朝の見学
翌朝、栗山が朝食を摂るために食堂に絵里と共に姿を現すと留美が応対してきた。
「あら、お早いですね。夕べは絵里にご満足戴けました?」
朝食のアイテムを次ぎ次に並べながら留美が話しかけると栗山は大きく頷いて首を項垂れたままの絵里を見た。
「今朝は絵里もここで食事をしていいのよ。お客様の相手をした奴隷の特権だからね」
留美は絵里の前のカップにもコーヒーを並々と注いだ。
いつも、握り飯やサンドイッチといった軽食ばかりを食べさせられている絵里にとっては久々の食事らしい食事が並んだがやはり食欲は余り湧かなかった。絵里の胸には昨夜、見せられた新聞記事あった。とても全部は読めなかったが残された家族たちの悲しみがひしひしと伝わってきた。でも、自分たちが助かる見込みは殆どと言って良いほど無かった。隙を付いて逃げ出す者は由里に対する折檻を目にした後では考えにくい状態だった。
結局、絵里の朝食はパンを一口、コーヒーを半分ほど飲んで終了した。
「おはよう。満足したようですね」
三枝が朝から脂ぎった顔を見せて栗山の前に座った。
「ええ、とても満足しました。絵里君も良く尽くしてくれました」
「それは良かった。それで、今日はどうします?」
「弘美チャンを午前の部でお願い致します。午後は由里、夜は美加子先生ですね」
「ほー、そんなに」
三枝は栗山の欲張り加減に呆れるのであったが表情は変えなかった。
「手配致しましょう。それでは奴隷たちの住まいにご案内致しましょう」
三枝は絵里も促して地下室に向かうのであった。
地下室の入り口に立つと三枝は穴の中を指した。
「ここが奴隷たちを閉じ込めている地下室です。今、清掃が終わったところなのでそんなに匂いませんが降りて見ますか?」
「ええ、是非」
栗山が答えると三枝は下に向かって声を出した。
「これから絵里と栗山さんを下に下ろす。頼むぞ」
「は〜〜い」
中から松井の声が返ってきた。
栗山はゴンドラに乗って地下室に降り立った。
やはり、女たちの吐く息と尿便の入り混じった生臭い匂いが漂っている。その日も全員の奴隷がここに集まっている筈なのだが大野と初夜を過ごした由希の姿は見当たらなかった。
栗山は一人一人の姿を丹念に観察した。両足を拘束され、後手錠を掛けられている徹は死んだような目をして横たわっていた。普段、排尿や排便の世話をしてくれる由希と絵里のいない一夜は徹にとって苦しい筈だった。しかも、由希の結婚式で奴隷たちにまで玩具にされたダメージは計り知れない打撃を彼に与えていた。
由里はお仕置きを受けてから、徹に優しく接するようになっていた。由希と絵里がいない昨夜は由里が徹の世話を買って出たのだ。
美希は最近、元気が無かった。奴隷の中で一番魅力に掛けていると思われる彼女はこんな時でも劣等感を抱いていた。
弘美は絵里が落ち込んだ時に励まし、立ち直らせていた。彼女自身が陵辱の洗礼を受けていない事は栗山も知っていた。今日で彼女も処女とお別れなのかと栗山はその妖精のような姿を見つめるのであった。
麻美も最近、塞ぎがちだ。救出の望みがない今、彼女は恭子以外頼るものはいない。しかし、恭子は準奴隷への昇格テストに失敗してから元気が無かった。昨夜、栗山にキャンセルを受けたこともマイナス材料だった。
美加子はまだ教師だという事を忘れてはいなかった。しかし、彼女には統率力はなく、奴隷たちの心はバラバラに向かいつつあった。
「弘美を上げてくれ」
三枝の命によって絵里が下ろされ、弘美が地上に引き上げられた。
栗山は地下室が思ったよりも清潔に保たれていることを知って、ちよっと残念だった。彼はあのビデオを見て、汚物を肌につけたまま眠っている少女たちを想像していたのだ。
栗山が上に上がると三枝が弘美に因果を含めてる最中だった。
「風呂場に運んでおいて下さい。ちよっと準備が有りますから」
栗山がそういい残すとその場を後にした。
弘美と入浴
弘美は前手錠の姿で風呂に浸かっていた。もうすぐ、ここにあの男が現れる。そして、自分の処女が奪われる。弘美の胸は小さく震えていた。ここに捕われて何人もの仲間が陵辱されている姿を目にしている弘美はいつかこの日が来ることを覚悟していた。しかし、目前に迫った危機に弘美の動揺は隠しようも無かった。
