翻弄される母子
太腿をぴったりと密着させ身を守る最後の盾を守るようにして羞恥に全身を震わせる忍の完璧と言って良い裸体を前に男たちは溜息を付いていた。ミルクを溶かしたような暖かそうなきめ細かな肌、くびれた腰、むっちりとした太腿、どれもが男たちには完璧に思えてくる。取り分け、三枝はビーナス像がそこに出現したような錯覚さえ覚えている。長年、夢に見ていた裸体がそこにあった。そのビーナスをこれから思いのままに扱えると思うと三枝の胸は異様に昂っている。
「Ｔバックに足袋は似合わない。取ってしまえ」
三枝の命令で恵子と由里が足袋のこはぜを外しに掛かっても忍は抗いの素振りも見せなかった。羞恥に塗れて忘れていた尿意が再び忍を悩ましていたのだ。
「ねえ、お願い」
「なんだい。奥さん」
初めて自分に対して気弱な言葉を吐いた忍に由里はニンマリと笑った。散々毒づかれた由里は忍が完璧な身体の持ち主であることも呼応して敵意を抱いていたのである。
「ト、トイレへ行かして下さい」
恥ずかしそうに訴える忍を見て、由里の快感は加速する。新たな攻撃材料を見つけたたことが由里には愉快だったのである。
「奥さん。奴隷にトイレの使用は許されてないのよ。ここでして貰うしかないわね」
楽しそうに自分を見つめる由里に忍は唇を噛み締めた。このような野卑な連中の前でそんな姿を露呈する自分を想像するだけで忍は息が止まりそうだった。
「あら、失礼。まだ、Ｔバックを外して無かったわね」
茶目っ気を出してそれに手を伸ばそうとする由里を見て忍は思わず頭に血が上ったのだろう。思わず片足を跳ね上げた忍は由里の腹部を蹴飛ばしてしまう。
「畜生。やったね」
由里が打ち掛かろうと身構えるのを三枝が宥める。
「いきなりそんなものに手を出されては奥さんも頭に来るだろう。弘美を連れて来い」
不満げな由里を遠ざけると三枝は屈辱に身を震わせる忍に近づいた。
「奥さん。暴れちゃいけませんよ。おしっこがしたいのなら素直にしてないと」
三枝のネチネチとした喋り方に虫唾が走る思いを感じた忍はそれまで溜まりに溜まった鬱憤を一気に晴らすかのように口を開いた。
「あなたたちは悪魔だわ。女をこんな目に遭わして喜ぶなんて変態よ」
三枝は目に涙を溜め悪態をつき続ける忍を怒りもしないで眺めていた。いずれも、この女も自分の前にひれ伏して許しを請うのだと三枝はゆとりのある表情を浮かべている。
「あっ」
忍は足元に泣きじゃくっている弘美が連れて来られると小さな悲鳴を上げた。余りの羞恥に遭わされていたため弘美の存在を忘れていた忍であった。
三枝は蹲った弘美の髪の毛を掴むとぐいと上を向けさせた。
「お母さんはなおしっこがしたいと言っている。お前の手でこの年に不釣合いなＴバックを脱がしてやれ」
母親の下着を脱がせと命令され、弘美は首を激しく振った。母親を屈辱の谷底に自ら突き落とすことなど弘美に出来るわけも無い。
「母親が素っ裸になるのに娘がパンツを穿いてたら不釣合いだから脱がしてるぜ」
「あっ、嫌」
松井の手がパンティに掛かると弘美は激しく抵抗し始めた。母親の目の前で全裸の姿を晒すのが余程辛かったのだろう。しかし、頬を殴られ、弘美はパンティを奪われてしまう。
目の前で素っ裸に剥かれた娘が泣き崩れているのを目にして忍も黙っていられなくなった。このまま、弘美が命令に逆らっていればどんな恐ろしい目に悪魔が遭わせるのか気が気ではないのだ。
「弘美ちゃん。お母さんのパンツを脱がして頂戴。これ以上、酷い目に遭うのを見てられないわ」
母親が自分を庇うために自ら屈辱に飛び込もうとしているのを目にして弘美は再び涙が溢れてきた。
「それ、母親が頼んでるんじゃないか？脱がせてやんな」
松井に腰を蹴られ、手錠を外された弘美は溢れそうになる涙を堪えて母を見上げた。
「お母様！」
「いいのよ。弘美ちゃん。私はあなたより強い筈よ。どんな辱めに遭っても負けないわ」
軽く伏目になりながら静かに話す母の決意を聞いた弘美は震える手でＴバックに手を掛けると一気にそれを足元まで引き落とした。弘美はそんな姿になった母を正視できずそのまま床に倒れこむと号泣の声を上げるのであった。
忍は波打つ全裸の娘の背中を見ながら涙を流していた。悪魔たちに翻弄される母子の苛酷な運命は始ったばかりであった
忍の号泣。
