真琴の愛撫

 「いい加減。目を覚ましなさいよ」

 久美子に乳房を揺すられ、真琴は覚醒した。放尿したまま気を失ってしまったことを思い出した真琴は恥じらいを浮かべ頬を染めた。

 気が付くと真琴は両手の拘束も解れ、布団の上に寝かされていた。

 気を失っている間に真琴は三階に運ばれていた。普段はアトリエとして使われているその場所には布団が敷き詰められ、客人たちがその周囲に陣取っている。

 昨日のリハーサルでは放尿するまでしか知らされていない真琴は別の場所に運ばれ、新たな恐怖を感じ始め、固い表情を浮かべていた。

 エレベーターが開き、三枝と栗山が連れ立って降りてきた。二人は真っ直ぐに真琴の元に近寄ってくる。

 「おお、気が付いたか。まずはサインをして貰おうか」

 三枝は真琴の陰毛の貼り付けられた台紙とサインペンを久美子によって上体を起こされた真琴に突きつけた。

 先程まで自分の身体一部であった黒い塊を目にすると見る見る涙が溢れてくる。妹が捕われていなかっったら自分はとっくに死を選んでいただろうと思うと悔しさも溢れてくる。しかし、それを口にすることも今の真琴には許されないのだ。真琴は震えながらなんとか屈辱のサインを書き終えた。

 「さあ、次は栗山さんにお礼のおしゃぶりをして上げなさい」

 久美子に促された真琴は疲れ切った身体を起こすと栗山の前に膝を折った。

 「先程は助けて頂き、有難うございました。お約束通り、お慰め申し上げます」

 プレイルームでの一件に続き、二度も窮地を救ってくれた栗山に対して真琴は感謝を覚えていた。だから自らズボンに手を掛け、取り出した一物を目にしても嫌悪の感情は湧かなかった。それよりも自分に対して優しい栗山の心情を害しないように精一杯サービスをしなければと思っていたのだ。

 技巧は稚拙だが真琴の愛撫は情熱的だった。咥え込んだ栗山を舌で転がしては吸い上げる。その繰り返しだったが栗山の情感は確実に高まっていた。

 「おいしそうじゃないか?精一杯、尽くしてあげるんだよ」

 久美子は背後から真琴の乳房を揉み上げ、耳元に熱い吐息を吐きかけながら囁いてみせる。彼女自身も真琴の裸体に肉の疼きを覚えているのだろう。自らも乳房を真琴の背中に擦り付けるような仕草を繰り返しているのだ。

 栗山を愛撫することに懸命になっている真琴は気が付かなかったが松井と塩野によって新たなる悪魔が地下室から運ばれてきた。

 徹だった。栗山御殿に移ってからというもの完全に厄介者扱いにされている徹は女と接することも許されず、ひたすら手淫の日々を送っていたのだ。

 目の前に素っ裸の女がいるのを見せられ徹の男は早くも異常な反応を見せているのだ。

 手錠に足枷という徹を前に三枝はこれから行なわれる無残なゲームについて言って聞かせていた。

 「いいか、相手は空手の使い手だ。両腕は縛るが蹴りは強烈だ。十分以内にお前があの女の褌を引き剥がせば好きなようにさせてやる。いいな?」

 徹は三枝の話をろくに聞いていなかった。目の前のご馳走を一刻も早く食べたかったに違いない。目ばかり異様に光る、髭だらけの顔で真琴の姿を一心不乱に追い続けていた。

 栗山は遂に真琴の愛撫に屈して果ててしまった。真琴は眉を寄せて栗山の迸りを懸命に吸い上げると喉に落とし込むのであった。

 「上手だったわよ。さあ、ちゃんと後始末をして上げなさい」

 舌を使って最後の一滴まで汚れを拭いとって口を離した真琴は妖艶な笑みさえ浮かべて栗山を見上げるのである。栗山はこの女が妙にいとおしく思えてきた。しかし、私情は禁物であった。大罪人である真琴は折檻を受けている真っ最中なのである。

 久美子によって立ち上がらせられた真琴を松井は再び後手に縛り上げられてゆく、更に褌まで身に付けさせられ戸惑う真琴の前に三枝が現れた。

 「今夜、最後の余興だ。今までの鬱憤を晴らすほど暴れていいぞ」

 三枝は徹を顎で示した。その伸び放題の髪と髭、異様な緊張を示す男根を目にした真琴は思わず顔を背けた。その原始人を連想させる風体に真琴は途方もない嫌悪を抱いたのだ。

 「あいつと戦って貰う。勝負は十分間だ。あいつが褌を引き剥がしたらお前の負けだ。お前はあいつに犯されるんだ」

 犯されると聞いて真琴の頬に赤みが刺した。そして、その頬を新たな涙が伝わるのを三枝は薄笑いを浮かべて眺めていた。

 「嫌なのか?嫌だったら妹を引き出すまでだな」

 三枝が切り札をちらつかせると真琴は涙に潤んだ顔を上げ、その目を睨み付ける。

 「戦うわ。真希に手を出されて堪るもんですか」

 挑戦的な顔付きを見せた真琴を三枝は頼もしく思っていた。長時間に渡る折檻で心も身体も疲れ果てている筈なのに妹の名前を出すと甦ったような表情を見せる。こういう女ほど苛め甲斐があると三枝は思っているのだ。