「やあ、待たせちゃってごめんね」
栗山がタオルを手にして風呂場に入ってくると弘美は身体を斜めにして恐れの態度を表した。
「さあ、綺麗してあげますよ。恐く有りませんよ」
弘美は幼児のような言葉を使うこの男のことに嫌悪感を覚えていた。しかし、栗山は弘美に嫌われていることなど意に介さずタオルにボディソープを泡立てるとその小さな身体に塗りたくるのだった。
「そこは嫌」
栗山が股間を拭おうとするのを弘美は腕を掴んで拒否した。
「駄目駄目。そこが一番、汚いんでしょう。言う事を聞きなさい」
栗山は父親のような口ぶりで有無を言わせず股間をゴシゴシ擦り始めると弘美は頬を染めて男のなすがままに任せてしまう。
「こんなに汚れてたよ」
「嫌よ」
栗山が自分の汚れの付いたタオルを目の前に突きつけたので弘美は激しい声を放つと身を捻った。
栗山はシクシクと弘美が泣き始めたので湯を掛けてシャボンを落した。
一緒に風呂に入った栗山は弘美が落ち着いた頃を見計らって声を掛けた。
「弘美ちゃんは僕のことが嫌いでしょう?」
「嫌い。私を虐める人はみんな嫌い」
「僕は弘美ちゃんを虐めていないのに嫌いなの?」
「これから虐めるでしょう」
弘美は声の調子を落として下を向いた。自分の処女を奪いに現れた男を嫌いになるのは当然の心理だと弘美は思っていた。
「虐めないよ。君に服を着せてあげようと思って用意もしてあるんだよ」
「本当なの?」
弘美の顔が一辺に輝いた。ここの屋敷に捕われて以来、良くて褌一枚で過ごしてきた弘美にとってそれは信じられない申し出であったからだ。
「でも、僕を毛嫌いしてる弘美ちゃんには着せられないな」
栗山は弘美を焦らしてその困惑する表情を楽しんでいる。
弘美にとって僅かな時間とはいえ服を着せてもらえるのは家畜みたいな扱いを受けている毎日の中では有り難い事だった。弘美はこの男の気を引こうと必死になった。
「何でもするから、服を着させてください」
栗山はその言葉を待ち兼ねたように口を開いた。
「君がオナニーしてるところを見たい」
「オナニーなんかしたこと無いです」
弘美は首を左右に振って拒否した。
「僕が手伝って上げるからやってご覧。ね。」
栗山は有無を言わせず弘美を洗い場に横たわらせた。
「クリトリスを弄ってごらん」
栗山に言われた弘美は手錠に繋がれている手を股間に導き遠慮がちに指を動かし始める。
「もっと激しくして」
弘美は栗山に促され、指の動きを強めた。頬に赤みが差し始めた弘美を見て栗山は乳房を優しく揉み上げ情感を加速させる。
「今度は指を中に入れて激しく動かして」
弘美は言われるままに指を胎内に押入れ、激しく揺り動かし始める。
弘美が白い裸体をくねらせ、情感に煽られる姿を露呈すると栗山の男も目覚め始める。
栗山はこの場で刺し貫きたい欲望を押さえ込みつつ、その白い軟体動物のように時折、溜息を吐きながら蠢く弘美の全裸をじっと目で追うのであった。
「ねぇ、ねぇ。もう、いいでしょう?」
指の動きを止めずに弘美は思いつめた表情を浮かべて栗山を見上げた。
「どうしたの?」
「これ以上、続けるとおかしくなっちゃいそうなの。止めてもいいでしょう?」
弘美はオナニーによって始めて味合う頂点を恐れて栗山に訴えた。しかし、栗山はそんな機会を見逃すはずは無かった。
「駄目だよ。そのまま、続けて、そのまま止めたら却って変な気分になっちゃうよ」
栗山は明らかな喘ぎ声を洩らし、必死に指を抜き差ししている弘美の乳房に口を寄せるとその愛らしい乳首を含み、舌先で転がした。
「うっーん」
弘美は押し殺したような呻きを上げると顔を大きく仰け反らせ、開いた太股を激しく痙攣させ頂点極めた。
がっくりと首を落とし、身体の力が抜けた弘美は栗山に抱きとめられるとその胸に顔を埋めて啜り泣きを始める。
「恥ずかしい。弘美、死ぬほど恥ずかしい」
震える声で訴えた弘美は栗山に対する嫌悪感は嘘のように消えていた。それよりも栗山に対する信頼感さえ芽生え始めていたのだ。
弘美と昼食
それから暫くして、栗山と弘美は庭に出て、裏山を登っていた。
弘美は洋服から下着に到るまで栗山の持参した物を身に着けていた。
白のキュロットスカートにブルーのシャツその上に白のベストを着込んだ弘美は弾むような足取りで裏山を登っている。
