悪辣な罠

 折檻部屋に監禁されたままの祐子と良美は肌を寄せ合っていった。

 下半身がびしょ濡れになっている二人は下から込みあがってる寒さとの戦いも加わり、心細さが募るばかりだった。

 「姉さん。私たち、どうなるの?」

 良美が訴えても祐子は答えることが出来なかった。栗山と別れて5年、全てが決着が付いていたと思っていた相手に誘拐され、辱めにあっている今、先が見えないのは祐子も同じだった。

 「私が守ってあげる。良美さんをあいつの好きにはさせないわ」

 祐子は自分の身を犠牲にしても良美の純潔だけは守り通そうと悲壮な決意を固めていた。そして、いつかは助け出される日が来るとそれだけを願うようになっていた。

 鍵が差し込まれる音がして扉が開くと祐子は良美と手を握り合って身体を固くした。

 「おとなしくしていたようだな」

 栗山に続いて二人の中年男が姿を現したことに祐子ははっとした表情になった。そのうちの一人に祐子も良美が見覚えが合った。二人を誘拐した大野がいたからだ。

 「俺の仲間の三枝さんと大野さんだ。祐子の身体を見物に来た」

 栗山に言われた祐子は二人の嫌らしい視線が自分の身体に集中されているような気がして思わず顔を背けた。

 「立ちな」

 栗山は祐子の腕を掴んで立ち上がらせると両手を括っていたロープを解き自由にした。

 「着ているものを全部脱いで裸をお見せするんだ」

 裸になれと言われた祐子の頬に赤みが差した。

 「私を辱めるつもりなのね」

 「ああ、君は僕の妻になる人間だからね。全てを知っておく必要がある」

 「だ、誰があなたなんかの妻になるもんですか。私には夫がいるんです」

 祐子は頑なな態度を崩さず言い放った。栗山は薄笑いを浮かべるといきなり良美の上に圧し掛かった。

 「嫌、止めて」

 栗山が腹の上に跨り、衣服を剥ごうとすると良美はつんざくような悲鳴をあげ、死に物狂いで抵抗する。しかし、栗山の力には勝てずブラウスを大きくはだけられてしまう。

 ブラジャーの上から乳房をしっかりと掴むと栗山は驚愕の表情を浮かべている祐子を見上げた。

 「おい、言う事を聞かないとこの娘を素っ裸に剥ぐぞ」

 それまで見たことの無い栗山の強引さに祐子は言い知れぬ恐怖を感じた。そして、自分は良美を守ってやらなければならないと事を思い出した。

 「ひ、卑怯だわ。良美さんには何の関係もないのに」

 「お前が言う事を聞かないとこうなるってことさ」

 栗山は更に乳房を掴んでいる指に力を入れた。

 「お姉さん。助けて」

 良美がハラハラと涙を流しなら自分に助けを呼ぶ姿に祐子は決断した。自分が犠牲となって良美を守り抜くことを。

 「判ったわ。あなたの言いなりになるわ。だけど約束して。良美さんには指一本触れないと」

 涙を必死に堪えて栗山に訴える祐子の姿は鬼気迫るものがあった。

 「いいだろう」

 栗山は立ち上がると祐子の肩を叩いた。

 「さあ、脱ぐんだ」

 栗山に促された祐子は悔しげに唇を噛んだ。しかし、躊躇している場合では無かった。へたをすると栗山が良美を餌食にすると言い出しかねないのだ。祐子はカーディガンを脱ぎ去るとブラウスのボタンを外した。

 勇気を奮い起こして祐子はブラウスを脱ぎ去った。祐子の白い肌が露わになると三枝と大野の口から溜息が洩れる。

 「ええ、肌してまんなぁ。ゴムマリみたいなかんじやろな」

 興奮すると関西弁が出てくる大野が思わず溜息を付くほどその肌は美しかった。

 そんな男たちの動揺をよそに、祐子はスカートを落すと濡れて肌にへばりついているストッキングを一気に引き下ろした。

 ブラジャーと濡れたパンティだけの姿になった祐子は男たちの視線を避けるように膝を抱え込むようにしてその場に座り込んだ。

 栗山が背後に廻りブラジャーのホックを外し、それを取り去ると祐子はしっかりと両手を前に組み合わせた。

 「両手を前に出せ。これ以上は自分で脱ぐ勇気が無いだろうからな」

 薄笑いを浮かべた栗山に言われた祐子はその目を睨み付けた。しかし、それはすぐに着弱いものに代わり素直に両手を差し出した。

 元通りに祐子の両手をきりきりと縄で巻き付けた栗山は天井から伸びる鎖のフックにその縄を引っ掛けた。

 栗山が壁際のスイッチを押すとモーター音と共に鎖が巻き上げられ、釣られて祐子の身体は伸び上がり、、両手を上にして吊り上げられる格好にされた。祐子の全身はパンティ一枚の姿を居並ぶ悪魔たちの前に晒す事になったのである。