三枝は改めて全裸となった忍の姿に溜息を付いた。それまでＴバックに隠されていた箇所から現れた魅惑の繊毛は煙立つように忍の下半身に貼り付き、三枝にこの女体の素晴らしさを伝えていた。
「よし、お前の仕事は終わったぜ。後ろへ行って休んでろ」
松井は起こした弘美を由里に引き渡すと改めて全裸に剥き上げられた忍の全身に粘い視線を送った。とても四十近い女に見えないその姿に松井は目を瞠ると同時に犯してやりたい欲望を感じるのだった。
娘が遠ざけられ、全裸にされた羞恥を感じ始めた忍は男たちの視線を痛いほどその部分に受け、項垂れてしまう。しかし、限界に近づきつつある尿意は容赦なく忍を苛み始めている。
「さあ、さっぱりしたことだし、おしっこをして貰おうか？奥さん」
松井は真新しい便器をぴっちりと揃えた忍の足元に配置した。
「しますから、縄を解いて下さい」
それに悲しげな視線を送っていた忍が意を決したように言うと由里が再び、しゃしゃり出てきた。
「奥さん。奴隷はね縛られたままでもおしっこをしなくちゃいけないんだよ。そうだ、この奥さん。私たちの事を鬼とか悪魔とか言いたい放題だったからもっと恥ずかしい格好でさせようじゃない」
ほくそえむ由里がとんでもない事を言い始めたので忍は慌て始める。
「します。しますから。そんな格好をさせるのは止めて」
忍が自分の提案した羞恥の図式に恐れを抱き始めた事に気が付いた由里は意地悪そうな視線でその今にも泣き出しそうな顔を睨みつける。
「じゃあ、あたしたちに謝るんだよ。生意気な口を利いて申し訳有りませんでしたってね」
由里の射るような視線に蛇のような執念深さを感じた忍は心が慄いた。しかし、その言葉を口にしないわけには行かなかった。
「生意気な口を利いて申し訳有りませんでした」
言い終わらない内に忍の目から屈辱の悔し涙が見る見る溢れてくる。小娘同然の女に詫びを入れなければならない非情さに忍の胸はキリキリと痛んでいた。
「その言葉、忘れるんじゃないよ。今日はおしとやかにしゃがませてやるよ」
由里は得意満面になって言うと松井が天井から伸びるロープから忍を切り離した。
その場に後手に縛られた裸体で膝を付いてしまった忍に再び、便器が押し付けられる。
「その上に跨って、シャーとやっちまいな。奥さんはこれから色々予定があるんだ。早く済ませてな」
忍は再び、便器に悲しげな視線を落としていたががて意を決したようにその上に跨った。しかし、忍が排尿すると見て取った男たちが自分の周囲に集結し始めるとその決心が鈍り始める。
「お母様・・・」
栗山に首根っこを抑えられた弘美が間近にいることに気が付いた忍は心が凍った。娘の目前にだけはこんな惨めな姿を晒したくない忍であった。
「娘をここから連れ出して下さい」
最後の哀願を口にした忍への返事は由里の平手打ちだった。
「奥さん。こっちのすることにいちいち文句は言わせないよ。ここでするのしないの？はっきりしな」
「お願いですから。娘の前でだけは勘弁して下さい」
更に哀願を続ける忍に業を煮やした由里は便器をいきなり蹴飛ばした。
「もう、許せないよ。思い切り恥ずかしい格好でさせてやるよ」
由里の命令で再び立ち上がらせられた忍は自分の考えが甘かったのを悟った。しかし、もう、詫びを入れても遅かった。
忍が天井から垂れるロープにその身を支えられると由里はもう一本、天井から伸びるロープを忍の左足首に巻き付かせた。
「このローブを引き上げたら、奥さん。どんな格好になると思う」
由里に言われて忍の表情は恐怖に歪んだ。
「や、やめて。そんな恐ろしい事」
泣き叫ぶように忍が悲痛な声を上げると同時に松井が壁際のスイッチを押した。
「ああ、何ていうことをするの。ひ、酷いわ」
足が徐々に引き上げられてゆくと忍は涙を流しながらそんな言葉を吐き、虚しい足掻きを繰り返すように足を悶えさせた。しかし、無情にも足はどんどん宙に向かって突き上げてゆく。
忍の片肢が頭の近くまで引き上げられたところで松井はスイッチを止めた。
遂に忍は日本舞踊で鍛えたスラリと締まった片肢を大きく跳ね上げるという言語を絶する姿勢で排尿を強制されることになった。
「許して、許してよ・・・」
涙ながらに弱々しい哀願を繰り返す忍の髪の毛を掴んだ由里はその泣き濡れた顔を覗きこむ。