時折、笑顔を見せて夏の終わりの太陽を浴びる姿は彼女が囚われの奴隷だということを栗山に忘れさせるほどの明るさを感じさせた。
「あの山の向うに君たちが泊まっていたロッジがあるんだよ」
山の中腹から風景を説明された弘美の表情が曇った。あそこでバスが止まらなければ自分たちが悲惨な運命に遭うことも無かった。そんな思いが弘美の胸を締め付けているのだ。
「ごめん。悲しくさせちやったかな?」
弘美は小さく頭を振った。
「今日はとても楽しいの。服を着させて貰って感謝しています」
弘美はぺこりと頭を下げた。今の弘美にとって栗山は悪魔たち一線を画す存在になっているようだ。
「ねえ、少し走ってもいい?家の中ばかりに居たから運動不足なの。おじさんも一緒に走って」
栗山の返事を待たずに弘美は下に見える庭に向かって走り始める。栗山も負けじと後を追った。二人はまるで恋人のようにじゃれあいながら追いかけっこを展開してる。
大野は由希を伴い、庭に出て、笑いながらじゃれあってる二人を見つけて驚いた表情を浮かべた。
「おーい、もうすぐ食事の時間だぞ」
大野に呼ばれて息を切らして栗山が戻ってきた。
「随分、楽しそうじゃないか。驚いたよ」
「若い子には体力的に叶いませんよ」
栗山は滴る汗を拭って大野を見た。その表情が満足感に溢れているのを見て、大野の新婚初夜もつつがなく終わったのかと栗山は思った。
「夕べが遅かったもんでな。朝飯を食い損なってしまったよ。あははは」
大野は豪快に笑って背後に立ち尽くしている由希の方を見た。
由希は手錠こそしていないが褌一つの裸体で寒そうにしている。頬を赤くして膝頭を時折震わすその態度に由希がまたあの鎖を取り付けられているのを栗山は確信した。
「おはようございます。大野さん」
弘美が礼儀正しくお辞儀をしたので大野は再び驚いてしまった。数時間で少女を手懐ける栗山のどこにそんな魔力が隠されているのかと大野は信じられない気分なのである。
「今日は天気が良いから外で食事をすることにしたよ。君たちの分もそのように手配した。さあ、行こう」
四人は戸外に設置されたテーブルに付いて食事が来るのを待つことにした。
裸のままの由希を見て弘美は栗山に縋るような視線を向けた。
「ねえ、おじさま。由希先輩が寒そうなの。私の着ているシャツを貸して上げてもいい?」
「構わないよ。大野さんも異存は無いだろう」
大野が頷くのを見ると弘美は立ち上がるとベストを脱ぎ、青いシャツを脱ぎ去った。再びベストを着込んだ弘美はシャツを由希の肩に掛けて上げるのだった。
「先輩、着て下さい」
由希は小さな声で礼を言うとシャツの袖に腕を通し始めた。昨夜、憎い男に無理矢理、処女を奪われた由希の気持ちは暗く沈んだままだった。更に今日も起きるとすぐに鎖を嵌めさせられた由希は大野と一緒にいることに途方も無い疲労感を覚え、地下の生活が懐かしく思われていた。加えて地下に残してきた兄のことも心配だった。
やがて食事が運ばれてきた昼間から精をつけなければならない男たちのリクエストに応じてステーキを中心としたボリュームの有るランチがサービスされた。
弘美は良くしゃべり良く食べた。反対に由希は食欲が無いようだった。
楽しい食事も終わりに近づき、デザートが出されると大野は数枚の紙を取り出し、由希の前に置いた。
「これに署名しなさい。僕たちの婚姻届だ」
由希ははっとしたような顔をして大野を見た。
「不思議じゃないだろう。昨日、結婚式をして初夜も済ませたんだ。さあ、書きなさい」
大野は由希の手にボールペンを握らせ、促した。
由希は法的にも夫婦になってしまう事に恐れおののいた。父と母がこの事実を知ったら嘆き悲しむことは必定だ。そう考えるとペンを持つ手も震えだす。
「書かないと地下の徹がまた酷い目に遭うぜ。いいのか?」
ヤクザのような口調になって由希を脅す大野を見て、弘美も夢から覚めたように引きつった表情を浮かべている。由希は決心したようにペンを走らせ始めた。
「これで由希と俺とは夫婦だ。ざまあ、見ろ。梶間のへっぽこ野郎」
大野は鬼の首でも取ったように婚姻届を高々と掲げ、大声を上げて笑うのであった。
悲しみにくれる由希の新たな涙がまたその端正な頬を伝わった。