 「ほおー」

 形の良い乳房が露わにされると大野はたまらず、フラフラと祐子に近づくとその柔らかな丘に手を伸ばそうとした。

 「止めて」

 大野の指先がそれに触れると祐子は激しく身を捩り、涙に潤んだ目を向けた。

 「そんなけちなことを言うもんじゃないぜ」

 大野が更に図に乗って乳首を口に含もうと口を尖らせると必死な祐子の膝が大野の股間を直撃した。

 床に這い蹲り、悶絶する大野を目にした栗山はいきなり祐子の頬を引っ叩く。

 「何をするんだ。俺の客をこんな目に遭わせるなんて」

 「だって、あんな事を・・・」

 栗山は祐子に最後まで言わせず再び、頬を引っ叩いた。

 「素直になれないなら、良美を素っ裸に剥ぐぞ」

 栗山にその事を持ち出され祐子ははっとした表情を浮かべた。

 「わ、判ったわ。もう、暴れないからそんな事しないで」

 祐子は悔しげに唇を噛んで下を向いた。良美の事だけはと願う祐子は抵抗したくなる自分を必死に抑えている。

 「よし、じゃあ、俺がパンティを脱がしてやるけど暴れるなよ」

 栗山が耳元でそんな事を言うと祐子はこっくりと頷いた。

 しかし、栗山の手によって濡れそぼっているそれがずり下げると祐子は頬を真赤にさせ、首を左右に打ち振った。

 悪魔たちの前に一糸纏わぬ全裸を披露した祐子はぴったりと太股を閉じ合わせ、啜り泣きを洩らしている。

 スラリとした足首、ムッチリとした太股、その頂点に貼り付く淡い叢のような恥毛、男たちは声も無くその美術品のような全裸像を眺めている。

 「うーむ。栗山さん。私は何人もの女の裸を見てきたがこれだけ見事で、完璧な裸体を目にするのは初めてだ。是非、何か描かせて貰いたい」

 三枝は感心しきりにこんな要求をしたが、栗山はすぐさま頷いて見せた。

 「どうぞ、どうぞ。私がここを辞した後にでも存分にお描き下さい」

 栗山の言葉に三枝は一瞬、笑顔を見せたがそれはすぐさま真剣な眼差しに代わった。彼の芸術家の心がこの女をどんな構図でキャンバスに収めようか思案し始めたのだ。

 祐子は野卑な男たちの群れの中で全裸を晒しているだけで、息も止まりそうな屈辱感を覚えていた。早く、地獄のような瞬間が過ぎ去ることを心から祈っていたのだ。

 栗山はしたり顔をして全裸にされた祐子を見てガタガタと身体を震わしている良美の手を取った。

 「ど、どこに行くの?」

 「そのままじゃ気持ち悪いでしょうから風呂に入れて上げます。それにお姉さんが恥ずかしい姿を見られたくないでしょうから」

 栗山は良美を連れて折檻部屋から出た。

翻弄される祐子

 部屋を出た栗山はモニタールームに居た松井に良美を託した。

 「風呂に入れてやってくれ」

 「はい、判りました」

 松井が片目を瞑って、良美を引き立て母屋に向かうと栗山は再び折檻部屋にとって返した。

 相変わらず両手を上にして吊り上げられている祐子は戻ってきた栗山に鋭い視線を放った。

 「良美さんには何もしないでしょうね」

 「ああ、風呂に入れたらすぐにここに戻って来る。その間に祐子にはお仕置きを受けて貰う」

 「私が何をしたって言うの?」

 祐子は悲痛な声を上げて栗山を見る。しかし、栗山はそんな祐子の必死の表情を鼻で笑っていた。

 「お前がお客様を蹴飛ばしたお仕置きだよ」

 栗山はそう言うと大野の方を向いてポケットから例の鎖を取り出して見せた。とたんに大野の表情が崩れだし、狡猾そうな笑みを浮かべた。

 男たちの間に隠微な雰囲気が漂いだした事に祐子は身体を固くした。執念深い栗山の事だ何をされるか判らない祐子は太股を小刻みに震わせる。

 「な、何をするの?」

 祐子が恐れおののいて唇を震わせるのを見て栗山はニヤリとした笑みを洩らした。

 「この鎖を巻いてもらう」

 栗山が例の鎖を目の前に突き出しても祐子は意味が判らず頬を固くするだけであった。しかし、その太股はピッチリと閉じ合わされ、頑なに拒絶の姿勢を表していた。

 「足を開いてくれ」

 くびれた腰に鎖を巻き付けた栗山に太股を叩かれた祐子はおずおずと足を開いた。

 「よし、俺も手伝ってやる」

 美女がその鎖を巻かれて悶えるのだと思うと居てもたっても居られなくなった大野がその官能的な双臀をしっかり抑えると栗山は身を沈め、祐子の秘裂を割り始める。