「あんたが駄々をこねるからこういう事になったんだよ。よく肝に銘じておきなよ。奥さん」
由里は勝利に酔うように忍に叩きつけると自分が蹴飛ばした便器を手に取るとそれを泣き崩れている弘美の手に渡した。
「これでママのおしっこを受け止めてやるんだよ。いいね」
嫌がる弘美を松井が引きずるように忍の跳ね上げた足の下に移動させると忍の強制排尿の舞台は整った。
しかし、弘美は便器を抱えて泣き崩れたままだ。このままでは忍の排尿を受け止めることが出来ないと見て取った由里は弘美の髪の毛を引き掴んだ。
「ちゃんと受け止めるんだよ。一滴でも洩らしたらあんたもおしっこさせるからね」
由里に脅された弘美は泣くのを止め、忍の顔を覗き見た。
「ひ、弘美。お母さん。笑わないで、笑わないでね」
遂に、このままの姿勢で排尿する決心を固めた忍は弘美に最後の言葉を告げると激しく泣き始める。
突然、吊り上げられた忍のしなやかな足が痙攣した。
忍の身体から水しぶきが立ち上がるとどっと男たちの間から歓声が湧き上がった。
「うぁ、弘美。しっかり受けて」
放水を始めた忍を見て由里がはしゃぐような声を上げたが予測しない方向からの排出に弘美は母の小水を身体に浴びてしまう。それでも健気に弘美は母の放出する水しぶきを便器に受け止めていた。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
泣き声を途切らせながら真っ赤になった頬を震わせ、忍はうわ言のように弘美に詫びるのだった。
三枝は泣き喚きながら放尿を続ける忍の姿に釘付けになっていた。絶対、自分の妻になる事を承諾させてやると三枝は今一度、心に誓うのであった。
忍の泣き声が小さくなると同時に吹き上がっていた水流も弱まった。忍の屈辱の時間は終わったのである。
足を下ろされた忍は元通りぴったりと太腿を密着させ、肩を震わせ啜り上げている。
そんな忍の姿を胸がすく思いで見つめていた由里は泣き崩れている弘美の傍らから便器を取り上げるとそれを忍の眼前に突き付ける。
それを目にした忍ははっとして目を逸らせる。
しかし、由里はそんな忍の態度を許さず、髪の毛を掴むと無理矢理、便器に視線を向けさせる。
「自分の身体から出したもんだよ。嫌だ嫌だと言いながら随分、出したじゃないか」
由里は無抵抗になった忍を言葉でいたぶっては溜飲を下げている。忍の瞳から流れ落ちた涙が便器の中に落下するのを目にした由里は満足したのか便器を置き、後始末に取り掛かかる。
天井からのロープからも切り離され、がっくりと膝を落した忍の胸に弘美が飛び込んで泣きじゃくると忍の目にも涙が再び溢れてくる。火中の栗を拾うつもりで悪魔の罠に自ら飛び込んだ忍だったが弘美を勇気付けるどころか苦しめる存在に自分がなっている事に歯噛みする思いだった。
「お母さんを許してね」
弘美の頭に頬を摺り寄せ、忍は何度も詫びを入れるのであった。
「さあ、もう、いいだろう」
三枝は二人を引き離すと弘美を由里に託した。
「母親のおしっこを浴びてしまったんだ。風呂に入れて休ませてやってくれ」
弘美と由希が由里と恵子に囲まれてアトリエを後にすると忍はがっくりと首を垂れた。長時間に亘り、悪魔たちの折檻を受けていた忍にも疲労の陰が色濃く出ている。しかし、悪魔たちはまだ忍を解放しようとはしなかった。
「さあ、奥さん。寝場所に案内するよ。立ちなさい」
忍が立ち上がると三枝はその滑らかな肩を押した。
身を覆う一辺の布も許されぬ素っ裸を後手に縛り上げられた忍は男たちに取り囲まれて階段を下りている。忍は頬を硬化させたまま、悪魔たちのなすがままに従っている。
三枝は目前の忍の白い尻が揺れる度に目を細めては隠微な笑みを浮かべていた。
階段を下りた一堂はそのままリビングを抜け裏庭に辿り着いた。
「あそこに見える建物がお前の監禁場所になるのだ」
三枝が先程まで祐子が監禁されていたプレハブ小屋を指差しても忍は表情一つ変えなかった。悪魔たちのいたぶりに疲労の極にある忍は一刻も早く彼らからの解放を願っていた。
「そのまま、降りなさい」
男たちの履物は用意されたが忍は裸足のまま庭に下りると土の上を歩かされた。
晩秋の深夜の風が忍の後れ毛をそよがせる。身に染む寒さと惨めさが全裸の忍に襲って来た。それ以上に忍の心には寒風が吹きすさんでいた。