだ。
遂に哀れな姉の姿を見るのに忍びず真希が号泣の声を放った。
「妹は連れてゆけ、うるさくて仕方が無い」
三枝の言葉に応じて栗山が腕を取ると真希はそれを振りほどいて真琴の傍らにしゃがみ込んで必死に訴える。
「お姉ちゃん。私の事は気にしないで!」
必死に訴える真希に真琴は俯いたまま頷くだけであった。悪魔たちに運命を翻弄される真琴と真希、真琴の試練はクライマックスを迎えようとしていた。