 真琴は両腕を拘束され、徹は足枷を付けたままという奇妙なハンディを付けた男と女の戦いの舞台は整い、開始の時を待つばかりとなった。

真琴の対決

 布団で作られたリングの中央に追い立てられた真琴の傍らに三枝が立ち、徹を呼び寄せ、入念な打ち合わせが行なわれている。客人たちは布団の周囲に陣取り、酒を飲みながら最後の余興を待ち望んでいた。

 「それでは始めるぞ」

 レフリーのように三枝はホイッスルを吹くとストップウォッチの動き出した。

 最初に行動を起こしたのは徹だった。足枷があるため、さほど早いとは言えないスピードながら真琴に突進してきたのだ。真琴は横に横に動きながら、徹の隙を狙っている。飛び込んできたときにカウンター的に蹴りを放つのが真琴の理想だった。

 一方、徹は真琴を引き倒し、うつ伏せにして馬乗りになる。これを狙っていた。馬乗りになれば真琴は自分を跳ね除けることが出来ないと思っていたのだ。

 徹は男根を揺らしながら両手を広げ真琴を一角に追い詰めようとゆっくりと迫ってきた。

 真琴は追い詰められてはならじと徹の横を走りぬけようとした。しかし、徹に足を払われバランスを崩してしまう。

 横転した真琴はバックを取られてはならぬとすぐに仰向いて徹を迎え、飛び掛ってきた徹にやみくむもに振り上げた足の甲が玉袋に命中し、一同から笑いが洩れる。

 忽ちにして痛みに苦しみもがく徹を尻目に真琴はすくっとその裸身を立たせ、軽快なステップを踏みながら徹の股間目掛けてキックを繰り出すのだ。

 「化け物、死んじまえ」

 罵詈雑言を吐きながら、攻撃の手を緩めない真琴は鬼気迫るものがあった。それは今まで耐えに耐えてきた鬱憤を一気に晴らすかのような凄まじさであった。

 両手で股間を押さえ、攻撃から身を守る防戦一方の徹の心にも怒りの炎が湧き上がっていた。せっかく女と出来るチャンスを皆の笑い者にされるだけで終わってしまうのはいかにも惜しいものがある。何とか反撃の糸口を探そうと徹は真琴の隙を窺った。

 徹は真琴がショートキックを放った瞬間、身体を回転させた。真琴のキックは空を切り、バランスを崩した真琴はそのまま足を投げ出す形で倒れ込んでしまう。

 このチャンスを逃してなるものかと徹は真琴の左足首を掴むと一気に身を起こした。

 「ああ、何するのよ」

 真琴の悲鳴が沸きあがる中、右足を踏んづけた徹は身体を伸ばして左足を押し出した。真琴は股裂き状態になり、身動きが取れなくなってしまう。

 「へへい、どうだ。どうだ、参ったか」

 徹は涎を垂らしながら、真琴の褌に覆われている股間を覗き込み、更に足を広げにかかる。

 一転、攻勢に移りだした徹に見物人は大きな歓声を上げる。

 既に全身、汗に塗れている真琴は焦り始めていた。このまま体力を消耗させられたら自分の勝機は薄くなる。ならば゛一気の賭けに出なくてはならないのだ。

 徹が反動を付けて股裂きする際、一瞬、左足に余裕が生じる、その時がチャンスだ。真琴はじっとその時を待った。そして、その瞬間は訪れた。

 真琴の足に胸を蹴られた徹はバランスを崩し、踏み付けていた足が外れてしまう。渾身の蹴りで足を払われた徹は横転し、真琴は立ち上がった。

 「糞!」

 布団を手で叩いて悔しがる徹。荒い息を吐きながらもスタンスを取って徹を狙う真琴。見物人たちこの男女の決闘にのめり込み始めていた。

 「五分経過」

 三枝の声が半分の時間の経過を告げていた。後、五分、逃げおおせれば真琴の勝利なのだ。

 三枝はこの戦い、別にどっちの勝利でも構わないと思っていた。真琴が勝った場合には明日、もう一度戦わせる予定だったのである。

 決戦の場では徹も立ち上がり、両者の睨み合いが展開されていた。

 徹は再び、真琴を一角に追い詰め始めた。しかし、真琴も先程の轍は踏まないと横へ横へと小刻みに移動する。両者の間合いはくっついては離れの繰り返しだった。

 「七分経過」

 三枝の声に焦りを覚えたのは徹のほうだった。目の前の飛び切りのご馳走をみすみす取り逃がすのは一生の不覚のように徹には思えていたのだ。

 真琴が横へ動く瞬間、徹はスライディングするように両足を飛ばしたのだ。真琴はそれを避けきれず両者は足が絡まったまま、倒れ込む。

 やみくもに振り回す徹の手が真琴の褌の前部を捕らえ一気に引き寄せる。

 「やめろよ。馬鹿!」

 添い寝をするように臭い息を顔に吹きかける徹に真琴は噛み付くような視線を向ける。徹が腕を廻して背後の結び目に手を掛けようとすると真琴は血走った思いになり、徹の肩先に歯を立てるのであった。