 「あっ」

 祐子は頬を染め、自分の秘所を弄る栗山の指の感触に耐えていたがその指先が微妙な突起に触れると小さく声を放った。

 新しい鎖の輪はこの段階ではさしたる影響も与えない、その威力を発揮するのはボタンを押した後になるのだ。

 祐子の陰核にしっかりと輪が掛かったことを確認した栗山は下に垂れている鎖を股間に通した。

 祐子の背後で待ち構える大野が鎖を引き絞り、腰に巻いた鎖にそれを通すと祐子はその部分を締め付ける恥ずかしさに肩を震わせる。

 「酷いわ。こんな事をするなんて」

 祐子が甘えるような口調で訴えても栗山は笑みを浮かべるだけであった。

 「よし、先端が見えてる。これれでよしや」

 大野が祐子の股間に目を凝らしてそんな事を言うと栗山は壁際のスイッチを再度、押した。

 更に鎖が巻き上げられ祐子の吊り上げられた姿態が引き伸ばされる。

 「さあ、大野さん。やって下さい」

 祐子が爪先立ちになるまで鎖を巻き上げた栗山に促された大野は陰毛の中に光る金色の小さなプレートに手を伸ばした。

 「いくぜ」

 指でボタンを探り当てた大野が興奮を隠しきれず、上ずった声で言うとそれを押した。

 「あっ、あ」

 突然、祐子の口から切れ切れの悲鳴が沸き、吊り上げられた全身が針のように緊張した。

 「な、何をするの、止めて、止めてよ」

 その部分を押し潰すような強い力で挟みつけられる感触に祐子は戦慄して、激しく身悶えた。しかし、爪先立ちの状態ではそれも殆ど封じられている。

 その部分から生じる強烈痛みと得体の知れぬ快感が込み上げ、祐子は吊り上げられた両腕に火照った頬を擦りつけ啜り上げるしか出来ないのである。

 「見事に決まりましたね」

 栗山に出来映えを賞賛された大野は羞恥と痛みに眉を八の字に寄せ、苦悶の表情を見せる美女の全身を真剣な表情で凝視し、言葉も出さなかった。

 「これで遊びますか?」

 栗山に筆を差し出された大野は我に返り、卑猥な笑みを浮かべるとそれを受け取り、身を沈めた。

 愛らしい突起がプレートの中から顔を僅かに覗かせているのを確認した大野は興奮を抑え切れず唾を何度も飲み込み、筆の先端をそれに近づけていった。

 「ギャアー」

 怪鳥のような叫びを上げて、祐子は苦悶した。頭に突き抜けるような激烈な痛みがその部分から生じ祐子は吊り上げられた全身に痙攣を起こしている。

 「もう、止めて。許して、許して頂戴」

 涙を浮かべながら祐子は栗山に必死の眼差しを送った。悪魔たちの余りにも残忍な所業に魂まで締め付けられた祐子はとにかくこの状態を脱したいと栗山に許しを請うのだった。

 ここで結婚の件を切り出せば祐子は否も応も無く承諾するだろう。しかし、栗山はそれでは満足しなかった。自分の口からそれを切り出さない限り、結婚の件は封印するつもりだった。

 「じゃあ、お客様にお詫びして、可愛い女になることを誓いなさい」

 栗山の言葉に縋るように祐子は筆を手に自分の下半身を狙っている大野に向かって口を開いた。

 「お、お客様。先程のご無礼、お許し下さいませ。二度と、あんな真似は致しません。可愛い女になります」

 「そうか、もう一回、やらせてや。それで許したる」

 再び、筆でそれをなぞられた祐子は悶絶しそうな痛みに全身を震わしている。

 「これからは栗山さんの言う事を良く聞いて、可愛い女になるんやで」

 大野に肩を叩かれた祐子は大きく頷いてみせる。

 大野がボタンを押して陰核を締め付けられる痛みから解放されると祐子は大きく息を吐き、シクシクと啜り上げる。その哀れっぽい風情が男たちの欲情を煽るのである。

 細い鎖を取り去り、吊り上げている鎖を緩めても栗山はまだ祐子を解放しようとはしなかった。

 栗山は祐子の足元に洗面器を配置すると薄く腋毛が生えている祐子の腋の下を擽った。

 「今夜は大分お疲れのようだから立ったままおしっこをする姿を見せてくれたら終わりにする」

 栗山の言葉に祐子はきつい視線を投げ掛けた。悪魔たちの次々と繰り出す陰惨な攻撃に祐子は気が遠くなる程の疲労を感じていた。

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