羞恥責め

 「さあ、ここだ。入りなさい」

 三枝に促されて素っ裸の忍は監禁部屋に足を踏み入れた。白いタイルで覆われ、照明が明るい部屋は一見、手術室のような印象を忍に与えたが、幾つ物のパイプが走りそれに巻きついている鎖は忍を怯えさせずにはいられなかった。

 「ここで当分、暮らして貰う。おしっこは排水溝に流せばいい。食事は運んでくる。カメラで監視してるからへんな事をすればすぐに判るぞ」

 三枝の説明を上の空で聞いていた忍は一番気に掛かっていることを尋ねた。

 「弘美は、弘美はどこにいるのでしょうか?」

 「弘美は他の奴隷と一緒に過ごしている」

 「お願いです。弘美と一緒にさせて下さい」

 娘の眼前であのような醜態をさらけ出してしまった忍は心が痛んでいた。せめて一緒にいて慰めの言葉でも掛けたかったのである。

 「お前が素直になればいずれ、そういう機会も与える。それまでは我慢することだな」

 三枝にピシャリと拒否された忍は唇を噛む事しか出来なかった。

 「さあ、奥さん。この上に乗っかりな」

 跳ね上げ式の机を下ろした松井が背後から肩に手を掛けると忍は新たな恐怖に顔を引きつらせる。

 「な、何をするんです!これ以上虐めないで!」

 忍は必死に抵抗したが栗山や大野の手が足に掛かるといとも簡単に横抱きにされ机の上に乗せ上げられてしまう。

 「さあ、奥さん、両足を広げて」

 上半身を別のロープで机に固定された忍の足首を掴んだ栗山が言うと忍は隠微な雰囲気が漂い始めた空気に身体を硬くした。

 「奥さんの性能を知っておく必要があるんだ。おとなしく両足を広げなさい」

 再び、辱められると聞いて忍は両足を激しく悶えさせて抵抗した。しかし、男たちが本気を出せば忍の抵抗などはかないものだった。両足を大きく広げられ、人の字型に固定された忍は涙を浮かべて弱々しい哀願の言葉を繰り返している。

 「お願い。今日はもう休ませて。身体がくたくたなの・・・」

 「奥さん。一度、気をやればぐっすり朝まで眠らさせて上げるよ。旦那は単身赴任で奥さんも寂しかったんじゃなかったのかい?」

 松井に哀願をからかわれた忍は悔しそうに唇を咬み、頬を机に押し付け嗚咽の声を洩らし始める。男たちは胸をときめかせながらあけすけに広げられた忍の下半身に視線を集中させる。

 肉の合わせ目から顔を覗かせるサーモンピンクの襞を見つけると男たちは口々に揶揄し始めるのだった。

 「おいおい、とても綺麗な色してるじゃないか、とても子持ちには見えないぞ」

 「余り、使い込んだ感じがしないとこを見るとこの奥さん、仕込み甲斐がありそうだ」

 男たちの言葉を聞くたびに忍は真っ赤に火照った頬を右に左に揺らせながら耐えられないような溜息を付く。その処女のような態度に三枝は満足の笑みを洩らしていた。忍を娼婦のような女に仕立て上げる夢を三枝は抱いていた。

 「あら、まだ、始ってないのね」

 弘美と由希を風呂に入れてから地下室に送り込んだ由里と恵子が顔を見せた。二人とも忍の羞恥責めに胸をときめかせているのだ。

 「奥さん。いい、格好にしてもらったじゃない。好きなだけスパークしてね」

 火照った頬を由里に突付かれた忍は熱い溜息を付くと顔を向けて唇を震わせる。

 「お願い。由里さん。そんな酷いことはしないで、ね。あなたも女なんだから判るでしょう」

 忍は同性の由里に僅かな希望を求めた。しかし、由里の返事はすげないものだった。

 「ふん。若く見えて綺麗だからってお高く止まってんじゃないよ。あんたなんか臓物をさらけ出して何度も往けばいいんだわ」

 「ああ」

 由里の言葉に打ちのめされたように顔を伏せた忍の目からは悔し涙があふれ出し、白木の机を濡らすのだった。遂に忍は俎板の上の鯉同様、料理されるのを待つしかなくなった。

 「それでは始めるか、由里と恵子は奥さんのおっぱいを優しく揉んでくれ」

 広げられた忍の両足の間に胡坐を掻いて座った松井が声を掛けると由里と恵子が左右から忍の愛らしい乳房に手を掛けた。

 「な、何をするの?汚らわしい!」

 同性の手による愛撫の経験などない忍は狂ったように頭を打ち振って罵倒するが二人は愛撫の手を休めるどころか愛らしい乳頭にまで口を付け、激しい調子で吸い上げたりするのだった。