 「イテェ」

 思わぬ反撃に頭に血を上らせた徹は真琴の頬を平手で思い切り叩いてしまう。

 頬を叩かれた真琴は一瞬、気が遠くなった。徹は絶好の機会を逃さなかった素早く真琴を腹這いにするとその滑らかな背中に馬乗りになったのだ。

 (あ、いけない)

 徹の指先が褌の結び目に掛かっているのを知覚した真琴は思い切り腰を跳ね上げる。長期間に渡って拘禁され、ろくに食べ物も与えられていない徹の体重は驚くほど軽く、その身体は見事に跳ね飛ばされてしまう。

 仰向けに体勢を入れ替えた真琴の上に馬乗りになり、鬼のような形相を浮かべた徹はその豊かな乳房を鷲掴みにするとぐいぐい締め上げる。

 「止めろ、触るな!」

 血を吐くような叫びを放った真琴をもう一度打ち叩いた徹は薄笑いを浮かべ、乳房を荒々しく揉み始める。女を感じさせ、抵抗力を奪い、褌を引き剥がすのが徹の作戦だ。

 「いいぞ、もっと責めろ」

 男たちの喝采を浴びた徹はますます気を良くし、全体重で圧し掛かり、乳首を口に含み刺激を与えてゆく。

 顔を真っ赤にさせ、何とか魔の手から逃れようと身を揉む真琴ではあったがこの体勢を跳ね返すのは不可能に近い。このままで残り時間を乗り切らねばならないのだ。

 「八分経過」

 乳首を口に含んだままの徹は片手で真琴の顎を押し上げ、もう片方の手を真琴の背中に廻し、緩み始めた褌に掛けた。

 (いけない)

 真琴は腕を挟みこむように体重を移動させ、徹の手が結び目に届かないようにするのだった。

 「糞、いい加減に諦めろよ」

 相変わらず抵抗を止めない真琴に業を煮やした徹は馬乗りなったまま起き上がると真琴の頬を平手で何度も打ち叩く、もう、狂ったとしか思えない徹の行動に真琴は耐えるしかなかった。

 「残り一分だ」

 三枝の声が飛ぶと抵抗が弱まった真琴を徹はうつ伏せにした。今度は跳ね返されては叶わないと真琴の太腿に腰を落とし、褌の結びに手を掛けた。

 「嫌!嫌よ!」

 激しい声で叫んだ真琴は最後の気力を振り絞り、腰を回転させた。同時に褌の結びは解れ、一本の布と化した。

 横転しながらも徹はその結び目を離さなかった。真琴は今までとは逆に身体に布を巻きつけようと徹の方に向かって身体を回転させる。

 立ち上がった徹は渾身の力を使って布を引き抜こうと必死の形相になった。

 しかし、真琴もぴったりと太腿を密着させ、幾重にも巻きついた布を取られまいと必死だった。

 「糞!」

 真琴の足の方から褌を引き抜こうと体勢を変えた徹の下腹に真琴の狙い済ました足蹴りがヒットし徹は布を離して尻餅を付いてしてしまう。

 真琴はもう立ち上がることは出来なかった。立ち上がれば褌真琴の身体からするりと抜けてしまうのだ。

 再び、徹が布の先端を掴んだ時に三枝は戦いの終わりを告げた。

 「そこまでだ。真琴の勝利だ」

 「おー」

 敗れた悲しみに野獣のような叫びを上げた徹が真琴の裸体に突進すると松井と塩野そして栗山までが手を貸し、その行動を阻止し、手錠を掛けて地下室に連行してゆく。徹は獲物を逃した悔しさに号泣の声さえ放っていた。

 一方、真琴も勝者とは思えぬほど憔悴しきっていた。打たれ続けた頬は赤く腫れ上がり、息も上がっている。最後の一滴の力まで振り絞って真琴は戦い抜いたのだ。

 「よく頑張ったな。今日のお仕置きはこれで終わりだ」

 三枝に声を掛けられた真琴は薄く目を開いて頷くと再び、目を閉ざした。真琴の長くて辛い一日は終わったのである。

 「よし、風呂に入れてから休ませてやる」

 三枝に縄尻を取られた真琴は疲れ切った裸体を立ち上がらせた。褌がするりと自分の身体から抜けても真琴はそれには構わず重そうに歩を進めるのであった。

 三枝は悩ましく揺れ動く真琴の双臀を目を細めて見つめていた。明日も真琴を弄りぬき、難癖を付けて真希を奴隷に落とす。それが済まなければ真琴への復讐は終わらない。哀れな真琴を引き立てながら三枝は闘志を新たにするのだった。

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