 「うー」

 忍は眉を寄せ、押し寄せてくる情感を何とか払い除けようと躍起になっている。

 栗山と大野も大きく広げられた忍の太腿に手を載せ、隠微な愛撫を開始する。大波に翻弄される小舟のように忍はされるがままに肉の悦びに支配され始める。

忍狂乱

 大きく喘ぎ始め、熱い吐息を吐き出すようになった忍を目にした松井は指先をそっと挿入し、その部分が十分に潤んでいる事を確認してニンマリと笑った。

 「奥さん。もう、ぐちょぐちょだぜ。亭主とは相当してないだろう。たっぷりと楽しみなよ」

 松井はまず指だけを使って忍の肉体を探求する。深く、浅く掘り下げ、内部の天井を指の腹で擦ってみたりする。その度は忍は悔しい反応を示し、松井を喜ばす事になる。

 バイブレーターに取り替えるために松井が指を抜くと忍はカッと目を見開き、必死の眼差しを松井に向けた。

 「も、もう、止めて。これ以上、私を辱めないで」

 「何を言ってるの奥さん。楽しいんだろう。遠慮しないで気をやってしまいなよ」

 「そうだ。由里の言うとおりだ。奥さんはここで奴隷として暮らすんだからこういう事を悦ぶ身体にならないといけないんだぜ」

 乳房を揉む由里に笑われ、松井にからかわれた忍は唇を噛み締めて目を閉ざした。そんな、忍の胎内にバイブレーターが挿入され、激しく肉を抉り始めると欲望の暴走に歯止めは掛からなくなる。

 結婚当初は毎日のように夫に抱かれ、肉の悦びに打ち震えていた忍であったが弘美を出産した頃から、夫と別々の生活が続き、たまに会ってもおざなりのセックスだけで過ごしてきた忍の記憶から肉の悦びはとうに消えていた。

 しかし、悪魔たちの姦計に掛かり、悔しくも身体を燃え立たせてしまっている忍に取って、それは忘れていた記憶を取り戻すに十分すぎるものだった。

 松井の操る武器によって下半身の筋肉を激しく収縮させながら上り詰めて行く忍をこの場でただ一人手を下さず目を凝らして観察している三枝は写真の印象通りの女だと確信していた。貞淑な妻の仮面を剥ぎ取った下には肉欲に溺れる女の姿があると三枝は睨んでいた。正に思い通りの姿を忍は露呈しているのだ。

 激しく突かれるバイブレーターの震動と無秩序に与えられる刺激によって忍は頂点に追い立てられていた。

 (いけない。こんなことじゃ)

 ふと甦った自意識で唇を血が出るほど固く噛み締めた忍は一回目の波をなんとか乗り切った。しかし、悪魔たちの攻撃は弱まるどころかますます激しさを増してくる。

 「もう、少しで往生しそうだよ」

 忍が切羽詰った息を吐き出し始めたことに気が付いた由里が声を掛けると松井は責めに拍車を掛ける。

 「あっ、往く、往く、往いっちゃう〜〜〜」

 遂に激しい波に巻き込まれた忍は絶叫のような叫びを上げて頂点を極める。その瞬間、全身の血が一点に集中するような錯覚を覚えた忍は次にその血が一気に噴出するように身体中がカーと熱くなった。

 「あ、あ、あなた〜〜」

 夫に訴えるように一声、叫んだ忍は全身の筋肉を緊張させ、大きな波に飲み込まれた。

 瘧に掛かったように頬をブルブル震わせ、頂点を彷徨っていた忍はやがてがっくりと首を横に伏せた。悪魔たちの手管により、悔しくも忘れていた肉の悦びを思い出さされた忍はうっとりしたような表情を見せて快楽の余韻に浸っている。

 男たちは忍が頂点を迎えた事により、ほっと息を付いてその激しい反応振りを口々に揶揄するのだった。

 「凄い、乱れようだったじゃないか。よっぽど男に飢えてるみたいだな」

 「なんか、吸い付いたら離れない感じでした。これは掘り出しもんかも知れませんよ」

 大野が未だに痙攣を示す忍の下半身に目を注いで言うとようややっと矛先を収めた松井も楽しそうに笑うのであった。

 男たちの卑猥な会話も全身の血が熱く煮えたぎってしまった余韻に浸っている忍の感覚を通り過ぎて行くだけであった。セックスすること自体久々の忍は思いも掛けぬ連中の手によって肉の悦び呼び覚まされてしまったのである。

 「奥さん。目を開きなよ。完全に往ったんだろう」

 由里に頬を揺さぶられた忍は潤んだ瞳を開くと恥ずかしそうに頷いてみせる。しかし、それは自分が悪魔たちの手管によって淫情を極めてしまい、そのあられもない姿をはっきりと晒してしまうという現実に引き戻され、忍の表情は見る見るうちに悲しく曇り出す。

 「まぁ、凄く悦んだのね」

 見事に城門を打ち砕かれ、その痕跡を晒している忍の下半身を目にした由里はティッシュを取り出すと机の上に身を寄せた。

 「可哀想だからお掃除してあげる。うふふ、寂しかったのね。奥さん」

 由里に意地悪な言葉を吐かれながら情欲に塗れた肌を拭われる悲しさに忍はシクシクと啜り上げ始める。悪魔たちによって完膚なきまでに叩きのめされた忍はこれからの日々の事を考えていた。女として人間としてどこまで自分が彼らのいたぶりに耐えられるだろうか?忍の心は震えは止めようとしても止められるものではなかった。

 「さあ、終わりよ。もう、一回、往って見ましょうね。奥様」

 由里に逞しい太腿を叩かれても忍は拒否したり、哀願の言葉を吐かなかった。彼らのなすがままにこの運命を委ねるしかないと悲しい決意を固めた忍であった。

朝の決戦

 翌朝、栗山は祐子と遅い朝食を摂っていた。忍の性能テストの後、祐子を明け方近くまで抱いていた栗山は寝坊してしまったのであった。

 「奥さん。今日も綺麗ね。旦那さんに愛されて幸せでしょう?」

 祐子は由里にからかわれても何の反応も示さず注がれたスープを口に運んでいた。栗山と一緒の時の食事は普段食べさせられている奴隷食とは比べ物にならぬほど豪華なので食欲も湧いてくるのであった。

 三枝らこの屋敷の連中は昨夜の疲れも見せず、運ばれてきた檻の組み立て作業を物置で行なっており、その音が食堂まで響いてきていた。

 「どんな感じだい。この奥さんの新居は?」

 「なんかとても狭い感じよ」

 檻の感想を問われた由里は答えてから歯を出して笑って見せた。祐子はそんな話に耳も貸さず与えられた食事を黙々と平らげていた。

 食事を終えると祐子を引き連れた栗山はモニタールームに顔を出した。檻を組み立て終えた三枝が身体を休めている最中であった。

 「すいません。お手伝いできなくって」

 「何の男手は有りますから気にしないで下さい」

 三枝は笑って見せ、傍らにあった忍のハンドバッグを取り上げた。

 「この中から金が出てきました。今回の一件は栗山さんのご尽力無しには成し遂げられないものですからお納め下さい」

 それは忍の舞踊教室の今月の月謝だった。三十万近くが入った封筒を三枝は栗山に手渡した。

 「これはそのまま寄付いたします。この屋敷の運営に使って下さい」

 「そんな、栗山さんには毎月、運営費を出していただいてますから」

 栗山は祐子の飼育料として三十万円の金を毎月拠出しているので三枝はそれを固辞しようとした。しかし、栗山は無理矢理封筒を押し返した。

 「奴隷たちに新しい褌でも新調してやって下さい。そうだ、Tバックがいいですね」

 「そうですか?有難うございます」

 三枝は慇懃に礼を述べると金をポケットにねじ込んだ。これだけの奴隷を抱えていられるのも栗山というビックスポンサーがいるからに他ならないのが現状であった。

 「もうすぐ奴隷たちの振り分け対決が始ります。ご覧になりますね?」

 「もちろんです」

 栗山が物置に入ると地下から奴隷たちが次々と運ばれているところだった。真新しい檻が3個不気味に並んでいるため物置は狭くなった感じがした。

 祐子は一列に並んだ奴隷たちの中に良美を発見するとなりふり構わず走り寄るのであった。

 「良美さん。元気だった」

 「お、お姉さま」

 懐かしさと嬉しさが交錯する中、二人は身体を密着させて涙を流し合っている。

 「君はここに並ぶ必要はないんだ」

 栗山が祐子の背中に手を掛けて二人を引き離すと祐子は悲しげに良美の名を呼んだ。二人の短い再会はあっという間に終わった。

 「君は今日からここで暮らすんだよ」

 檻の扉を開いた栗山は手錠を外した祐子を中に押し込み、鍵を掛ける。檻は一畳程度のスペースで高さは祐子の背よりも低かった。左から祐子、徹、そして忍を収容する予定なのだが当面、忍は折檻部屋に三枝は監禁するつもりだった。

 「あら、便器は入れなくて良いの?」

 「いんだよ。僕がいる間は僕がさせるし、いない時はこの前みたいにするから」

 栗山が平然と答えると由里は成る程という顔付きになった。

 徹が最後に地下室から出され、天井から伸びるロープに吊り下げられると決戦の舞台は整った。

 由里は一列に並んだ奴隷たちの前に立つと厳しい目をして彼女たちを睨みつける。すっかり、準奴隷としての貫禄が身に着いた由里であった。

 「今日から規則が変わります。地上に残れる奴隷は二人だけになります」

 女たちの間から悲しげなどよめきが聞こえたが構わず由里は続ける。

 「地上奴隷は私たちの手伝いをしてもらいます。着る物もTシャツが許されます。まず、パンティを穿いているものは脱いで下さい」

 地上組で栗山から贈られたパンティを身に着けていた恭子と絵里はそれを脱いで恵子に渡した。

 「今日の競技は徹を発射させた者の勝です。一分間でリレーして徹をしゃぶったり手でコイたりして発射させたものが勝ち抜けです。二回やって、二人が地上に残れます。順番は年令の高い方からです。並び替え!」

 由里の号令で美加子、良美というように並び替えを行なった奴隷たちは足まで厳重に縛られた徹の前に整列した。

 松井がストップウォッチを手に傍らに立つと世にも無残なロシアンルーレットが開始された。皆、地上組に残ろうと必死になって徹を愛撫している。檻の中からこの世のものとは思われぬ狂乱の光景を目にした祐子はいたたまれなくなったように顔を伏せてしまうのであった。

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